Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に発表した最新データによると、パキスタンの羊肉生産量は1961年の52,400トンから2023年の253,000トンへ大きく増加しており、長期的には比較的一貫した成長傾向が見られます。しかし、一部の年では生産量の大きな減少や停滞があり、近年の成長率はやや緩やかなものとなっています。羊肉生産はパキスタンの農業体系と経済において重要な役割を果たしていますが、環境変動や地政学的要因の影響も少なくありません。
パキスタンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 253,000 |
1.2% ↑
|
2022年 | 250,000 |
1.21% ↑
|
2021年 | 247,000 |
1.23% ↑
|
2020年 | 244,000 |
1.24% ↑
|
2019年 | 241,000 |
0.84% ↑
|
2018年 | 239,000 |
1.27% ↑
|
2017年 | 236,000 |
1.29% ↑
|
2016年 | 233,000 |
1.3% ↑
|
2015年 | 230,000 |
0.88% ↑
|
2014年 | 228,000 |
0.88% ↑
|
2013年 | 226,000 |
0.89% ↑
|
2012年 | 224,000 |
1.82% ↑
|
2011年 | 220,000 |
1.38% ↑
|
2010年 | 217,000 |
0.93% ↑
|
2009年 | 215,000 |
1.42% ↑
|
2008年 | 212,000 |
0.95% ↑
|
2007年 | 210,000 |
1.45% ↑
|
2006年 | 207,000 |
-8% ↓
|
2005年 | 225,000 |
0.45% ↑
|
2004年 | 224,000 |
0.45% ↑
|
2003年 | 223,000 |
0.9% ↑
|
2002年 | 221,000 |
0.45% ↑
|
2001年 | 220,000 |
40.13% ↑
|
2000年 | 157,000 |
0.64% ↑
|
1999年 | 156,000 | - |
1998年 | 156,000 |
0.65% ↑
|
1997年 | 155,000 |
0.65% ↑
|
1996年 | 154,000 |
-39.13% ↓
|
1995年 | 253,000 |
6.3% ↑
|
1994年 | 238,000 |
5.78% ↑
|
1993年 | 225,000 |
6.13% ↑
|
1992年 | 212,000 |
6% ↑
|
1991年 | 200,000 |
6.38% ↑
|
1990年 | 188,000 |
5.62% ↑
|
1989年 | 178,000 |
5.95% ↑
|
1988年 | 168,000 |
6.33% ↑
|
1987年 | 158,000 |
6.04% ↑
|
1986年 | 149,000 |
-3.87% ↓
|
1985年 | 155,000 |
6.16% ↑
|
1984年 | 146,000 |
7.35% ↑
|
1983年 | 136,000 |
4.62% ↑
|
1982年 | 130,000 |
5.69% ↑
|
1981年 | 123,000 |
4.24% ↑
|
1980年 | 118,000 |
-4.84% ↓
|
1979年 | 124,000 |
7.83% ↑
|
1978年 | 115,000 |
7.48% ↑
|
1977年 | 107,000 |
10.31% ↑
|
1976年 | 97,000 |
8.99% ↑
|
1975年 | 89,000 |
7.23% ↑
|
1974年 | 83,000 |
9.21% ↑
|
1973年 | 76,000 |
8.57% ↑
|
1972年 | 70,000 |
3.55% ↑
|
1971年 | 67,600 |
0.9% ↑
|
1970年 | 67,000 |
0.6% ↑
|
1969年 | 66,600 |
0.38% ↑
|
1968年 | 66,350 |
0.38% ↑
|
1967年 | 66,100 |
0.38% ↑
|
1966年 | 65,850 |
4.52% ↑
|
1965年 | 63,000 |
5.53% ↑
|
1964年 | 59,700 |
4.01% ↑
|
1963年 | 57,400 |
4.94% ↑
|
1962年 | 54,700 |
4.39% ↑
|
1961年 | 52,400 | - |
パキスタンの羊肉生産量データを見ると、1961年から長期的には一貫して増加しています。これは、羊が牧草地の利用効率が高い動物であり、農村地域における重要な収入源となっているためです。特に1970年から1980年代にかけての増加は顕著で、この期間中にパキスタン政府が畜産業および農業部門への支援策を増強したことや、国内需要の増加が主な要因とされています。しかし1980年には118,000トンへの落ち込みがあり、その後再び成長しています。
1990年代以降も増加傾向は続きますが、1996年には生産量が一時的に154,000トンまで急激に減少しています。この期間、天候不順と家畜病の流行が畜産業に深刻な影響を与えたと考えられています。その後生産量は徐々に回復し、再び2000年代には安定期に入りました。
2001年以降は再び増加していきましたが、2006年以降は年々の増加率がやや減速し始めます。これは過放牧による牧草地の劣化や、気候変動の影響(例えば乾燥化や降水量の減少)など、環境面での制約が影響している可能性があります。近年まで継続して緩やかに増加しており、2023年には253,000トンに達しています。これは、農村人口の多いパキスタンにとって、羊肉生産が依然として重要な経済活動であることを示しています。
パキスタンでの羊肉生産は国内需要を満たすために進化してきましたが、アジア地域全体との比較では依然として中国やインドといった近隣諸国の大規模な生産量には及びません。特に中国は世界最大の羊肉生産国として知られ、パキスタンの2023年の生産量は中国と比較するとわずかな割合にすぎません。しかし、その一方で、パキスタンは周辺諸国や中東への輸出を考える上で重要な潜在力を秘めています。
この産業が抱える主要な課題は、まず牧草地の過剰利用です。放牧地の劣化が進むと、家畜の成長に影響を与えるだけでなく、生態系全体に悪影響を及ぼします。また、羊の飼育において発生する温室効果ガス(特にメタン)は、環境問題の観点から重要なテーマです。さらに、地政学的リスクも羊肉生産に影響を与えています。パキスタンは歴史的に地域紛争や自然災害の影響にさらされており、これらが農村部の生産活動に追加のプレッシャーを与えています。
これらの課題に対処するためには、まず持続可能な放牧管理を導入することが必要です。具体的には、過放牧を防ぐための牧草地のローテーション利用を奨励し、植生の回復プロセスを支援する仕組みを構築することが求められます。また、動物飼育技術の改善と家畜病予防のための適切な医療アクセスの確保が重要です。さらに、羊肉生産者が新しい市場にアクセスできるよう貿易政策を強化し、輸出先の多様化を目指すことも有効です。特に中東地域では羊肉に対する需要が根強いため、パキスタンの生産者にとって魅力的な市場となるでしょう。
まとめとして、パキスタンの羊肉生産量は安定的に成長を続けていますが、環境負荷の軽減や生産基盤の強化が必要です。これにより、国内市場の需要を満たすだけでなく、輸出産業としても更なる発展が見込めるでしょう。国際連合や地域協力を含む幅広い支援策を活用し、パキスタンが持続可能な畜産システムを構築することが期待されます。