最新のFood and Agriculture Organizationによるデータから、ガーナのカカオ豆生産量は年々著しい変動が見られ、特に1961年から1980年代末にかけては減少傾向が目立ちます。その後、生産量が再び緩やかに増加傾向を示し、2004年以降は大幅な伸びを経験しています。2022年には1,108,663トンと過去最高の生産量を記録しました。しかし、この増加に伴い、気候変動、土地劣化、労働力不足といった課題が浮き彫りになっています。
ガーナのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 653,700 |
-41.04% ↓
|
2022年 | 1,108,663 |
5.85% ↑
|
2021年 | 1,047,385 |
30.92% ↑
|
2020年 | 800,000 |
-1.44% ↓
|
2019年 | 811,700 |
-10.28% ↓
|
2018年 | 904,700 |
-6.66% ↓
|
2017年 | 969,300 |
12.88% ↑
|
2016年 | 858,720 | - |
2015年 | 858,720 | - |
2014年 | 858,720 |
2.78% ↑
|
2013年 | 835,466 |
-4.99% ↓
|
2012年 | 879,348 |
25.62% ↑
|
2011年 | 700,020 |
10.76% ↑
|
2010年 | 632,037 |
-11.06% ↓
|
2009年 | 710,638 |
4.39% ↑
|
2008年 | 680,781 |
10.79% ↑
|
2007年 | 614,500 |
-16.28% ↓
|
2006年 | 734,000 |
-0.81% ↓
|
2005年 | 740,000 |
0.41% ↑
|
2004年 | 737,000 |
48.29% ↑
|
2003年 | 497,000 |
45.94% ↑
|
2002年 | 340,562 |
-12.58% ↓
|
2001年 | 389,591 |
-10.77% ↓
|
2000年 | 436,600 |
0.55% ↑
|
1999年 | 434,200 |
6.07% ↑
|
1998年 | 409,360 |
26.94% ↑
|
1997年 | 322,490 |
-19.98% ↓
|
1996年 | 403,000 |
-0.22% ↓
|
1995年 | 403,900 |
40.21% ↑
|
1994年 | 288,075 |
13.12% ↑
|
1993年 | 254,652 |
-18.41% ↓
|
1992年 | 312,122 |
29.08% ↑
|
1991年 | 241,796 |
-17.58% ↓
|
1990年 | 293,355 |
-0.58% ↓
|
1989年 | 295,052 |
19.6% ↑
|
1988年 | 246,700 |
31.1% ↑
|
1987年 | 188,170 |
-16.89% ↓
|
1986年 | 226,400 |
16.46% ↑
|
1985年 | 194,400 |
16.62% ↑
|
1984年 | 166,700 |
-0.83% ↓
|
1983年 | 168,100 |
-16.99% ↓
|
1982年 | 202,500 |
-17.85% ↓
|
1981年 | 246,500 |
-11.08% ↓
|
1980年 | 277,200 |
-1.28% ↓
|
1979年 | 280,800 |
4.7% ↑
|
1978年 | 268,200 |
-3.32% ↓
|
1977年 | 277,400 |
-15.09% ↓
|
1976年 | 326,700 |
-17.77% ↓
|
1975年 | 397,300 |
3.17% ↑
|
1974年 | 385,100 |
12.27% ↑
|
1973年 | 343,000 |
-17.49% ↓
|
1972年 | 415,700 |
-11.55% ↓
|
1971年 | 470,000 |
15.76% ↑
|
1970年 | 406,000 |
-2% ↓
|
1969年 | 414,300 |
26.7% ↑
|
1968年 | 327,000 |
-22.79% ↓
|
1967年 | 423,500 |
11.13% ↑
|
1966年 | 381,100 |
-8.35% ↓
|
1965年 | 415,800 |
-28.37% ↓
|
1964年 | 580,500 |
35.69% ↑
|
1963年 | 427,800 |
-0.07% ↓
|
1962年 | 428,100 |
3.11% ↑
|
1961年 | 415,200 | - |
ガーナは世界有数のカカオ豆生産国であり、国の輸出収入に占める割合も高い重要な農産物です。1960年代において40万トン以上の生産量を維持していましたが、1970年代後半から1980年代にかけて著しい生産量の低下が見られました。この背景には、土壌の栄養不足、旧式な農業技術、不適切な農業政策、さらには国際市場価格の変動などが影響しています。この影響により、1983年には記録的な低水準である166,700トンにまで落ち込みました。
その後、1990年代に入ると、生産量はじわじわと回復し、2000年代には農業政策の改革や技術の導入により大幅な改善を見せました。特に、2004年には737,000トンという大幅な増加が記録され、これは新しいカカオの品種の導入や農業インフラの改善が寄与した結果と考えられます。その後も生産は上昇傾向を続け、2022年には1,108,663トンという過去最高の実績を達成しました。
しかし、この急増にはいくつかの課題も伴っています。まず重要なのは、気候変動です。カカオ豆は特定の温暖湿潤な環境での栽培が求められるため、異常気象による降水パターンの変化や気温上昇が作物に与える悪影響は無視できません。また、持続可能な農業を実現するために、土壌の劣化や森林伐採の抑制も必要です。これらの環境問題が将来的な生産能力に制約をもたらす可能性があります。
さらに、労働力不足も深刻な課題と言えます。ガーナではカカオ農業が経済的に大きな役割を果たしていますが、従事者の賃金が低水準であるため次世代の労働力の確保が難しくなっています。同時に、世界市場での価格変動や多国間競争が小規模な生産者に圧力をかけていることも問題です。
ガーナが今後持続可能なカカオ豆生産を確保するための具体的な提案として、いくつかの対策が挙げられます。まず、気候変動への適応能力を高めるために、耐乾燥性や病害に強い新品種の開発と普及が急務と言えます。また、農業に関わる若年層の参加を促すため、教育とトレーニングプログラムを充実させる必要があります。そして、国際市場における価格安定化メカニズムの構築を目指し、他の生産国と協力することも重要です。特に、隣国コートジボワールとの共同戦略は効果的です。
加えて、国際社会や多国籍企業は、ガーナの持続可能なカカオ生産をサポートするため、公正な価格での取引を推進する責任があります。この取り組みは、地元農家の生活改善にも繋がるだけでなく、国際的な環境規範の遵守を促すものとなるでしょう。
総じて、ガーナのカカオ豆産業は、国の経済的安定と多くの興味を引き続ける分野です。しかし、その成長を持続可能にするためには、環境保護、社会的公正、技術的革新を統合した対策が必要です。ガーナ政府や国際機関が適切な政策を実施し、各ステークホルダーが協力することで、これらの課題を克服する道筋が描けるはずです。