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パキスタンのナス生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が発表したデータによると、パキスタンのナスの生産量は1980年の44,715トンから長期的に増加を続け、2021年には106,177トンと過去最高を記録しました。ただし、2022年には95,001トンと以前のピークを下回る結果となっています。この増加には農業技術の向上や品種の改良が寄与していますが、近年の減少は気候変動や地域インフラの問題などが影響を与えた可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 139,229
46.56% ↑
2022年 95,001
-10.53% ↓
2021年 106,177
5.98% ↑
2020年 100,184
11.66% ↑
2019年 89,724
2.44% ↑
2018年 87,587
3.95% ↑
2017年 84,255
0.87% ↑
2016年 83,529
-0.36% ↓
2015年 83,832
1% ↑
2014年 82,999
-1.37% ↓
2013年 84,149
-7.66% ↓
2012年 91,126
6% ↑
2011年 85,965
1.49% ↑
2010年 84,707
-5.85% ↓
2009年 89,972
2.07% ↑
2008年 88,148
0.82% ↑
2007年 87,434
1.05% ↑
2006年 86,528
-2.16% ↓
2005年 88,434
0.37% ↑
2004年 88,112
-1.67% ↓
2003年 89,606
-9.89% ↓
2002年 99,443
9.24% ↑
2001年 91,032
1.79% ↑
2000年 89,431
-8.59% ↓
1999年 97,837
3.81% ↑
1998年 94,243
12.19% ↑
1997年 84,000
6.33% ↑
1996年 79,000
6.76% ↑
1995年 74,000
0.96% ↑
1994年 73,298
0.83% ↑
1993年 72,692
1.52% ↑
1992年 71,601
1.35% ↑
1991年 70,650
13.51% ↑
1990年 62,243
18.14% ↑
1989年 52,687
-1.9% ↓
1988年 53,709
0.27% ↑
1987年 53,562
-9.83% ↓
1986年 59,399
5.7% ↑
1985年 56,196
8.7% ↑
1984年 51,699
-13.72% ↓
1983年 59,922
9.07% ↑
1982年 54,939
32.9% ↑
1981年 41,339
-7.55% ↓
1980年 44,715 -

パキスタンにおけるナスの生産量は、1980年以降の42年間でおおむね増加傾向を示してきました。1980年の44,715トンから1990年代までに約74,000トンへと増加し、その後も持続的な成長が見られ、2021年には過去最高の106,177トンの生産量に達しました。この増加は、農業技術の進歩や肥沃な土地の利用拡大、改良されたナス品種の導入によるものです。また、一部の地域で灌漑システムが改善されたことも、収穫量の向上を支える要因と考えられます。

ただし、ナス生産の成長は一様ではなく、1990年以降に周期的な減少期が見られます。例えば、2000年代初頭や2010年代中期には一時的な生産量の減少が記録されました。このような変化の背景には、不規則な降雨や気温の変動を含む気候変動の影響、輸送や保管インフラの不備、さらには農業従事者の減少などが関連している可能性が挙げられます。

近年の興味深い動向として、2020年から2021年にかけての急速な生産量の増加があります。2020年には100,184トン、2021年には106,177トンと劇的な伸びを示しました。しかし、2022年になると95,001トンへと減少しています。これは、新型コロナウイルス感染症の影響で初期には供給チェーンが改善されたのに対し、その後の物流の停滞や肥料価格の高騰など、経済的・社会的要因が影響したと考えられます。

地域的な課題として、パキスタンは気候変動に非常に脆弱な国の一つであることが挙げられます。頻発する洪水や干ばつが農作物に大きな被害を及ぼしており、ナスもその影響を免れません。また、十分に整備されていない農業インフラや冷蔵倉庫の不足が、収穫後損失(収穫された農産物が保管・運搬時に失われること)を増長しています。

さらに、農業政策や現地の農家の支援体制にも抜本的な改善が求められます。他国との比較では、例えば中国やインドはパキスタンと同様にナスを主要農産物としていますが、これらの国々は大規模農業や市場流通の高度化により生産性を継続的に向上させています。日本においては、生産量自体は少ないものの、精密な栽培技術や高付加価値化に注力しています。これらの事例は参考になるでしょう。

パキスタンでは今後、気候変動対策を農業政策に取り入れながら、持続可能な農業を模索することが重要です。具体的な対策として、耐乾性の高い品種の導入や雨水貯留システムの普及が挙げられます。また、冷蔵物流網の整備と農家への融資支援によって収穫後損失を減らし、生産物を効率よく市場に届ける仕組みを作る必要があります。さらに、地域間で協力して気候変動に対応するための研究開発を進めることで、新たな技術や知見の導入が期待されます。

結論として、パキスタンのナス生産量は今後も一定の成長余地があると言えますが、気候変動やインフラの脆弱さといった課題への対応がその実現の鍵となります。国際機関や他国との協力を深めることでこれらの問題を克服し、持続可能で競争力のある農業モデルを構築することが期待されます。