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エクアドルのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エクアドルのナシ生産量は1961年の5,000トンを皮切りに長期的に増減を繰り返しています。特に1994年の20,858トン、1996年の25,899トンといったピーク年が見られるものの、近年では安定した低水準で推移しており、2023年の生産量は7,210トンとなっています。この安定した水準は、1960年代や1970年代の初期よりも若干高いですが、1990年代半ばに比べると大きく減少しています。気候や生産体制、経済的・社会的背景などがこの動向に影響を及ぼしていると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 7,210
-0.08% ↓
2022年 7,215
0.1% ↑
2021年 7,208
0.03% ↑
2020年 7,206
-0.36% ↓
2019年 7,232
0.65% ↑
2018年 7,186
-0.19% ↓
2017年 7,200
-1.52% ↓
2016年 7,311
3.75% ↑
2015年 7,047
-2.69% ↓
2014年 7,241
-5.28% ↓
2013年 7,645
-3.17% ↓
2012年 7,896
-3.67% ↓
2011年 8,197
2.79% ↑
2010年 7,974
6.32% ↑
2009年 7,500
10.13% ↑
2008年 6,810
-38.09% ↓
2007年 11,000
0.46% ↑
2006年 10,950
0.47% ↑
2005年 10,899
11.64% ↑
2004年 9,763
88.62% ↑
2003年 5,176
-49.14% ↓
2002年 10,176
-14.48% ↓
2001年 11,899
53.32% ↑
2000年 7,761
0.83% ↑
1999年 7,697
-43.42% ↓
1998年 13,604
-46.86% ↓
1997年 25,602
-1.15% ↓
1996年 25,899
148.41% ↑
1995年 10,426
-50.01% ↓
1994年 20,858
35.67% ↑
1993年 15,374
1.88% ↑
1992年 15,091
66.07% ↑
1991年 9,087
68.15% ↑
1990年 5,404
-18.08% ↓
1989年 6,597
25.13% ↑
1988年 5,272
-24.96% ↓
1987年 7,026
4.07% ↑
1986年 6,751
4.67% ↑
1985年 6,450
-7.66% ↓
1984年 6,985
-8.19% ↓
1983年 7,608
-13.85% ↓
1982年 8,831
-5.56% ↓
1981年 9,351
6.16% ↑
1980年 8,808
-5.2% ↓
1979年 9,291
2.27% ↑
1978年 9,085
104.48% ↑
1977年 4,443
-58.46% ↓
1976年 10,695
7.96% ↑
1975年 9,906
-16.24% ↓
1974年 11,826
6.14% ↑
1973年 11,142
106.07% ↑
1972年 5,407
137.46% ↑
1971年 2,277
-21.91% ↓
1970年 2,916
-0.61% ↓
1969年 2,934
8.79% ↑
1968年 2,697
3.73% ↑
1967年 2,600
-25.95% ↓
1966年 3,511
2.78% ↑
1965年 3,416
-20.52% ↓
1964年 4,298
-22.35% ↓
1963年 5,535
9.84% ↑
1962年 5,039
0.78% ↑
1961年 5,000 -

エクアドルにおけるナシの生産量推移を詳しく見ると、特に1960年代から1970年代においては、一貫して2,000トンから5,000トンの範囲で変動していました。1973年に11,142トンに急増し、その後1974年には11,826トンへとさらに上昇しましたが、1970年代後半には一時的に減少しました。1990年代に入ると再び顕著な伸びが見られ、特に1992年の15,091トン、1994年の20,858トン、そして1996年の25,899トンといった記録的な増加が確認されています。しかし、それ以降は2000年以降に入って減少傾向が続き、2010年以降では年間約7,000トン台に収まり、安定的かつ低い数値を維持しています。

このような動きにはいくつかの理由が考えられます。まず、エクアドルが赤道直下の国であり、気候の変動がナシの栽培に直接的な影響を与える可能性があります。ナシは通常、温暖かつ適度な降雨量を必要としますが、エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった気候変動が農業生産に不規則な影響を与えます。特に1990年代半ばのピークの時期は、気温や降水量といった条件が極めて良好だった可能性が高く、この時期に一時的な大幅な生産増加が見られました。その一方で、近年の安定的な水準は、気候や栽培技術の向上にもかかわらず、農業政策や輸出市場のニーズ不足が主な要因となっている可能性があります。

さらに、エクアドル国内の経済的な背景や、農業生産に対する労働力供給の問題も無視できません。近年の栽培量は1990年代に比して大きく減少していますが、これは他の作物への集中や輸入品の台頭による影響を受けた結果であると考えられます。エクアドルはバナナやカカオ、コーヒーなどの輸出農産物で世界的な地位を築いていますが、ナシのような比較的小規模かつ国内市場向けの作物は資金と労働力が不足しがちです。

これらの背景を踏まえると、エクアドルが今後ナシの生産を持続可能に増加させるためには、いくつかの具体的な取り組みが必要です。第一に、気候に適応した品種改良や効率的な栽培技術の導入を促進することが重要です。有望な品種の選定を進め、気候変動や自然災害に強い農業インフラを構築することで、生産の変動を最小限に抑えることができます。第二に、国内外の市場に向けてナシの販路を拡大し、輸出促進政策を採用することで農家の経済的インセンティブを高める取り組みが必要です。例えば、韓国や中国など、高品質な果物が注目されている国々に向けて競争力を高める戦略が有効といえるでしょう。

同時に、政策的支援の充実も欠かせません。政府は持続可能な農業を後押しするため、金融アクセスの拡充や技術トレーニングの提供に力を入れるべきです。また、ナシの付加価値を高める加工食品産業の振興も、農業の生産能力の向上に貢献すると考えられます。

結論として、エクアドルのナシ生産量の推移は、気候条件、政策、市場動向が大きく関与していることが伺えます。1990年代の成功体験を踏まえ、現代における持続的な生産増加を実現するためには、気候変動への適応策や市場競争力の向上といった包括的な取り組みが欠かせません。将来的には、国内農家や政府、さらには国際的な支援が連携し、ナシ生産の復活と競争力ある地位を確立することが求められているといえるでしょう。