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スリランカのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、スリランカのカカオ豆の生産量は、1960年代から2022年にかけて長期的な低迷傾向を示しています。1961年の生産量3,378トンから、2022年には1,221トンと大幅に減少しました。この中で、1980年代後半から1990年代前半に一時的な増加が見られるものの、2000年代以降は徐々に下降しており、特に近年の減少傾向は顕著です。これは国内外の市場需要や農業政策、生産地域の気候変動の影響が関連している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,321
8.17% ↑
2022年 1,221
-9.46% ↓
2021年 1,349
-7.31% ↓
2020年 1,455
-2.94% ↓
2019年 1,499
-29.13% ↓
2018年 2,115
42.42% ↑
2017年 1,485
-13.81% ↓
2016年 1,723
3.36% ↑
2015年 1,667
-8% ↓
2014年 1,812
12.55% ↑
2013年 1,610
-3.59% ↓
2012年 1,670
2.45% ↑
2011年 1,630
-5.78% ↓
2010年 1,730
-1.14% ↓
2009年 1,750
1.74% ↑
2008年 1,720
19.44% ↑
2007年 1,440
-7.69% ↓
2006年 1,560
-17.02% ↓
2005年 1,880
-4.57% ↓
2004年 1,970
-2.96% ↓
2003年 2,030
-30.48% ↓
2002年 2,920
-14.37% ↓
2001年 3,410
-7.84% ↓
2000年 3,700
-0.54% ↓
1999年 3,720
-1.09% ↓
1998年 3,761
1.65% ↑
1997年 3,700
1.4% ↑
1996年 3,649
1.64% ↑
1995年 3,590
-0.61% ↓
1994年 3,612
6.24% ↑
1993年 3,400
-40.69% ↓
1992年 5,733
23.58% ↑
1991年 4,639
11.03% ↑
1990年 4,178
7.13% ↑
1989年 3,900
8.33% ↑
1988年 3,600
44% ↑
1987年 2,500 -
1986年 2,500 -
1985年 2,500 -
1984年 2,500 -
1983年 2,500
-16.67% ↓
1982年 3,000
11.11% ↑
1981年 2,700
12.5% ↑
1980年 2,400
20% ↑
1979年 2,000 -
1978年 2,000
17.65% ↑
1977年 1,700
21.43% ↑
1976年 1,400
-30% ↓
1975年 2,000 -
1974年 2,000
53.85% ↑
1973年 1,300
-35% ↓
1972年 2,000
-9.09% ↓
1971年 2,200
-4.35% ↓
1970年 2,300
27.78% ↑
1969年 1,800
-18.18% ↓
1968年 2,200
-18.52% ↓
1967年 2,700
8% ↑
1966年 2,500
13.64% ↑
1965年 2,200
-18.52% ↓
1964年 2,700
-18.18% ↓
1963年 3,300
3.13% ↑
1962年 3,200
-5.27% ↓
1961年 3,378 -

スリランカのカカオ豆生産量は、1960年代にはおおよそ3,000トン台を安定して維持していました。しかし、1970年代初頭にかけて2,000トンを下回る年も増え、その後も長期的に減少傾向をたどっています。1980年代後半から1990年代前半には一時的に回復し、1992年には5,733トンに達するなどのピークを迎えましたが、その後の安定には至らず、2000年代以降は再び下降傾向が鮮明となりました。特に直近の2020年代では、生産量が急落し、2022年には1,300トンを下回る水準となりました。

このような長期的な生産量の低下は、複数の要因が絡み合っていると考えられます。まず、スリランカ国内における農業労働市場の変化が挙げられます。ほかの高収益作物への転換や農業従事者の減少により、カカオ豆生産が縮小している可能性があるのです。また、気候変動の影響も無視できません。カカオ豆栽培には安定した気候と降水量が求められますが、気温の上昇や降雨パターンの変動は、スリランカのカカオ農家にとって重大な課題となっています。

さらに、地政学的な背景にも注目する必要があります。スリランカは内戦の影響を長く受けてきた国であり、その間に農業インフラが十分に整備されなかった可能性も考えられます。特に農村部において、安心して農業に従事できる環境が整わなかったことが生産量減少につながったと推定されます。加えて、グローバル市場におけるカカオ豆の価格変動や競合国(例えば、インドネシアやコートジボワールなどによる安価な供給)の影響も無視できません。

今後の課題としては、まずカカオ栽培の効率を高める技術支援が重要です。これは、高品質な苗木の供給や農業技術指導を通じて実現可能です。また、インフラの整備を進めることで、農産物のマーケットアクセスを改善することも求められます。具体例として、道路網の整備や、輸送コストを抑える物流政策が挙げられます。また、国際市場へ向けたブランド化戦略を推進し、スリランカ産カカオを高付加価値商品として販売する取り組みも有効です。

加えて、地域環境への配慮を進めながら、気候変動適応型の農業も導入すべきです。具体的には、気候に強い品種の開発や、多様な農業形態を組み合わせた持続可能な農法の推進が重要です。また、カカオ豆生産者への経済的なインセンティブを拡充し、若い世代が農業に参入できるような仕組みづくりも必要となるでしょう。

結論として、スリランカのカカオ豆生産量減少の背景には自然的・社会的・経済的な要因が複合的に絡んでいます。この状況を打開するためには、農業政策の改革、国際的な連携、そして環境対応型の農業技術の導入が求められます。国際機関や他国との協力を強化することも有効であり、生産者を支援することで、持続可能なカカオ産業を再構築するチャンスを見つけるべきです。