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ナイジェリアのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年に更新したデータによると、ナイジェリアのカカオ豆生産量は1960年代から2020年代にかけて大きな変動を示しています。1980年代には一時的に生産が低迷しましたが、1990年代後半から2000年代にかけて回復期を迎え、生産量は最大時で485,000トンに達しました。その後、2010年代後半からは再び減少傾向を見せ、2022年は280,000トンに留まりました。特に、国内の農業インフラや気候変動、国際市場の影響が大きな課題です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 284,232
1.51% ↑
2022年 280,000 -
2021年 280,000
-21.7% ↓
2020年 357,608
43.04% ↑
2019年 250,000
-7.41% ↓
2018年 270,000
8% ↑
2017年 250,000
-16.12% ↓
2016年 298,029
-1.34% ↓
2015年 302,066
-8.43% ↓
2014年 329,870
-10.12% ↓
2013年 367,000
-4.18% ↓
2012年 383,000
-2.05% ↓
2011年 391,000
-2.05% ↓
2010年 399,200
9.82% ↑
2009年 363,510
-0.96% ↓
2008年 367,020
1.79% ↑
2007年 360,570
-25.66% ↓
2006年 485,000
9.98% ↑
2005年 441,000
7.04% ↑
2004年 412,000
7.01% ↑
2003年 385,000
6.35% ↑
2002年 362,000
6.47% ↑
2001年 340,000
0.59% ↑
2000年 338,000
50.22% ↑
1999年 225,000
-39.19% ↓
1998年 370,000
16.35% ↑
1997年 318,000
-1.55% ↓
1996年 323,000
59.11% ↑
1995年 203,000
-37.15% ↓
1994年 323,000
5.56% ↑
1993年 306,000
4.79% ↑
1992年 292,000
8.96% ↑
1991年 268,000
9.84% ↑
1990年 244,000
-4.69% ↓
1989年 256,000
1.19% ↑
1988年 253,000
68.67% ↑
1987年 150,000
1.35% ↑
1986年 148,000
-7.5% ↓
1985年 160,000
-0.5% ↓
1984年 160,800
14.86% ↑
1983年 140,000
-10.26% ↓
1982年 156,000
-10.34% ↓
1981年 174,000
13.73% ↑
1980年 153,000
1.32% ↑
1979年 151,000
-3.82% ↓
1978年 157,000
-18.65% ↓
1977年 193,000
6.63% ↑
1976年 181,000
-16.2% ↓
1975年 216,000
0.93% ↑
1974年 214,000
-0.47% ↓
1973年 215,000
-10.83% ↓
1972年 241,100
-6.04% ↓
1971年 256,600
-15.81% ↓
1970年 304,800
38.04% ↑
1969年 220,800
15.12% ↑
1968年 191,800
-19.41% ↓
1967年 238,000
-10.93% ↓
1966年 267,200
44.75% ↑
1965年 184,600
-38.12% ↓
1964年 298,300
33.77% ↑
1963年 223,000
22.53% ↑
1962年 182,000
-7.61% ↓
1961年 197,000 -

ナイジェリアのカカオ豆生産量は、最初のデータが記録された1961年には197,000トンであり、その後数年間で増減を繰り返しながらも1970年代前半には30万トンを超える水準に達しました。これは、当時の農業政策や農村開発の取り組みに支えられて、生産効率が向上したことが一因と考えられます。しかし1970年代後半から1980年代にかけて生産量は急激に減少し、1983年には140,000トンにまで落ち込みました。この時期には原油価格の高騰に伴うナイジェリアの経済転換があり、農業産業が相対的に軽視されたことが背景にあります。

その後、1990年代後半から2000年代にかけてカカオ豆生産は回復に転じ、興味深いのは、2006年に485,000トンという過去最高の記録を達成した点です。この増加には、国内市場でのカカオ価格の高騰や政府による農業開発プログラムが影響しました。ただし、この飛躍的成長は持続可能とは言えず、2010年代中盤には再び減少傾向が現れ、2017年には250,000トンまで落ち込みました。この下落には、世界的な気候変動による乾燥地帯の拡大や、伝染病の発生が原因として挙げられます。

他国との比較では、コートジボワールやガーナといった隣国がカカオ豆の生産でより成功を収めており、特にガーナでは同様の気候にもかかわらず、近年収量の安定化が進んでいます。これに比べ、ナイジェリアでは土地の劣化問題や生産者教育の不足が課題として残っています。また、日本やアメリカ、ヨーロッパ諸国はこれらの西アフリカ諸国のカカオを主に輸入しているため、ナイジェリアがグローバル市場で競争力を加速させる機会もまだ残されていると言えるでしょう。

ナイジェリアのカカオ豆産業には、幾つかの新たな課題が浮かび上がっています。まず、気候変動がこれまで以上に生態系に影響を与えており、雨季と乾季の不規則化が続くことで生産が安定しない可能性があります。また、農業の近代化が遅れているため、生産者の生産性は今後も頭打ちとなるかもしれません。さらに、地政学的にみると、ナイジェリア北部の治安悪化が内需外需共にマイナスの影響を与える可能性にも注意が必要です。これは国土の広さから輸送コストの上昇につながり、カカオの輸出競争力を低下させる要因ともなります。

未来に向けて持続可能な改善を図るにはいくつかの具体的な対策が考えられます。まず、灌漑設備や農業機械の導入により生産効率を高めることが急務です。さらに、生産者への教育や技術移転を通じて、農業の専門知識を普及させる必要があります。国際協力の視点では、ガーナやコートジボワールと協調し、地域間で効率的なカカオ豆供給の枠組みを築くことが効率的です。また、農地の持続可能な管理に対する政策が不可欠であり、これには植林活動を通じた土壌回復が挙げられます。

最後に、結論として、ナイジェリアのカカオ豆産業が持続的成長を遂げるためには、国内外のあらゆるリソースの連携を促進し、地球規模の問題である気候変動と競争力の低下という課題に同時に取り組む必要があります。生産量の回復と安定を実現することで、ナイジェリアは今後も国際市場での存在感を高める可能性を秘めています。これを支えるために、政府主導の持続可能な農業政策の継続的な展開が鍵となるでしょう。