国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した最新データによると、1961年から2022年の間、パキスタンのサツマイモ生産量は長期的な増減を繰り返しながら推移しました。特に、1960年代から1970年代にかけては比較的堅調な増加を見せましたが、1976年から1989年の一時的な減少を経て、1990年代から2000年代は概ね横ばいの状態が続きました。2010年代以降は緩やかな増加に転じています。2021年には15,212トンと高水準を記録しましたが、2022年には若干後退し14,134トンとなりました。
パキスタンのサツマイモ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 25,053 |
77.25% ↑
|
2022年 | 14,134 |
-7.09% ↓
|
2021年 | 15,212 |
5.64% ↑
|
2020年 | 14,400 |
-9.79% ↓
|
2019年 | 15,963 |
26.33% ↑
|
2018年 | 12,636 |
1.17% ↑
|
2017年 | 12,490 |
-0.19% ↓
|
2016年 | 12,514 |
12.72% ↑
|
2015年 | 11,102 |
-8.47% ↓
|
2014年 | 12,130 |
-7.23% ↓
|
2013年 | 13,076 |
-4.26% ↓
|
2012年 | 13,658 |
1.48% ↑
|
2011年 | 13,459 |
13.79% ↑
|
2010年 | 11,828 |
-1.03% ↓
|
2009年 | 11,951 |
21.82% ↑
|
2008年 | 9,810 |
-7.34% ↓
|
2007年 | 10,587 |
6.22% ↑
|
2006年 | 9,967 |
-0.97% ↓
|
2005年 | 10,065 |
-7.22% ↓
|
2004年 | 10,848 |
20.23% ↑
|
2003年 | 9,023 |
-1.01% ↓
|
2002年 | 9,115 |
-0.9% ↓
|
2001年 | 9,198 |
0.95% ↑
|
2000年 | 9,111 |
-1.69% ↓
|
1999年 | 9,268 |
6.86% ↑
|
1998年 | 8,673 |
6.73% ↑
|
1997年 | 8,126 |
1.52% ↑
|
1996年 | 8,004 |
16.39% ↑
|
1995年 | 6,877 |
3.68% ↑
|
1994年 | 6,633 |
4.75% ↑
|
1993年 | 6,332 |
12.77% ↑
|
1992年 | 5,615 |
6.51% ↑
|
1991年 | 5,272 |
12.41% ↑
|
1990年 | 4,690 |
4.18% ↑
|
1989年 | 4,502 |
-21.92% ↓
|
1988年 | 5,766 |
6.34% ↑
|
1987年 | 5,422 |
-64.31% ↓
|
1986年 | 15,190 |
-12.92% ↓
|
1985年 | 17,444 |
1.41% ↑
|
1984年 | 17,202 |
-12.56% ↓
|
1983年 | 19,674 |
-0.13% ↓
|
1982年 | 19,699 |
69.88% ↑
|
1981年 | 11,596 |
-5.86% ↓
|
1980年 | 12,318 |
36.25% ↑
|
1979年 | 9,041 |
-11.8% ↓
|
1978年 | 10,251 |
24.39% ↑
|
1977年 | 8,241 |
-32.41% ↓
|
1976年 | 12,193 |
-18.79% ↓
|
1975年 | 15,015 |
7.25% ↑
|
1974年 | 14,000 |
7.69% ↑
|
1973年 | 13,000 |
8.33% ↑
|
1972年 | 12,000 |
4.35% ↑
|
1971年 | 11,500 |
4.55% ↑
|
1970年 | 11,000 |
4.76% ↑
|
1969年 | 10,500 |
5% ↑
|
1968年 | 10,000 |
5.26% ↑
|
1967年 | 9,500 | - |
1966年 | 9,500 |
5.56% ↑
|
1965年 | 9,000 | - |
1964年 | 9,000 |
12.5% ↑
|
1963年 | 8,000 |
6.67% ↑
|
1962年 | 7,500 |
7.14% ↑
|
1961年 | 7,000 | - |
パキスタンのサツマイモ生産量は、1961年の7,000トンから2022年の14,134トンまで約2倍に増加しています。このデータの長期的な傾向を見ると、成長期と停滞期、さらには急激な減少期が混在する独特の推移が特徴です。たとえば、1960年代から1970年代前半にかけては安定した増加が見られ、1975年には一時的に15,015トンとそれまでの最高値を記録しましたが、1976年の12,193トンへの減少を皮切りに1970年代後半は大幅な減少が続き、1977年には8,241トンまで下落しました。
この減少の背景には、都市化や気候変動、さらには農業政策の転換といった要因が絡んでいると考えられます。また、1970年代後半から1980年代にかけての政治的不安や気候の変動も、この傾向に影響を及ぼした可能性があります。この期間中の気候変動影響は、灌漑条件が整っていない地域でのサツマイモ栽培に特に大きな負荷をかけたと推測されます。
一方で、1980年代後半以降のデータでは再び増加傾向が見られましたが、1990年代から2000年にかけては年間生産量が約9,000トン前後で横ばいの状態が続きました。この期間の生産規模が停滞した要因としては、国内需要の伸び悩みや市場価格の低迷、輸出インフラの整備遅れが挙げられます。
2010年代に入り、緩やかな増加が観測されるようになりました。2019年には大きな上昇が見られ、15,963トンに達しました。これは、気候リスクの緩和や近年の農業支援政策、新技術導入が生産効率の向上を後押しした可能性があります。しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により物流断絶や農業労働力不足が一部で生産に影響を与えたことが考えられ、2022年は14,134トンまでやや減少しました。
パキスタンの地政学的なリスクや気候条件は、サツマイモ生産量に直接的な影響を与える重要な要因であるといえます。サツマイモは日本や中国をはじめとするアジア諸国では主要な農作物の一つとして安定した需要があるにもかかわらず、パキスタン国内では依然として他の主要作物に比べ栽培面積が小さく、国内市場への普及が課題となっています。
将来的には、農業インフラのさらなる充実や技術革新の推進が必要不可欠です。具体的には、より効率的な灌漑システムの導入や耐気候性に優れたサツマイモの品種改良を進めることで、生産量の安定化が期待されます。また、サツマイモの加工品市場や輸出市場の開拓も重要です。特に、地理的に近い中国やインドなどでの需要増加を視野に入れた輸出戦略を策定することが有益でしょう。同時に、持続可能な農業への転換を図り、気候変動へのさらなる適応力を高める必要があります。
これらの施策に加えて、農民教育や政府間協力の強化により、地域ごとの課題を克服しつつ、パキスタンのサツマイモ生産の競争力を高めることが求められます。国際機関や隣国との技術協力を通じて、こうした取り組みを着実に進めていくことで、パキスタンの農業分野全体が強化されることが期待されます。