国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、パキスタンのテンサイ(甜菜)生産量は1961年から長期間にわたる変動が見られました。初期には増減を繰り返しながらも全体的には上昇しましたが、2000年代後半からは生産量が著しく減少し、2011年以降は低いレベルで推移しています。近年では若干の回復傾向を示しており、2023年の生産量は32,454トンに達しました。生産量の変動は政策、気候、経済情勢、および地政学的要因が複合的に影響していると見られます。
パキスタンのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 32,454 |
12.7% ↑
|
2022年 | 28,797 |
18.1% ↑
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2021年 | 24,383 |
40.27% ↑
|
2020年 | 17,383 |
-54.99% ↓
|
2019年 | 38,620 |
31.06% ↑
|
2018年 | 29,468 |
10.66% ↑
|
2017年 | 26,630 |
24.44% ↑
|
2016年 | 21,400 |
26.63% ↑
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2015年 | 16,900 |
1200% ↑
|
2014年 | 1,300 | - |
2013年 | 1,300 | - |
2012年 | 1,300 |
225% ↑
|
2011年 | 400 |
-99.57% ↓
|
2009年 | 93,010 |
45.11% ↑
|
2008年 | 64,095 |
-23.33% ↓
|
2007年 | 83,600 |
-10.44% ↓
|
2006年 | 93,345 |
-22.79% ↓
|
2005年 | 120,902 |
-51.67% ↓
|
2004年 | 250,169 |
16.14% ↑
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2003年 | 215,411 |
147.31% ↑
|
2002年 | 87,100 |
-34.07% ↓
|
2001年 | 132,100 |
-17.09% ↓
|
2000年 | 159,329 |
25.06% ↑
|
1999年 | 127,400 |
53.86% ↑
|
1998年 | 82,800 |
-50.68% ↓
|
1997年 | 167,900 |
-21.06% ↓
|
1996年 | 212,688 |
9.35% ↑
|
1995年 | 194,500 |
-20.08% ↓
|
1994年 | 243,383 |
4.34% ↑
|
1993年 | 233,250 |
-26.06% ↓
|
1992年 | 315,448 |
-1.21% ↓
|
1991年 | 319,300 |
-6.86% ↓
|
1990年 | 342,826 |
0.33% ↑
|
1989年 | 341,700 |
-25.12% ↓
|
1988年 | 456,300 |
42.68% ↑
|
1987年 | 319,800 |
136.19% ↑
|
1986年 | 135,400 |
30.82% ↑
|
1985年 | 103,500 |
-41.98% ↓
|
1984年 | 178,400 |
-13.48% ↓
|
1983年 | 206,200 |
-42.79% ↓
|
1982年 | 360,427 |
-20.35% ↓
|
1981年 | 452,522 |
33.37% ↑
|
1980年 | 339,309 |
1.39% ↑
|
1979年 | 334,644 |
2.37% ↑
|
1978年 | 326,890 |
-16.04% ↓
|
1977年 | 389,354 |
42.7% ↑
|
1976年 | 272,847 |
15.99% ↑
|
1975年 | 235,235 |
145.37% ↑
|
1974年 | 95,870 |
-14.38% ↓
|
1973年 | 111,970 |
-46.68% ↓
|
1972年 | 210,000 |
26.51% ↑
|
1971年 | 166,000 |
-34.16% ↓
|
1970年 | 252,140 |
22.81% ↑
|
1969年 | 205,310 |
114.4% ↑
|
1968年 | 95,760 |
107.09% ↑
|
1967年 | 46,240 |
-33.05% ↓
|
1966年 | 69,070 |
46.49% ↑
|
1965年 | 47,150 |
-37.64% ↓
|
1964年 | 75,610 |
72.78% ↑
|
1963年 | 43,760 |
-10.84% ↓
|
1962年 | 49,080 |
141.77% ↑
|
1961年 | 20,300 | - |
パキスタンのテンサイ(甜菜)生産の推移を見てみると、1960年代から1970年代にかけて、生産量が比較的一貫して増加していることがわかります。1961年の20,300トンから1977年の389,354トンまで成長し、この期間には政府の農業改革や施策が生産拡大に寄与したと考えられます。しかし1978年以降、増減を繰り返しながらも全体的には上下動の激しい推移を見せ、1985年には103,500トン、2000年には159,329トンと減少が目立つ時期が増えています。
特に2008年から2014年の間は著しい減退が見られ、2008年の64,095トンをピークに急速に減少し、2011年にはわずか400トンまで落ち込みました。これは、主に農村部での生産コストの高騰や水資源不足、さらには市場の需要減少が引き金になった可能性があります。この時期、世界的な気候変動の影響を受けた干ばつや洪水といった自然災害の発生が、農業生産に打撃を与えた背景もあります。
2015年以降は、生産量が再び増加していますが、依然として過去のピーク時には程遠い状況です。2023年には32,454トンに到達しましたが、これは持続可能な成長に向けた課題が依然として残されていることを示しています。他国と比較すると、例えば中国やフランスといった主要なテンサイ生産国に比べ、生産量は大きく下回り、このことがパキスタン国内の砂糖生産や加工産業の競争力にも影響を及ぼしています。
現在の低い生産量の背景としては、農業技術の導入の遅れやインフラの未整備、さらには地域における政治不安定性が挙げられます。テンサイ栽培に適した土地と気候を持つにもかかわらず、灌漑システムの老朽化や肥料の利用不足は、生産性向上の阻害要因となっています。また、紛争や地政学的な緊張は、農業生産の安定化に負の影響を及ぼしており、これがテンサイの商業生産を制約している点も見逃せません。
未来を展望する上で、パキスタンの農業セクターではいくつかの重要な対策が求められます。まず、テンサイ生産の効率化には、気候変動の影響を考慮した先進的な農業技術の導入が必要です。例えば、高収量品種の導入や灌漑技術の改善などがあります。また、農村地域の農業従事者に対する教育や技能訓練プログラムの充実も、収益性や持続可能性を高めるための前提条件となるでしょう。さらに、政府および国際機関と協力し、安定的な融資制度や補助金配布システムを整備することも、生産者の負担を軽減し、農産物市場の競争力を引き上げるのに寄与すると思われます。
地政学的側面からは、地域の安定と、市場アクセスの拡大が重要です。例えば、近隣諸国との関係強化を通じて貿易ネットワークを構築し、生産されたテンサイを効率的に加工し輸出する仕組みを整えることも検討すべきでしょう。さらに、気候変動に伴う自然災害リスクを軽減するべく、予測システムや災害への対応力を強化することも重要な課題です。
結論として、パキスタンがテンサイ生産を効率化し、安定した成長を遂げるためには、技術革新、政策改革、地域間協力、さらには気候変動適応戦略の同時進行が求められます。農業従事者や関係者の協力のもと、これらの課題を克服することが、国全体の経済的発展に寄与すると期待されています。