国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年最新データによると、コロンビアのカカオ豆生産量は1960年代から安定した増加傾向を示しました。しかし、2000年代初頭から波動が大きくなり、近年では2017年に89,282トン、2018年に97,978トン、2019年に102,154トンと最高値に達する一方で、2020年以降は再び減少傾向となっています。2022年には62,158トンと、2019年のピーク時と比較して約40%の減少となりました。この長期的なトレンドを分析することで、生産量増減の要因や今後の課題が浮かび上がります。
コロンビアのカカオ豆生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 62,158 |
2021年 | 65,164 |
2020年 | 63,416 |
2019年 | 102,154 |
2018年 | 97,978 |
2017年 | 89,282 |
2016年 | 56,785 |
2015年 | 54,798 |
2014年 | 47,732 |
2013年 | 46,739 |
2012年 | 41,670 |
2011年 | 37,202 |
2010年 | 39,534 |
2009年 | 44,740 |
2008年 | 44,740 |
2007年 | 39,904 |
2006年 | 35,258 |
2005年 | 37,099 |
2004年 | 38,753 |
2003年 | 41,704 |
2002年 | 34,002 |
2001年 | 36,070 |
2000年 | 36,731 |
1999年 | 51,485 |
1998年 | 50,685 |
1997年 | 50,317 |
1996年 | 49,635 |
1995年 | 56,652 |
1994年 | 50,624 |
1993年 | 57,472 |
1992年 | 54,857 |
1991年 | 58,141 |
1990年 | 56,153 |
1989年 | 55,430 |
1988年 | 54,080 |
1987年 | 53,680 |
1986年 | 46,700 |
1985年 | 42,500 |
1984年 | 40,700 |
1983年 | 37,000 |
1982年 | 39,400 |
1981年 | 38,300 |
1980年 | 35,700 |
1979年 | 32,300 |
1978年 | 31,000 |
1977年 | 27,000 |
1976年 | 29,200 |
1975年 | 26,000 |
1974年 | 24,500 |
1973年 | 23,000 |
1972年 | 22,000 |
1971年 | 21,000 |
1970年 | 19,000 |
1969年 | 18,500 |
1968年 | 18,000 |
1967年 | 17,000 |
1966年 | 17,800 |
1965年 | 17,100 |
1964年 | 16,400 |
1963年 | 15,700 |
1962年 | 15,000 |
1961年 | 14,300 |
コロンビアのカカオ豆生産は、長年にわたり国の農業経済の重要な一部を担ってきました。1960年代は年間約14,000~19,000トンの生産量から始まり、その後持続的な成長が続いて1980年代半ばには50,000トンを超えました。この拡大は農地開発やカカオ栽培技術の向上が大きく寄与していたと考えられます。しかし、1990年代後半から2000年代にかけて、生産量の減少が見受けられるようになり、2000年には36,731トンと低迷しました。この時期は内戦や地域衝突が農村部に与えた影響が甚大であり、農業に大きな打撃を与えたとされています。また、カカオ産業への公共投資の不足も、この減少に寄与している可能性があります。
その後、2008年以降になると、生産量は回復しています。この背景には、国内外での需要の増加、持続可能な農業やフェアトレードの推進、さらには政府主導のカカオ生産振興政策の効果が挙げられます。特に2017年から2019年は目覚ましい成長を遂げ、3年間で約15,000トン増加しました。この急成長は、技術の普及や気候の良好な条件、またコロンビア産カカオの品質向上とその輸出振興が要因と考えられます。
しかし、2020年以降ではカカオ生産量が著しく減少に転じている点が際立ちます。この時期には、新型コロナウイルスによるパンデミックがカカオ生産に関わるサプライチェーンに影響を及ぼしました。農家への資材供給や労働力の確保が困難となり、生産活動が制限された結果と考えられます。また、気候変動による異常気象や病害虫の拡大もカカオ豆生産の減少に拍車をかけた要因です。
現在、カカオ産業が直面する主な課題としては、持続可能な栽培の普及、気候変動への適応、ならびに地域分散型の生産基盤の強化が挙げられます。また、輸出市場の拡大とフェアトレードに基づく価格の安定を図ることも重要です。特に、カカオ農家の収益性を改善し、農村地域の社会的安定を図ることは、長期的な生産基盤の確立に欠かせません。
さらに、土地利用に関する地政学的課題にも注目すべきです。農村部の一部では内戦の余波として、違法作物の栽培が広がった過去があります。カカオ栽培への転換を促進する政策や国際協力の枠組みを強化すれば、経済発展と治安向上が同時に実現されるでしょう。
結論として、コロンビアにおけるカカオ豆の生産は過去数十年で大きな浮き沈みを経験してきました。しかし、この産業は依然として大きな可能性を秘めています。国としては、気候変動対応型の農業技術の研究・導入、国内外市場の拡大、支援体制の充実を進めることが求められます。特に、国際連合、非政府組織(NGO)、さらには主要なカカオ輸入国との協力が鍵となるでしょう。この道筋を辿ることで、コロンビアのカカオ産業は再び持続可能で競争力のある成長を遂げることが期待されます。