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パキスタンのキャベツ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによれば、パキスタンのキャベツ生産量は、1980年代に低迷していたものの、1990年代以降徐々に増加し、2020年代に入ると急速な伸びを見せています。特に2020年以降の生産量拡大が顕著で、2020年には前年比で約30%増加し、2022年には生産量が116,947トンに達しています。この増加は技術革新や農業政策の効果、気候変動への適応努力などが背景と考えられます。

年度 生産量(トン)
2022年 116,947
2021年 111,060
2020年 101,589
2019年 78,546
2018年 79,804
2017年 79,753
2016年 77,311
2015年 77,233
2014年 77,159
2013年 76,778
2012年 73,137
2011年 74,282
2010年 69,080
2009年 71,988
2008年 71,731
2007年 75,695
2006年 74,649
2005年 69,074
2004年 69,507
2003年 66,873
2002年 61,208
2001年 67,274
2000年 61,660
1999年 62,183
1998年 60,044
1997年 58,653
1996年 56,481
1995年 47,911
1994年 45,128
1993年 34,552
1992年 33,376
1991年 29,650
1990年 25,711
1989年 22,792
1988年 20,336
1987年 19,290
1986年 33,379
1985年 32,519
1984年 42,931
1983年 25,251
1982年 38,321
1981年 27,315
1980年 30,948

パキスタンのキャベツ生産量の推移は、国内農業の発展や外的要因の影響を適切に読み取る材料を提供します。1980年代には、生産量が2万から3万トン台に低迷し、1987年には19,290トンと特に低い水準を記録しました。この時期は、農業技術の普及が進んでいなかったことや、政治的・経済的不安定さが農業生産に悪影響を与えたと考えられます。その後、1990年代に入ると生産量は安定的に増加し、環境や市場需要に合わせたキャベツ栽培の手法が徐々に導入されました。1999年には6万トンを超え、2000年代にはさらにその傾向が強まりました。

2020年以降の急激な伸びは特筆に値します。この背景には、灌漑技術の改善や気候変動への対応策、農業専門家への投資などが挙げられます。また、コロナ禍によって発生した世界的な物流の制約や食料価格の高騰が、国内での野菜需要の増加に影響を与えた可能性も考えられます。さらに、2022年に記録された116,947トンという値は、過去40年間で最も高い生産量で、持続的な増加傾向を示しています。

このような生産量の成長は、一方で課題も伴っています。まず、持続可能な農業を実現するためには、水資源の管理や土壌の保全に関心を向ける必要があります。パキスタンはもともと水不足が深刻な国であり、キャベツのような葉物野菜の発展に伴い、多量の水を使用する灌漑システムの負担が増している点は憂慮されます。また、長期的な視点で考えると、気候変動により地域ごとの降雨パターンが変化する可能性があり、これが農作物の生産の安定性を損なう懸念があります。

さらに地政学的な観点では、パキスタンが近隣諸国であるインド、中国などと共有する水資源(特にインダス川流域)をめぐる交渉が、農業政策において重要な役割を果たします。これらの水資源の利用に対して紛争や摩擦が生じた場合、キャベツのみならず農産物全体の生産に悪影響を与えるリスクがあります。

対応策として、まず国家レベルで水管理政策を強化し、小規模農家を支援する灌漑技術の提供が必要です。また、キャベツに適した栽培研究を進め、地域ごとに異なる生産条件に対応できる作物品種を開発することが重要です。同時に、国際市場での輸出戦略を立て、農産物の質の向上や輸出用インフラの整備を進めることで、農業全体の競争力を高めることが求められます。

結論として、パキスタンのキャベツ生産は顕著な成長を遂げていますが、気候・水管理への対応や地政学的リスクの緩和を含む持続可能な政策が不可欠です。FAOや国連の技術支援を活用し、国内外との連携強化を図ることで、農産業の更なる発展が期待されます。