国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、パキスタンのエンドウ豆(生)の生産量は、過去数十年にわたり大きな増加を見せています。1980年には43,525トンだった生産量が、2023年には401,866トンに達しており、特に2010年代以降、急激な成長を遂げました。一方で、2021年には546,414トンという歴史的なピークを記録した後、2022年には387,848トンに減少し、安定的な増加曲線からの変動も見られる状況です。この推移は、農業技術、気候要因、政策の影響を含む複数の要素に基づいています。
パキスタンのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 401,866 |
3.61% ↑
|
2022年 | 387,848 |
-29.02% ↓
|
2021年 | 546,414 |
149.92% ↑
|
2020年 | 218,638 |
27.48% ↑
|
2019年 | 171,511 |
-3.77% ↓
|
2018年 | 178,231 |
7.23% ↑
|
2017年 | 166,215 |
14.31% ↑
|
2016年 | 145,404 |
3.69% ↑
|
2015年 | 140,229 |
21.01% ↑
|
2014年 | 115,886 |
1.62% ↑
|
2013年 | 114,033 |
7.83% ↑
|
2012年 | 105,748 |
7.16% ↑
|
2011年 | 98,680 |
22.53% ↑
|
2010年 | 80,535 |
-4.44% ↓
|
2009年 | 84,280 |
1.25% ↑
|
2008年 | 83,240 |
-9.65% ↓
|
2007年 | 92,134 |
11.07% ↑
|
2006年 | 82,955 |
5.76% ↑
|
2005年 | 78,438 |
2.61% ↑
|
2004年 | 76,444 |
4.44% ↑
|
2003年 | 73,196 |
1.48% ↑
|
2002年 | 72,128 |
2% ↑
|
2001年 | 70,716 |
0.25% ↑
|
2000年 | 70,538 |
-1.75% ↓
|
1999年 | 71,792 |
0.3% ↑
|
1998年 | 71,580 |
-0.3% ↓
|
1997年 | 71,797 |
17.8% ↑
|
1996年 | 60,948 |
14.85% ↑
|
1995年 | 53,067 |
11.72% ↑
|
1994年 | 47,500 |
6.74% ↑
|
1993年 | 44,500 |
4.71% ↑
|
1992年 | 42,500 |
2.41% ↑
|
1991年 | 41,500 |
0.7% ↑
|
1990年 | 41,213 |
2.99% ↑
|
1989年 | 40,017 |
3.64% ↑
|
1988年 | 38,610 |
0.8% ↑
|
1987年 | 38,302 |
-1.96% ↓
|
1986年 | 39,067 |
2.53% ↑
|
1985年 | 38,104 |
23.68% ↑
|
1984年 | 30,808 |
-17.95% ↓
|
1983年 | 37,550 |
4.26% ↑
|
1982年 | 36,016 |
-21.66% ↓
|
1981年 | 45,975 |
5.63% ↑
|
1980年 | 43,525 | - |
パキスタンは、南アジアの主要な農業国の一つであり、その豊かな農地と灌漑設備によってエンドウ豆(生)を含む多様な農産物で重要な役割を果たしています。データに基づくと、エンドウ豆の生産量は長期的に見るとほとんど一貫して増加しています。特に、1990年代には約50,000トンを超える安定した生産量を示し、その後の2000年代には徐々に70,000トン台へと移行しました。この間の成長は、灌漑技術の進展や農業機械の導入、そして品種改良の成果と考えられます。
さらに注目すべきは、2010年代に入ってからの急激な生産量の増大です。この時期には、例えば2011年が98,680トンだったのに対し、2015年には140,229トン、2018年には178,231トンへと順調に増加しました。そして2020年には218,638トンと200,000トンを超え、その翌年の2021年には546,414トンという突出した記録を達成しました。この急増要因としては、政府による農業支援政策の強化、エンドウ豆への需要増加、さらに輸出拡大に向けた市場開拓が挙げられます。
しかし、この生産量の増加には注意が必要です。2021年以降のデータを見ると、546,414トンというピークを経て2022年には387,848トン、2023年には401,866トンと大幅な減少傾向が見られました。これはいくつかの要因が複合的に影響を与えたと考えられます。具体的には、気候変動による異常気象や大規模な洪水、または種子や肥料の供給不足が挙げられます。さらに、地政学的リスクや物流の制約が輸出市場にも影響を与え、生産へのモチベーションを阻害している可能性も考えられます。
また、2021年の記録的な546,414トンは、国内需要と輸出市場の変化を背景として農家がエンドウ豆生産に最適な条件を活用した結果とも言えますが、この急増が環境や土壌への過剰負担を引き起こしたリスクにも目を向けるべきです。このような不安定さの排除が、今後の持続可能な生産を支える鍵となります。
これらのデータと背景を踏まえ、パキスタンのエンドウ豆生産においては以下のような対策が必要とされています。まず、気候変動への対応として、灌漑システムの近代化や耐久性の高い品種の研究をさらに推進する必要があります。加えて、洪水や異常気象による被害を軽減するためのインフラ整備を進め、農家がリスクマネジメントを可能にするための保険制度の導入も重要です。また、国内外の市場が求める品質基準に対応するため、生産過程における技術指導や認証制度の強化も不可欠です。
地政学的リスクや輸出市場への依存からくる不安定さを抑制するためには、市場の多元化と輸出ルートの確保がカギとなります。例えば、中国やインド、ヨーロッパ市場などの需要を視野に入れた貿易協定の実現が効果的です。また、農業開発における国際協力を強化し、長期的な技術移転や資金支援を受けられるプログラムの構築が望まれます。
結論として、パキスタンのエンドウ豆生産は長期的には顕著な成長を遂げているものの、その成長は気候変動や地政学的背景に依存する不確実性を抱えています。持続可能な成長を実現するためには、技術革新、農業支援政策の拡充、そして多様なリスク対応策の採用が急務です。このような取り組みにより、パキスタンは今後も南アジアにおける重要な農業大国としての地位をさらに強化できるでしょう。