国際連合食糧農業機関の最新データによると、エクアドルのパイナップル生産量は2023年に507,987トンとなり、前年の295,311トンを大幅に上回る急増を記録しました。長期的には、生産量は波がありながらも着実に増加傾向を示しており、ここ数年で特に顕著な成長を見せています。ただし、2019年や1983年など、劇的な低下を見せる年もあり、過去には気候や経済、社会的要因による変動が推察されます。2023年の大幅な増加は、政策や技術進歩の影響が考えられ、エクアドルの農業部門にとって大きな転機となる可能性があります。
エクアドルのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 507,987 |
72.02% ↑
|
2022年 | 295,311 |
42.9% ↑
|
2021年 | 206,660 |
98.6% ↑
|
2020年 | 104,059 |
124.52% ↑
|
2019年 | 46,348 |
-69.01% ↓
|
2018年 | 149,548 |
-9.53% ↓
|
2017年 | 165,307 |
42.45% ↑
|
2016年 | 116,044 |
-55.96% ↓
|
2015年 | 263,521 |
78.13% ↑
|
2014年 | 147,933 |
9.59% ↑
|
2013年 | 134,987 |
12.49% ↑
|
2012年 | 120,000 |
2.56% ↑
|
2011年 | 117,000 |
-6.02% ↓
|
2010年 | 124,500 |
3.75% ↑
|
2009年 | 120,000 |
0.56% ↑
|
2008年 | 119,337 |
8.49% ↑
|
2007年 | 110,000 |
4.76% ↑
|
2006年 | 105,000 |
1.47% ↑
|
2005年 | 103,478 |
37.59% ↑
|
2004年 | 75,206 |
11.9% ↑
|
2003年 | 67,206 |
-12.28% ↓
|
2002年 | 76,616 |
61.92% ↑
|
2001年 | 47,318 |
-2.45% ↓
|
2000年 | 48,507 |
-33.55% ↓
|
1999年 | 73,000 |
-8.69% ↓
|
1998年 | 79,947 |
165.16% ↑
|
1997年 | 30,150 |
-47.88% ↓
|
1996年 | 57,851 |
10.11% ↑
|
1995年 | 52,540 |
-15.26% ↓
|
1994年 | 62,005 |
21.97% ↑
|
1993年 | 50,837 |
17.49% ↑
|
1992年 | 43,271 |
34.12% ↑
|
1991年 | 32,264 |
-45.33% ↓
|
1990年 | 59,021 |
2.99% ↑
|
1989年 | 57,306 |
2.89% ↑
|
1988年 | 55,698 |
3.49% ↑
|
1987年 | 53,819 |
-17.83% ↓
|
1986年 | 65,495 |
-6.53% ↓
|
1985年 | 70,067 |
7.68% ↑
|
1984年 | 65,072 |
-29.49% ↓
|
1983年 | 92,288 |
-32.51% ↓
|
1982年 | 136,751 |
-2.46% ↓
|
1981年 | 140,194 |
3.83% ↑
|
1980年 | 135,023 |
8.04% ↑
|
1979年 | 124,975 |
-0.31% ↓
|
1978年 | 125,364 |
6.13% ↑
|
1977年 | 118,123 |
-9.21% ↓
|
1976年 | 130,106 |
-2.54% ↓
|
1975年 | 133,500 |
36.72% ↑
|
1974年 | 97,648 |
118.97% ↑
|
1973年 | 44,595 |
-38.97% ↓
|
1972年 | 73,068 |
30.57% ↑
|
1971年 | 55,960 |
-5.3% ↓
|
1970年 | 59,090 |
3.14% ↑
|
1969年 | 57,292 |
3.95% ↑
|
1968年 | 55,116 |
-0.31% ↓
|
1967年 | 55,289 |
-11.3% ↓
|
1966年 | 62,336 |
13.47% ↑
|
1965年 | 54,934 |
7.12% ↑
|
1964年 | 51,283 |
5.27% ↑
|
1963年 | 48,715 |
-1.96% ↓
|
1962年 | 49,691 |
-0.62% ↓
|
1961年 | 50,000 | - |
エクアドルは、熱帯気候を活かしてパイナップルを重要な農産物の一つとして生産してきました。その生産量推移の経緯を見ると、1961年の50,000トンから始まり、その後も波を描きながら順調に拡大を続けています。長期推移として、生産量は1960年代後半から1970年代中頃にかけて大きな成長を記録、その後1980年に135,023トンという初めて10万トンを超える結果に達しました。一方で、1980年代後半や1990年代には再び減少期を迎え、一部の年(例えば1991年や1997年)には3万トン台まで落ち込む場面もありました。
特筆すべきは、2015年以降の動きです。2015年に263,521トンと驚異的な増加を示し、2023年には過去最高となる507,987トンを記録しました。これは、農業技術の改善や出荷体制の充実、加えてパイナップルの国際需要の増加が影響した可能性があります。特に、2020年以降の生産量の成長には、新型コロナウイルスによる農産物の保守的な需要増加や、エクアドル政府が進めた農業投資政策が寄与したと考えられます。一方で、2019年に46,348トンという急激な減少が見られたのは、同地域での気候変動の影響や輸出市場の縮小が関与していると推測されます。
エクアドルの近年のパイナップル生産量の増加は、国際市場での競争力を高める一助となっており、特に同じ熱帯産地のフィリピンやコスタリカといった主要なライバル国に追随するための強い基盤を築いたと言えるでしょう。日本を含むアジア市場では、栄養価の高いパイナップルへの需要が安定化していますが、地理的に近いアメリカ市場でも拡大の余地があります。このような背景を活かし、エクアドルが輸出戦略を強化することが今後の成長の鍵となります。
それでも課題は残ります。まず、生産量の大きな変動が示すように、気候変動への適応が不十分なケースもあります。熱帯気候を前提にした生産では、大雨や干ばつといった極端気候が生産量に直接影響を及ぼしやすく、今後も安定供給のリスクが存在します。さらに、2022年から2023年にかけて大幅な生産量増加を達成したものの、これが一時的なブームに終わらず、持続可能な成長に繋がるかどうかは技術的未解決の課題と政策的な支援にかかっています。
具体的な提案としては、生産基盤の多様化と気候変動への適応を目指した研究・開発を推進する必要があります。灌漑や排水設備の改良、耐病性の高いパイナップル品種の育成が生産の安定化に寄与します。また、農民への教育やスキルの向上を促進し、現地の生産者が市場の変化に迅速に対応できるようにすることが重要です。さらに、国際市場での輸出体制を整備するために、輸出関連のインフラの整備や物流の最適化も必要です。パイナップルは市場で特に鮮度が重視される果物であり、輸出の迅速性や冷蔵技術の導入が鍵を握ります。
エクアドルは豊富な土地資源を持ちながらも、気候リスクや市場環境の変化に柔軟に対応していく必要があります。持続可能な農業と積極的な輸出戦略を組み合わせることで、エクアドルは世界市場での地位をさらに高めるポテンシャルを秘めています。国際的な協力や国連を通じた資金援助も視野に入れることで、さらなる発展が期待される分野です。