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エチオピアの小麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、エチオピアの小麦生産量は1993年の約89万トンから2022年には700万トンにまで増加しました。この間の約30年間で、生産量は約7.8倍に拡大しており、特に2005年以降、顕著な成長が見られます。この急増は農業技術の改善、生産能力の拡大、さらには政府の農業振興政策といった複数の要因に起因しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 5,800,000
-17.14% ↓
2022年 7,000,000
20.53% ↑
2021年 5,807,800
6.01% ↑
2020年 5,478,709
3.07% ↑
2019年 5,315,270
9.86% ↑
2018年 4,838,074
4.2% ↑
2017年 4,642,966
2.32% ↑
2016年 4,537,852
-2.43% ↓
2015年 4,650,934
9.91% ↑
2014年 4,231,589
7.81% ↑
2013年 3,925,174
14.28% ↑
2012年 3,434,706
17.77% ↑
2011年 2,916,334
2.12% ↑
2010年 2,855,682
-7.15% ↓
2009年 3,075,644
32.89% ↑
2008年 2,314,489
-6.03% ↓
2007年 2,463,064
11% ↑
2006年 2,219,075
1.95% ↑
2005年 2,176,603
34.82% ↑
2004年 1,614,441
-0.23% ↓
2003年 1,618,093
12.02% ↑
2002年 1,444,434
-9.5% ↓
2001年 1,596,020
29.2% ↑
2000年 1,235,270
7.45% ↑
1999年 1,149,670
0.61% ↑
1998年 1,142,710
4.57% ↑
1997年 1,092,820
-5.98% ↓
1996年 1,162,310
7.26% ↑
1995年 1,083,680
35% ↑
1994年 802,747
-10.36% ↓
1993年 895,520 -

エチオピアの小麦生産量の推移を見ると、1990年代前半には80万〜110万トンあたりで推移し、大きな増加は見られませんでした。しかし、2000年代に入り、その成長が加速しました。特に2005年以降は一貫して上昇し、2014年には400万トンを超える規模となりました。2022年にはついに700万トンに到達し、エチオピアはサブサハラアフリカの主要な小麦生産国の一つとして浮上しています。

この増加は、いくつかの要因に支えられています。一つは、農業技術の進歩です。例えば、病害虫に強い品種の導入や、施肥技術、灌漑技術の向上が挙げられます。また、エチオピア政府が農業の近代化に積極的に取り組み、小規模農家に向けた技術支援やクレジット提供を拡大してきたことも重要な背景です。さらに、国内の人口増加に対応するため、国内食糧生産を強化する政策を採用してきたことがその拍車をかけています。

しかし、いくつかの課題も浮上しています。まず、エチオピアでは気候変動の影響が顕著になっています。小麦生産にとっては降雨の変動がリスク要因であり、干ばつや土壌劣化が生産性の低下を引き起こす可能性があります。また、同国は国土の多くが高地であるため農業可能地の拡大が難しいという地理的制約にも直面しています。さらに、内戦などの地域衝突が続く限り、農村部での農業生産や物流にも悪影響を与える可能性があります。

地政学的背景も考慮する必要があります。エチオピアは、国際市場でロシアやウクライナといった主要な小麦輸出国に依存していたアフリカ諸国と比較すると、自国での小麦供給を補う能力を高めつつありますが、輸出国としてのプレゼンスを強化するには物流インフラの整備や市場アクセスの改善が不可欠です。この点では近隣諸国や国際機関との連携が課題となるでしょう。

長期的な視点では、サステナブルな農業生産モデルの確立が鍵となります。例えば、持続可能な灌漑手法の導入や耐乾性品種のさらなる研究開発が必要です。また、土壌保全を目的とした農法や、気候変動への適応策として再生可能エネルギーを活用した灌漑システムの整備も考えられます。加えて、地域協力の強化を含む統合的な政策対応も求められるところです。

結論として、エチオピアの小麦生産量は目覚ましい成長を遂げ、食糧安全保障の改善に向けた重要な進展を見せています。しかし、気候変動や内戦、地理的リスクなどの課題が解決されない限り、持続的な成長は難しいかもしれません。政府のみならず、国際機関や他国との協力を通じて、現行の問題に対応するための枠組みを強化していくことが重要です。例えば、アフリカ連合を中心とした地域的な農業協力の枠組みや、外部支援によるインフラ開発がその一環として挙げられるでしょう。