国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、エチオピアにおける羊の飼養数は1993年の1,085万匹から2022年の約3,507万匹に増加しており、特に2000年以降の増加が顕著です。一方で、2020年以降は減少が見られ、複数の要因が影響している可能性があります。この推移はエチオピアの経済状況、社会的要因、そして地政学的背景とも密接に関わります。
エチオピアの羊飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(匹) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 39,946,177 |
13.9% ↑
|
2022年 | 35,069,956 |
-7.74% ↓
|
2021年 | 38,013,272 |
-11.42% ↓
|
2020年 | 42,914,865 |
7.57% ↑
|
2019年 | 39,894,394 |
20.82% ↑
|
2018年 | 33,020,392 |
5.49% ↑
|
2017年 | 31,302,257 |
1.97% ↑
|
2016年 | 30,697,942 |
6.25% ↑
|
2015年 | 28,892,380 |
-1.5% ↓
|
2014年 | 29,332,382 |
7.26% ↑
|
2013年 | 27,347,933 |
7.29% ↑
|
2012年 | 25,489,204 |
5.23% ↑
|
2011年 | 24,221,384 |
-5.05% ↓
|
2010年 | 25,509,004 |
-1.81% ↓
|
2009年 | 25,979,920 |
-0.53% ↓
|
2008年 | 26,117,272 | - |
2007年 | 26,117,272 |
10.51% ↑
|
2006年 | 23,633,010 |
13.98% ↑
|
2005年 | 20,733,912 |
14.71% ↑
|
2004年 | 18,074,720 |
12.97% ↑
|
2003年 | 16,000,000 |
11.72% ↑
|
2002年 | 14,321,780 |
25.21% ↑
|
2001年 | 11,438,200 |
4.45% ↑
|
2000年 | 10,950,680 |
-10.5% ↓
|
1999年 | 12,235,000 |
-8.89% ↓
|
1998年 | 13,428,480 |
7.43% ↑
|
1997年 | 12,500,000 |
4.6% ↑
|
1996年 | 11,950,000 |
9.63% ↑
|
1995年 | 10,900,000 |
0.28% ↑
|
1994年 | 10,870,000 |
0.18% ↑
|
1993年 | 10,850,000 | - |
エチオピアの羊の飼養数は長期的には増加傾向を示しています。特に2002年から2010年にかけては急速な増加が確認され、羊の飼養数は2000年の約1,095万匹から2010年には約2,550万匹へと倍増しました。この増加の背景には、農牧業の促進政策や食肉・乳製品の需要拡大が関連していると考えられます。羊はエチオピアにおいて重要な家畜資源であり、食料供給や収入向上の手段として広く活用されています。また、輸出産業としても重要で、特に中東諸国へのハラール食肉の輸出がエチオピア経済を大きく支えています。
2010年代半ば以降も増加基調が続き、2018年には約3,302万匹、2019年には約3,989万匹に達しました。しかし、2020年以降のデータを見ると、急激な減少が確認されており、2020年の4,291万匹から2022年には約3,507万匹へと縮小しています。この減少には複数の要因が考えられます。一つ目は地域衝突の影響です。エチオピア北部での武力衝突や不安定な治安状況が羊の飼養や販売に影響を及ぼした可能性が高いです。二つ目は、気候変動による干ばつや自然災害の影響です。エチオピアは降水量が偏在しており、牧草地や水資源の確保が難しくなることで羊の生存率が低下したと推測されます。さらに、新型コロナウイルスの世界的流行も物流や市場流通に大きな影響を与え、これが減少の一因となった可能性もあります。
エチオピアの羊飼養数の推移を他の国と比較すると、中国やインドなどのアジア諸国では飼養数が増加するとともに生産効率も向上しています。これらの国々が高度な畜産技術や管理方法を取り入れている点に対し、エチオピアではまだ伝統的な牧畜方法に依存している場面が多く見られます。これが飼養数の増加に制限をかける要因となり得ます。
将来的な課題としては、羊の飼養数を持続的に成長させるための基盤整備が挙げられます。具体的には、牧草地の整備や水資源の効率的な利用を図ること、さらには紛争の解決を支援する国際的な協力体制が求められます。加えて、疫病の管理や家畜用医療の充実も進める必要があります。新型コロナウイルスの影響下で国際的な物流網が寸断された経験を踏まえ、地域市場の強化も重要なテーマとなるでしょう。エチオピア政府や国際機関は、輸出産業としての可能性を再認識し、この分野への投資や技術移転を積極的に進めることが有効です。
結論として、エチオピアの羊飼養数は国の畜産業や経済において極めて重要ですが、その成長は地政学的要素や環境問題に左右されやすいことがわかります。持続可能な成長を目指すためには、具体的な政策と多国間での協力が必要不可欠です。例えば、地域紛争の解決に向けた外交努力や、気候変動への適応策、さらには市場アクセスの向上を通じて、エチオピアが持つ畜産資源の潜在的な可能性を最大限に引き出すべきです。