国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、エクアドルの羊飼養数は1961年の約170万匹から1973年の約202万匹をピークとし、その後大きな減少と増減を繰り返しています。2022年時点では約55万匹に留まり、この60年間で約3分の1にまで縮小しました。この推移は主に経済、社会、そして環境的な変化を要因としており、エクアドルの農畜産業における変化とともに捉えることが重要です。
エクアドルの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 551,960 |
2021年 | 528,828 |
2020年 | 496,535 |
2019年 | 464,644 |
2018年 | 355,897 |
2017年 | 390,120 |
2016年 | 478,486 |
2015年 | 506,696 |
2014年 | 619,366 |
2013年 | 739,475 |
2012年 | 711,697 |
2011年 | 742,963 |
2010年 | 792,498 |
2009年 | 819,559 |
2008年 | 743,136 |
2007年 | 846,435 |
2006年 | 973,223 |
2005年 | 1,053,129 |
2004年 | 1,046,737 |
2003年 | 1,014,321 |
2002年 | 1,109,845 |
2001年 | 1,976,176 |
2000年 | 1,127,468 |
1999年 | 2,195,865 |
1998年 | 2,080,999 |
1997年 | 1,802,463 |
1996年 | 1,708,920 |
1995年 | 1,692,000 |
1994年 | 1,690,000 |
1993年 | 1,631,000 |
1992年 | 1,565,000 |
1991年 | 1,501,000 |
1990年 | 1,419,895 |
1989年 | 1,329,000 |
1988年 | 1,226,300 |
1987年 | 1,293,000 |
1986年 | 1,194,600 |
1985年 | 1,253,500 |
1984年 | 1,162,900 |
1983年 | 1,022,900 |
1982年 | 1,013,800 |
1981年 | 1,258,000 |
1980年 | 1,096,836 |
1979年 | 1,089,706 |
1978年 | 1,077,564 |
1977年 | 1,071,563 |
1976年 | 1,542,000 |
1975年 | 2,054,700 |
1974年 | 2,060,000 |
1973年 | 2,020,000 |
1972年 | 1,980,000 |
1971年 | 1,940,000 |
1970年 | 1,895,000 |
1969年 | 1,855,000 |
1968年 | 1,811,433 |
1967年 | 1,780,000 |
1966年 | 1,749,000 |
1965年 | 1,718,041 |
1964年 | 1,680,947 |
1963年 | 1,644,122 |
1962年 | 1,749,000 |
1961年 | 1,703,000 |
エクアドルの羊飼養数データを振り返ると、1960年代から1970年代の初頭までは堅調に増加し、1973年には約202万匹となりました。しかしその後1976年から急激な減少が始まり、特に1977年では100万匹を大きく下回る約107万匹となりました。この時期の大幅な減少は、エクアドルの経済危機や農村部の機械化の進展により、従来の牧畜業が競争力を失い始めたことが背景にあると推測されます。また、同時期には農地の転用や国土利用の転換も進み、羊の放牧に適した土地が減少していました。
1980年代に入ると若干増加傾向が見られましたが、これも持続的ではなく、波を描くような推移を繰り返しました。特に2000年代以降において、羊の飼養数は再び急激に減少し始めました。例えば、2000年には約112万匹が確認されていますが、これが2022年には約55万匹と、半減以上の減少となっています。この減少の一因として、エクアドルでの都市化の進展や農畜産業の集約化、そして羊毛や羊肉の需要減少が挙げられるでしょう。隣国のペルーやボリビアなど、同様の地域においても家畜関連産業の動向に類似した現象が見られますが、エクアドルではそれが特に顕著です。
また、気候変動による牧草地の減少や、環境的ストレスも小規模牧畜に影響を及ぼしている可能性があります。エルニーニョ現象や洪水などの自然災害も、過去数十年にわたってエクアドル農村地帯の経済に打撃を与えました。それに加え、羊農家への家畜管理の支援や技術提供の不足、さらにエクアドルの政府による牧畜支援策の限界も課題として挙げられます。
羊の飼養数減少が顕著である中、2020年からはやや持ち直し、2022年には約55万匹まで回復しています。この回復には、新型コロナウイルスの流行を契機とした「ローカルフード」への関心の高まりが影響している可能性があります。パンデミック中、多くの国で輸出入に制限がかかる中、地元資源に依存した食料供給が重視されるようになり、羊肉などの国内消費が増加したと見られます。
今後、持続可能な牧畜業を推進するためには幾つかの課題が挙げられます。第一に、小規模農家が抱える経済的困難を軽減するための政策支援が不可欠です。具体的には、育種技術の導入や牧草管理の改善を通じて収穫性を向上させることが有効と考えられます。第二に、気候変動に対応するための「レジリエンス」を強化する必要があります。これには、気候に適応した品種の育成や、洪水・干ばつなどの災害への予防対策を含みます。さらに、地域間での協力体制を強化し、隣国と連携した畜産業発展の枠組みを形成することも重要です。
結論として、エクアドルの羊飼養数の推移は、地元経済や環境そして国際貿易の変遷を反映したものであるといえます。しかしながら、減少傾向にある現在の状況を逆転させるには、国家政策だけでなく地域社会が一体となり、環境保護と牧畜業の調和を図る取り組みが求められます。国際的な協力も視野に入れ、持続可能な牧畜業モデルの確立が鍵となるでしょう。