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パキスタンの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、パキスタンの天然蜂蜜生産量は、1961年の636トンから2022年の4,455トンまで大幅に増加しました。特に1990年代後半から2000年代中盤にかけて急激な増加が見られましたが、その後は4,000トン台での比較的安定した推移が続いています。一部の年には減少が見られるものの、全体として持続的な成長を維持していることがわかります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,737
6.32% ↑
2022年 4,455
0.71% ↑
2021年 4,423
0.72% ↑
2020年 4,392
-0.76% ↓
2019年 4,425
6.23% ↑
2018年 4,166
-1.92% ↓
2017年 4,248
-1.64% ↓
2016年 4,318
3.13% ↑
2015年 4,187
-4.6% ↓
2014年 4,389
2.07% ↑
2013年 4,300
2.38% ↑
2012年 4,200
5% ↑
2011年 4,000 -
2010年 4,000 -
2009年 4,000 -
2008年 4,000 -
2007年 4,000 -
2006年 4,000 -
2005年 4,000
33.33% ↑
2004年 3,000
50% ↑
2003年 2,000
33.33% ↑
2002年 1,500 -
2001年 1,500 -
2000年 1,500
7.14% ↑
1999年 1,400
7.69% ↑
1998年 1,300
8.33% ↑
1997年 1,200
20% ↑
1996年 1,000
11.11% ↑
1995年 900
18.42% ↑
1994年 760
1.33% ↑
1993年 750
1.35% ↑
1992年 740
1.37% ↑
1991年 730 -
1990年 730
1.11% ↑
1989年 722 -
1988年 722
0.98% ↑
1987年 715
2.14% ↑
1986年 700
0.72% ↑
1985年 695
1.02% ↑
1984年 688
1.18% ↑
1983年 680 -
1982年 680
1.49% ↑
1981年 670
1.52% ↑
1980年 660 -
1979年 660
1.54% ↑
1978年 650
1.56% ↑
1977年 640
1.59% ↑
1976年 630
1.61% ↑
1975年 620
1.64% ↑
1974年 610
1.67% ↑
1973年 600 -
1972年 600
-7.69% ↓
1971年 650
-8.45% ↓
1970年 710
-4.05% ↓
1969年 740
2.21% ↑
1968年 724 -
1967年 724 -
1966年 724 -
1965年 724 -
1964年 724
13.84% ↑
1963年 636 -
1962年 636 -
1961年 636 -

パキスタンの天然蜂蜜生産量の推移を振り返ると、1960年代から1980年代までは生産量が数百トンのスケールで停滞または緩やかに増加していました。しかしながら1990年代に入ると、特に1995年から一気に生産の拡大が進み、2000年には1,500トンに、2005年にはついに4,000トンに達するなど飛躍的な成長を遂げました。この急成長の背景には、近代的な養蜂技術の普及や肥沃な農地での蜜源植物の栽培増加が挙げられると考えられます。

特筆すべきは、2003年から2005年にかけて、生産量が2,000トンから4,000トンへと倍増している点です。これは、国際市場での蜂蜜需要増加を背景にした輸出を目的とする大規模養蜂の導入や、政府による養蜂産業支援政策の結果とされています。それ以降の15年以上にわたり、パキスタンの蜂蜜生産量は4,000トンを超える水準で安定して推移しています。一部の年では生産量が若干減少しているものの、これは主に気候変更や農業の構造的な影響によるものと考えられます。

また、近年では2020年頃から再び生産量が少しずつ増加しています。2022年の4,455トンという数値は、国内市場および輸出市場の需要の高まりを反映しているといえます。他の比較対象国と比較すると、例えば中国やインドのような農業大国では、蜂蜜生産量はそれぞれ100,000トンを超えており、まだ大きな差があります。しかしながら、パキスタンの場合、国内の環境適応型の養蜂活動や小規模農家の労働力に支えられた持続可能な成長が見られます。

一方で、課題も少なくありません。まず、過去数十年で確認されている気候変動の悪影響が、蜜源植物の開花と蜂蜜生産期を短縮させている可能性があります。さらに、地域間の紛争や自然災害、新型コロナウイルスによる物流の制限なども、蜂蜜の生産と輸出に一時的な悪影響を与えました。これらの課題を克服するため、例えば、気象データを活用して適切な採蜜時期を予測する技術や、自然災害に対応するための地域協力枠組みの構築が考えられます。

特に地政学的な背景に目を向けると、パキスタンと隣国インド間の緊張が輸出活動に与える影響も課題の一つです。近隣国との安定した貿易ルートを確保し、国際市場へのアクセスを制限されないようにするためには、政府主導での外交と貿易政策の強化が重要です。また、世界全体で化学肥料や農薬の多用による蜂群崩壊症候群(CCD)の懸念もあり、生産性向上と環境保全の両立を図る取り組みが欠かせません。

未来への展望として、まず有機養蜂技術の普及や輸出競争力強化を目指す政策が必要です。また、農家や養蜂業者に対する教育・研修プログラムを整備し、高品質な蜂蜜の生産を促進することが求められます。さらに、国内外の研究機関と連携し、新しい蜜源植物の開発や気候変動への適応策を導入することも重要です。国際市場での競争力を保つため、国際規格に準拠した生産管理と、関連産業のマーケティング力を強化することが期待されます。

結論として、パキスタンの天然蜂蜜生産は天然資源の豊かなポテンシャルを活かして成長を続けていますが、外的要因や環境変化による課題も存在します。これらを克服するための具体的な政策と協力が不可欠であり、国内外の市場を視野に入れた戦略的な取り組みが今後の成功を左右するでしょう。