Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月の最新データによると、エクアドルの米生産量は1961年から2022年にかけて大きな増減を繰り返しながら、全体的には増加傾向を示しています。1961年の生産量は203,000トンでしたが、1980年代以降急激に増加し、1994年には1,420,470トン、2004年には1,778,380トンでピークを記録しました。その後は比較的安定して推移していましたが、2019年以降の減少が注目されます。最近では、新型コロナウイルスの影響や気候変動要因も考慮する必要があります。
エクアドルの米生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 1,252,800 |
2021年 | 1,207,000 |
2020年 | 1,072,400 |
2019年 | 882,400 |
2018年 | 1,083,300 |
2017年 | 1,330,500 |
2016年 | 1,231,300 |
2015年 | 1,326,200 |
2014年 | 1,107,300 |
2013年 | 1,216,300 |
2012年 | 1,256,200 |
2011年 | 1,185,900 |
2010年 | 1,369,100 |
2009年 | 1,579,406 |
2008年 | 1,442,052 |
2007年 | 1,734,135 |
2006年 | 1,501,238 |
2005年 | 1,471,064 |
2004年 | 1,778,380 |
2003年 | 1,384,715 |
2002年 | 1,432,811 |
2001年 | 1,255,990 |
2000年 | 1,246,634 |
1999年 | 1,289,684 |
1998年 | 1,042,992 |
1997年 | 1,471,778 |
1996年 | 1,398,346 |
1995年 | 1,290,518 |
1994年 | 1,420,470 |
1993年 | 1,239,762 |
1992年 | 1,029,558 |
1991年 | 557,346 |
1990年 | 840,361 |
1989年 | 867,395 |
1988年 | 954,530 |
1987年 | 780,776 |
1986年 | 575,869 |
1985年 | 397,354 |
1984年 | 437,166 |
1983年 | 273,502 |
1982年 | 384,356 |
1981年 | 434,395 |
1980年 | 380,614 |
1979年 | 318,471 |
1978年 | 225,273 |
1977年 | 327,622 |
1976年 | 355,525 |
1975年 | 363,675 |
1974年 | 266,330 |
1973年 | 234,530 |
1972年 | 191,425 |
1971年 | 197,665 |
1970年 | 230,090 |
1969年 | 274,340 |
1968年 | 146,720 |
1967年 | 239,980 |
1966年 | 278,200 |
1965年 | 265,545 |
1964年 | 239,990 |
1963年 | 211,000 |
1962年 | 209,000 |
1961年 | 203,000 |
エクアドルの米生産量は、1961年に203,000トンという比較的低い数値からスタートしました。これ以降、1960年代後半から1970年代にかけて、生産量に大きな変動が見受けられます。例えば、1966年には278,200トンに上昇しましたが、1968年に146,720トンまで減少しました。その背景には、当時の技術革新の余地、市場需要の不安定さ、さらには地域的な天候変動が影響していたと考えられます。また、1970年代後半以降は政府の農業政策や肥料などの技術的改善を反映して1,000,000トンを超える年も増え始め、ここからエクアドルの米生産は大規模化が進みました。
1992年から1994年にかけて、エクアドルは1,000,000トン以上の生産量を維持し、その後の1990年代後半でもほぼ安定した成長を見せました。特に、1992年の1,029,558トンから1997年には1,471,778トンに達しています。この成長の要因として、エクアドル国内の農業インフラ整備や冷害・干ばつの減少が挙げられます。しかし、1998年にはエルニーニョ現象による気象異常が原因となり、1,042,992トンまで大幅に減少しました。このように、エクアドルの米生産動態には世界的な気候変動の影響が顕著です。
2000年以降、米生産量は1,200,000トンから1,700,000トンの範囲でおおむね安定して推移しています。例えば、2004年には1,778,380トンという過去最高の生産量を記録していますが、この増産には農業機械化や灌漑設備の拡大が背景にあると考えられます。一方で、2010年以降は一定の減少傾向も見られ、2019年の882,400トンへの急落は注目に値します。この期間には、気候変動に伴う深刻な干ばつや、エクアドル経済の不安定さが影響した可能性があります。
また、2019年以降の新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした労働力不足や物流の問題も米生産量に影響を与えています。一時的に2020年には1,072,400トン、2021年は1,207,000トンと回復しましたが、持続可能性の観点からは、生産を安定化させるための気候対策や農業支援政策が不可欠といえます。
エクアドルの米生産には多くの課題もついて回ります。地政学的な視点から見ると、エクアドル特有の地理的条件、すなわちアンデス山脈による限定的な農地と熱帯雨林の生態系保護問題が、農業生産の拡大を抑制しています。さらに、国際貿易におけるコメ価格の変動や、周辺国との競争も、エクアドルの農家にとって大きなリスク要因です。
これからの課題としては、まず気候変動に強い作物の開発や灌漑技術のさらなる向上が求められます。また、エネルギー効率の高い農業技術の導入によるコスト削減も重要です。労働環境を整えるための農業従事者の待遇改善や、女性農業従事者への支援強化も持続可能な生産のための一手となります。さらに、国際機関やアジア諸国(特に日本・中国・インド)との協力の下、新技術や生産資源の共有を図ることが生産性向上に有効です。
エクアドル政府が早期に包括的な農業政策を策定し、気候変動に対する適応策を推進することができれば、同国の米生産は再び安定成長の道を進むことができるでしょう。