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エクアドルの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に公開したデータによると、エクアドルの大麦生産量は1961年の70,352トンから1970年代前半にかけて増加しましたが、その後は著しい減少傾向にあります。特に1970年代後半から1980年代にかけては大きな変動が見られました。その後、1990年代以降は大きな復活を見せることなく、安定とはいえない低水準の生産量が続いており、2023年には8,519トンという最低値を記録しました。このデータはエクアドルの農業経済や気候変動、地政学的背景の影響を反映しており、収穫量低下への対策が重要な課題であることを示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 8,519
-23.63% ↓
2022年 11,155
-24.02% ↓
2021年 14,681
4.06% ↑
2020年 14,107
4.89% ↑
2019年 13,450
-1.64% ↓
2018年 13,674
1.19% ↑
2017年 13,513
-46.83% ↓
2016年 25,414
184.69% ↑
2015年 8,927
-38.39% ↓
2014年 14,490
-31.5% ↓
2013年 21,154
92.98% ↑
2012年 10,962
-55.63% ↓
2011年 24,704
31.87% ↑
2010年 18,733
-12.56% ↓
2009年 21,423
19.32% ↑
2008年 17,954
-27.49% ↓
2007年 24,762
5.65% ↑
2006年 23,438
2.29% ↑
2005年 22,914
3.98% ↑
2004年 22,037
-3.19% ↓
2003年 22,763
7.17% ↑
2002年 21,240
-19.43% ↓
2001年 26,361
4.94% ↑
2000年 25,121
-25.3% ↓
1999年 33,629
-6% ↓
1998年 35,777
10.55% ↑
1997年 32,362
-1.74% ↓
1996年 32,935
3.95% ↑
1995年 31,683
-2.23% ↓
1994年 32,406
-26.86% ↓
1993年 44,309
-1.33% ↓
1992年 44,908
23.89% ↑
1991年 36,248
-14.2% ↓
1990年 42,249
-24.47% ↓
1989年 55,937
10.07% ↑
1988年 50,820
16.88% ↑
1987年 43,480
-0.8% ↓
1986年 43,831
64.02% ↑
1985年 26,723
7.1% ↑
1984年 24,952
-15.87% ↓
1983年 29,659
-16.3% ↓
1982年 35,435
30.8% ↑
1981年 27,090
11.25% ↑
1980年 24,350
17.53% ↑
1979年 20,718
-4.79% ↓
1978年 21,760
-46.64% ↓
1977年 40,776
-35.14% ↓
1976年 62,872
0.11% ↑
1975年 62,801
11.85% ↑
1974年 56,148
-29.27% ↓
1973年 79,383
8.17% ↑
1972年 73,387
6.84% ↑
1971年 68,691
-14.01% ↓
1970年 79,887
2.87% ↑
1969年 77,659
2.17% ↑
1968年 76,008
-6.65% ↓
1967年 81,421
5.9% ↑
1966年 76,886
-17.31% ↓
1965年 92,983
15.1% ↑
1964年 80,788
-37.86% ↓
1963年 130,020
22.6% ↑
1962年 106,056
50.75% ↑
1961年 70,352 -

エクアドルの大麦生産量は1961年に70,352トンからスタートし、1963年には130,020トンに達するなど、緩やかな増加基調を見せていました。この時期の増加は、主に国内需要の拡大および気候条件の安定が後押ししていたと考えられます。しかし、1964年以降は急激な減少が見られ、その後の生産量には大きな変動が続きました。1970年代後半になると、生産量は40,000トン未満まで落ち込み、1978年には21,760トン、1979年には20,718トンとさらに減少しました。この背景には、農業政策の不安定さや気候変動が一因として挙げられます。

1980年代以降、大麦生産は一定の回復を見せましたが、過去のピーク値には及ばず、1990年代および2000年代には30,000トン前後の規模で推移しました。この減少傾向には、大麦が他の穀物(例えば、トウモロコシやキヌアなど)や作物と比較して経済的な競争力が弱いことや、輸入穀物の増加によって国内供給のニーズが低下したことが影響しています。

2010年代においては、特に顕著な下落が見られ、2015年には8,927トンまで落ち込みました。そして2023年には、過去最低となる8,519トンを記録しています。この減少には、農業技術の遅れやインフラの老朽化の他、気候変動による降雨量の変動が直結している可能性があります。また、農業における持続可能性を確保するための政策の弱さも問題でした。

さらに、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックや、近年の地政学的な影響も生産に悪影響を与えたと見られています。例えば、輸送ルートの寸断や農薬供給の遅延は、生産維持を困難にしました。

これらのデータを分析すると、現在の低生産量だけでなく、エクアドル全体の農業政策や環境管理の課題が浮き彫りになります。現地の農家は、時折発生する極端な気象条件に対処しながらも、収量を安定させるための近代的な農業技術や気候適応型の品種改良に対する支援が不足している状況です。また、国内市場への大麦加工製品の需要喚起や、農地の効率的利用に向けた政策的な取り組みも不可欠です。

エクアドル政府や国際機関がこの問題に取り組む際、考慮すべき具体策として、持続可能な農業技術の普及、灌漑施設や農業機械の導入支援、地元市場との連携強化などが挙げられます。さらに、気候変動の影響に備えた観測システムの強化や、気候変動に強い大麦品種の研究開発も重要です。これに加え、隣国ペルーなどと協力して地域全体の農業支援ネットワークを強化することも有効です。

結論として、エクアドルの大麦生産量の低下は、国内の農業だけでなく、国際的な食糧供給政策全体の中で重要な課題と捉えられます。将来的な食糧安全保障を確保するためにも、生産者、政府、国際機関が一体となった持続可能な農業の推進が求められています。また、地政学的背景や自然災害への対応も考慮しつつ、長期的に収穫量を安定させるための包括的な対策が必須です。