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パキスタンの米生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月時点の最新データによると、パキスタンの米生産量は、1961年の1,690,000トンから2022年には10,983,081トンに成長を遂げました。特に直近2020年では12,629,514トンと過去最高を記録し、翌2021年にはさらに13,984,009トンと最高値を更新しました。しかし、2022年には再び10,983,081トンに減少しており、生産の変動の背景と課題が注目されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 14,803,800
34.79% ↑
2022年 10,983,081
-21.46% ↓
2021年 13,984,009
10.72% ↑
2020年 12,629,514
13.57% ↑
2019年 11,120,483
2.99% ↑
2018年 10,798,000
-3.37% ↓
2017年 11,174,816
8.77% ↑
2016年 10,273,968
0.71% ↑
2015年 10,201,840
-2.88% ↓
2014年 10,504,200
0.35% ↑
2013年 10,467,150
26.05% ↑
2012年 8,303,850
-10.14% ↓
2011年 9,240,600
27.72% ↑
2010年 7,234,950
-29.92% ↓
2009年 10,324,050
-1% ↓
2008年 10,428,000
24.96% ↑
2007年 8,345,100
2.3% ↑
2006年 8,157,600
-1.96% ↓
2005年 8,320,800
10.4% ↑
2004年 7,537,200
3.66% ↑
2003年 7,271,400
8.24% ↑
2002年 6,717,750
15.37% ↑
2001年 5,823,000
-19.17% ↓
2000年 7,203,900
-6.85% ↓
1999年 7,733,417
10.3% ↑
1998年 7,011,400
7.88% ↑
1997年 6,499,500
0.66% ↑
1996年 6,457,200
8.53% ↑
1995年 5,949,750
15.09% ↑
1994年 5,169,750
-13.72% ↓
1993年 5,992,050
28.2% ↑
1992年 4,674,150
-3.92% ↓
1991年 4,864,650
-0.54% ↓
1990年 4,891,200
1.26% ↑
1989年 4,830,150
0.62% ↑
1988年 4,800,300
-1.26% ↓
1987年 4,861,400
-7.05% ↓
1986年 5,230,000
19.45% ↑
1985年 4,378,400
-11.95% ↓
1984年 4,972,800
-0.73% ↓
1983年 5,009,250
-3.05% ↓
1982年 5,167,050
0.44% ↑
1981年 5,144,550
9.81% ↑
1980年 4,684,800
-2.88% ↓
1979年 4,823,700
-1.72% ↓
1978年 4,908,000
10.93% ↑
1977年 4,424,406
7.75% ↑
1976年 4,106,178
4.58% ↑
1975年 3,926,184
13.14% ↑
1974年 3,470,148
-5.75% ↓
1973年 3,681,984
5.34% ↑
1972年 3,495,212
3.02% ↑
1971年 3,392,600
2.86% ↑
1970年 3,298,400
-8.4% ↓
1969年 3,601,000
18.14% ↑
1968年 3,048,000
35.59% ↑
1967年 2,248,000
9.82% ↑
1966年 2,047,000
3.65% ↑
1965年 1,975,000
-2.47% ↓
1964年 2,025,000
13.26% ↑
1963年 1,788,000
8.83% ↑
1962年 1,643,000
-2.78% ↓
1961年 1,690,000 -

パキスタンの米生産量は、1960年代以降、農業技術の導入や灌漑インフラの拡充、主要農産物への政府補助などを背景に大幅に増加しました。特に1968年から1969年にかけての急増(3,048,000トンから3,601,000トンへ)は、緑の革命に起因しており、高収量品種の導入や化学肥料の拡大が大きく影響しました。その後も緩やかな成長を続け、特に1990年代後半から2000年代初頭には急速な拡大が見られました。

しかし近年では、米生産量は非常に不安定で、気候変動や水資源不足、洪水や干ばつといった自然災害の影響を大きく受けています。例えば2010年の大幅減少(7,234,950トン)は同年の大規模洪水に起因していると考えられます。一方で、2020年から2021年にかけて生産量が急増し、13,984,009トンという過去最高を記録した背景には、農業政策の効率化や農業機械の導入、農民への金融支援拡大などが挙げられます。しかし、2022年には再び減少傾向に転じ、10,983,081トンとなりました。これは、同年の異常気象や需給バランス変化、国際市場の要因などが複雑に絡み合った結果と見られます。

特にパキスタンでの米生産は、国の経済や食糧安全保障において重要な役割を果たしています。パキスタンは世界で有数の米輸出国であり、その主要市場は中東やアフリカです。農業部門全体がGDP(国内総生産)の大きな割合を占め、米生産の好不調が国内外の経済に直接的な影響を与えます。そのため、近年の生産量の変動は地域経済、とりわけ農村部の収入や雇用安定に深刻な影響を及ぼしています。

また、地政学的リスクも無視できません。例えば、印パ間の政治緊張は、農業用水の確保やインディス川流域の水資源を巡る問題に影響を与える可能性があります。水は米作に不可欠な資源であり、インディス川上流での水利権問題が長期的に生産性に影響するリスクがあります。

将来的にパキスタンが持続可能な米生産を確保するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動に対応した農業技術の普及を強化するべきです。具体的には、耐乾性や耐塩性を備えた新種の開発や普及が挙げられます。また、農業インフラの整備を進め、灌漑網の効率性向上や干ばつへの適応能力を高めることも非常に重要です。さらに、農民への教育や訓練、金融支援を継続的に提供し、小規模農家の競争力を強化することも必要です。

国際的には、インドをはじめとする隣国や地域協力機関と協調し、水資源管理や気候変動対策を共同で行う枠組みを構築することが望まれます。これは、国際的な食糧供給の安定化にも寄与します。

全体として、パキスタンの米生産量は歴史的に見ても著しい成長を遂げていますが、自然災害や気候変動、地政学的リスクへの脆弱性が課題として浮かび上がっています。これらの課題に対処しつつ、持続可能な成長を維持するためには、国内外での総合的な政策と協力が不可欠です。