FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによれば、エチオピアの牛乳生産量は長年にわたり増減を繰り返しながらも、1993年から2023年の30年間で全体的に成長を見せています。特に2000年代初頭に大幅な増加を記録し、その後も一定の変動を伴いながらも2023年には4,236,834トンに達しました。一方で、近年の極端な増減や、他国との比較における効率性の課題も引き続き注目が必要です。
エチオピアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 4,236,834 |
2.06% ↑
|
2022年 | 4,151,456 |
7.38% ↑
|
2021年 | 3,866,052 |
-17.62% ↓
|
2020年 | 4,692,994 |
20.48% ↑
|
2019年 | 3,895,323 |
18.6% ↑
|
2018年 | 3,284,452 |
-1% ↓
|
2017年 | 3,317,786 |
5.86% ↑
|
2016年 | 3,134,181 |
-2.07% ↓
|
2015年 | 3,200,283 |
-4.16% ↓
|
2014年 | 3,339,240 |
-4.59% ↓
|
2013年 | 3,500,000 |
-8.02% ↓
|
2012年 | 3,804,991 |
14.27% ↑
|
2011年 | 3,329,855 |
-17.94% ↓
|
2010年 | 4,057,998 |
38.02% ↑
|
2009年 | 2,940,217 |
-8.74% ↓
|
2008年 | 3,221,652 |
22.52% ↑
|
2007年 | 2,629,521 |
13.44% ↑
|
2006年 | 2,318,029 |
8.37% ↑
|
2005年 | 2,138,980 |
-12.02% ↓
|
2004年 | 2,431,149 |
-2.75% ↓
|
2003年 | 2,500,000 |
0.85% ↑
|
2002年 | 2,478,969 |
147.9% ↑
|
2001年 | 1,000,000 |
11.11% ↑
|
2000年 | 900,000 |
-6.31% ↓
|
1999年 | 960,620 |
1.2% ↑
|
1998年 | 949,230 |
1.2% ↑
|
1997年 | 937,970 |
1.2% ↑
|
1996年 | 926,850 |
13.03% ↑
|
1995年 | 820,000 |
7.89% ↑
|
1994年 | 760,000 |
1.33% ↑
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1993年 | 750,000 | - |
エチオピアにおける牛乳の生産量は、この国の農業、特に畜産業の重要性を示す重要な指標です。牛乳は国内の栄養供給だけでなく、地方経済や輸出産業の発展に寄与する重要な資源です。データは1993年に750,000トンからスタートし、特に1996年以降は目覚ましい増加を見せ、2002年には2,478,969トンと一気に2倍以上に拡大しました。これは、農業政策の改善や酪農技術の普及、地域の気候条件の変化が関与した結果と考えられます。しかし、その後の減少傾向や増加と減少のサイクルから、安定した生産基盤の確立が難しい現状をうかがうことができます。
生産量は2010年に4,057,998トンという過去最大の数字を記録しましたが、その後の短期間で急激に減少しており、この間における管理や流通の問題が浮き彫りになっています。また直近の2023年には4,236,834トンを記録し、少しずつ安定の兆しを見せています。2020年代初頭の増加は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおける農業支援政策や、国際的な協力が一助となった可能性があります。
一方で、エチオピアの生産量を国際的に見た場合、たとえばインドやアメリカなどの主要な酪農国と比較すると依然として低い状況にあります。インドの牛乳生産量は年間約2億トンを超えており、エチオピアの約40倍にあたります。この差は主に飼育技術や設備、輸送インフラの未発達に起因していると考えられます。さらに、エチオピアの酪農業は主に小規模農家による伝統的な手法に依存しているため、生産性に限界があるという課題を抱えています。
また、地政学的リスクもエチオピアの牛乳生産に影響を与えています。この地域では長引く政治的不安定や紛争が、農業の効率低下や流通に悪影響をもたらしており、国内消費だけでなく輸出にも影響が出ています。また、気候変動の影響で干ばつが頻繁化していることも、長期的な生産基盤への脅威となっています。
これらを踏まえて、いくつかの改善策が考えられます。まず、酪農の効率を高めるために、畜産技術や飼料の供給体制を改善することが急務です。さらに、インフラ整備の推進により、農家から市場への流通をスムーズにし、生産者が得られる利益の向上を図るべきです。国際機関や隣国からの技術支援を強化し、地域間協力を通じて知識の共有を促進することも有益です。加えて、紛争が農業へ与える影響を最小限に抑えるための政策的な安定化が経済的な将来に不可欠です。
結論として、エチオピアの牛乳生産は過去30年間に長足の進歩を遂げていますが、いくつかの根本的な問題が依然として解決を待っています。この産業は同国の持続可能な発展にとって欠かせない要素であり、より安定した成長を実現するための戦略的な投資が必要です。特に持続的な技術革新、気候変動への対応、地域の安定化を柱とした政策が将来の確実な成果につながるでしょう。