Skip to main content

パキスタンのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、2022年のパキスタンのバナナ生産量は215,570トンであり、過去のデータから大幅な増加が確認されました。一方で、生産量の長期的な推移には大きな変動が特徴的に現れており、一貫した成長を見せる年もあれば、急激な減少を経験した年もあります。特に1991年や2012年など、生産量が大幅に低下した年があり、その理由や背景を考慮することが重要です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 291,807
35.37% ↑
2022年 215,570
51.84% ↑
2021年 141,975
-5.93% ↓
2020年 150,921
11.25% ↑
2019年 135,660
0.45% ↑
2018年 135,056
-1.74% ↓
2017年 137,449
2.09% ↑
2016年 134,634
14.05% ↑
2015年 118,044
-0.6% ↓
2014年 118,756
2.77% ↑
2013年 115,552
19.69% ↑
2012年 96,545
-30.59% ↓
2011年 139,100
-10.16% ↓
2010年 154,825
-1.59% ↓
2009年 157,319
-0.41% ↓
2008年 157,962
4.99% ↑
2007年 150,450
-7.97% ↓
2006年 163,477
10.22% ↑
2005年 148,321
-15.1% ↓
2004年 174,700
22.25% ↑
2003年 142,900
-7.25% ↓
2002年 154,073
7.82% ↑
2001年 142,900
-4.53% ↓
2000年 149,687
7.36% ↑
1999年 139,431
11.41% ↑
1998年 125,150
32.22% ↑
1997年 94,652
1.07% ↑
1996年 93,648
12.52% ↑
1995年 83,225
1.83% ↑
1994年 81,729
2.84% ↑
1993年 79,474
25.65% ↑
1992年 63,250
21.57% ↑
1991年 52,026
-74.22% ↓
1990年 201,777
-3.82% ↓
1989年 209,796
2.27% ↑
1988年 205,148
-0.29% ↓
1987年 205,748
1.86% ↑
1986年 202,000
44.39% ↑
1985年 139,900
2.34% ↑
1984年 136,700
1.42% ↑
1983年 134,781
0.26% ↑
1982年 134,430
2.24% ↑
1981年 131,485
0.51% ↑
1980年 130,815
4.4% ↑
1979年 125,300
-4.01% ↓
1978年 130,538
5.82% ↑
1977年 123,364
5.79% ↑
1976年 116,614
-7.65% ↓
1975年 126,279
8.17% ↑
1974年 116,739
10.94% ↑
1973年 105,228
2.44% ↑
1972年 102,720
16.34% ↑
1971年 88,295
-0.34% ↓
1970年 88,600
71.04% ↑
1969年 51,800
1.17% ↑
1968年 51,200
0.79% ↑
1967年 50,800
11.16% ↑
1966年 45,700
-10.04% ↓
1965年 50,800
21.82% ↑
1964年 41,700
10.9% ↑
1963年 37,600
268.63% ↑
1962年 10,200
-56.41% ↓
1961年 23,400 -

パキスタンのバナナ生産量は、食糧および農業セクターにおいて重要な指標として位置付けられています。1961年では23,400トンだった生産量が、一貫した増加傾向を示し1970年には88,600トン、そして1986年には202,000トンを記録しました。この時期は農業技術の近代化や農業政策の整備が進み、生産性が向上した結果と考えられます。特に1986年から1989年にかけて、生産量が連続して20万トンを超える安定的な成長を記録しました。

一方で、1990年には201,777トンを記録した後、1991年に52,026トンという急激な減少を迎えました。このような大幅な下落は、気候変動、農地の転用、灌漑インフラの老朽化、生産者への経済的支援の不足など、複数の要因が絡んでいる可能性があります。さらに、このころの国際市場における農産物価格の変動も影響を与えたと推測されます。

2000年代以降は再び安定した生産を取り戻し、2010年ごろには年間150,000トン前後の生産が続きました。しかし、2012年には96,545トンまで再度減少しました。この時期にはパキスタン国内を襲った洪水被害が農業インフラに甚大なダメージを与えたことが、生産減少の主な要因として挙げられます。さらに、地域紛争や治安の問題も農業活動に一致する課題となりました。

2022年には215,570トンという高水準を記録しており、復調に向けた動きが見られます。この背景には、気候変動対策、農業技術投資、国際協力による灌漑設備の改善などが寄与したと考えられます。同国の生産能力には依然可能性があり、この分野におけるさらなる成長の余地が期待されています。

パキスタンのバナナ生産量を検討する際、以下の課題を指摘することが重要です。第一に、気候変動の影響を受けやすい農業生産体制の改善が求められています。バナナは高温多湿を好む作物である一方で、洪水や長期間の干ばつには脆弱なため、灌漑施設や排水設備を含むインフラの強化が急務です。第二に、生産者への経済的支援や教育プログラムを通じて、生産性と品質の向上を図る必要があります。特に小規模農家へのアクセス支援や農業技術の普及がこの分野の成長に肝要です。

また、パキスタンの場合、バナナ生産の大部分が地元消費用であるため、輸出拡大の余地もあります。他国と比較すると、インドやフィリピンなどのバナナ主要生産国に対する国際競争力がまだ低く、マーケティング戦略の強化が課題となっています。特に、輸出向けに適した高品質なバナナの生産を目指し、包装、加工、流通の効率化が必要です。

地政学的な影響に関しては、バナナ生産が地域の安定に不可欠な役割を果たしていることを忘れてはなりません。特に農村部では、農業が主要な雇用源であり、ここでの成功が地域の経済的安定と食糧安全保障に直結します。そのため、地域間協力による課題解決や安定的な市場形成が鍵となります。

総じて、データが示すのは、バナナ生産量の変動が気候、経済、政策の複合的な影響を受けているということです。今後の発展に向け、具体的な政策提言として、耐候性の高い品種の研究開発、効率的な灌漑システムの拡充、農家の教育支援などを挙げることができます。パキスタンが直面しているこれらの課題に対応し、持続可能で競争力のあるバナナ生産を実現するためには、政府だけでなく国際社会も協力して取り組む必要があります。