国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データ(2024年7月更新)によると、ボリビア(多民族国家)のカカオ豆生産量は1961年の1,100トンから2022年には5,792トンに達し、大幅な増加を見せています。この期間、特に1970年代や1990年代から2000年代にかけて安定した持続的な成長が見られました。しかし、近年の生産量は2013年のピークである7,325トンを下回り、5,800トン台で推移しています。これは、カカオ豆生産がかつての成長速度を維持できていないことを示しています。
ボリビア (多民族国家)のカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 5,971 |
3.1% ↑
|
2022年 | 5,792 |
-1.57% ↓
|
2021年 | 5,884 |
0.15% ↑
|
2020年 | 5,875 |
0.69% ↑
|
2019年 | 5,835 |
-0.19% ↓
|
2018年 | 5,846 |
5.94% ↑
|
2017年 | 5,518 |
-10.17% ↓
|
2016年 | 6,143 |
1.29% ↑
|
2015年 | 6,065 |
1.57% ↑
|
2014年 | 5,971 |
-18.49% ↓
|
2013年 | 7,325 |
53.8% ↑
|
2012年 | 4,763 |
3.99% ↑
|
2011年 | 4,580 |
2.92% ↑
|
2010年 | 4,450 |
-1.34% ↓
|
2009年 | 4,510 |
-4.95% ↓
|
2008年 | 4,745 |
0.98% ↑
|
2007年 | 4,699 |
5.03% ↑
|
2006年 | 4,474 |
2.66% ↑
|
2005年 | 4,358 |
2.11% ↑
|
2004年 | 4,268 |
1.59% ↑
|
2003年 | 4,201 |
-2.87% ↓
|
2002年 | 4,325 |
0.12% ↑
|
2001年 | 4,320 |
0.47% ↑
|
2000年 | 4,300 |
2.38% ↑
|
1999年 | 4,200 |
5% ↑
|
1998年 | 4,000 | - |
1997年 | 4,000 |
3.63% ↑
|
1996年 | 3,860 |
0.26% ↑
|
1995年 | 3,850 |
2.26% ↑
|
1994年 | 3,765 |
1.48% ↑
|
1993年 | 3,710 |
4.65% ↑
|
1992年 | 3,545 |
-1.96% ↓
|
1991年 | 3,616 |
0.7% ↑
|
1990年 | 3,591 |
0.31% ↑
|
1989年 | 3,580 |
2.58% ↑
|
1988年 | 3,490 |
-4.12% ↓
|
1987年 | 3,640 |
3.41% ↑
|
1986年 | 3,520 |
16.56% ↑
|
1985年 | 3,020 |
9.94% ↑
|
1984年 | 2,747 |
22.09% ↑
|
1983年 | 2,250 |
-3.93% ↓
|
1982年 | 2,342 |
4.79% ↑
|
1981年 | 2,235 |
-1.11% ↓
|
1980年 | 2,260 |
11.88% ↑
|
1979年 | 2,020 |
-6.7% ↓
|
1978年 | 2,165 |
-30.39% ↓
|
1977年 | 3,110 |
3.84% ↑
|
1976年 | 2,995 |
9.51% ↑
|
1975年 | 2,735 |
16.19% ↑
|
1974年 | 2,354 |
71.82% ↑
|
1973年 | 1,370 |
-44.87% ↓
|
1972年 | 2,485 |
42% ↑
|
1971年 | 1,750 |
34.62% ↑
|
1970年 | 1,300 | - |
1969年 | 1,300 | - |
1968年 | 1,300 |
8.33% ↑
|
1967年 | 1,200 |
20% ↑
|
1966年 | 1,000 |
-9.09% ↓
|
1965年 | 1,100 | - |
1964年 | 1,100 | - |
1963年 | 1,100 | - |
1962年 | 1,100 | - |
1961年 | 1,100 | - |
ボリビアのカカオ豆生産量は、1960年代から2022年にかけてゆるやかながら持続的に増加してきました。初期の1961年には1,100トン程度と小規模でしたが、農業技術の向上や栽培地の拡大に伴って徐々に成長し、1990年代以降は年間3,500トン以上の生産量を記録しました。特に、1995年から2005年にかけて緩やかながらも着実な増加傾向が見られ、経済的にも安定した成長を示す部分と考えられます。しかし、2013年に7,325トンという最大の生産量を記録した後、生産量は2022年には約5,800トン程度と減少しています。
この変化にはいくつかの要因が影響していると考えられます。まず、気候変動やボリビアでの異常気象が生産に悪影響を及ぼしていることが挙げられます。カカオの栽培は特に湿度や気温に大きく依存しており、近年の地球温暖化や降雨パターンの変化が生育環境を不安定にしている可能性があります。また、病害虫の蔓延も課題となっており、これにより一部の農家が栽培を断念するケースさえ見られるようです。さらに、ボリビア国内の不安定な社会状況や経済的な課題も、農業部門全体に影響を与えていると推測されます。
ボリビアのカカオ豆生産が世界の中でどのような位置にあるかを他国と比較することで見えてくるのは、その成長ポテンシャルと課題の両面です。例えば、主要な生産国であるコートジボワールやガーナの年間生産量は約100万トンを超えており、それに比べてボリビアの生産量は極めて小規模です。一方で、日本や韓国、アメリカといったカカオ豆輸入国ではボリビア産のオーガニックや高品質カカオ豆の需要が高まっており、これがボリビアにとってのユニークな市場機会を創出しています。
地政学的に見ると、ボリビアのカカオ豆生産は地域内外の貿易関係や政策とも密接に関連しています。例えば、近隣のブラジルやペルーへの輸出も増加傾向にあり、輸送やインフラ整備が生産性向上に直結する大きな課題となっています。また、内戦や政治的不安定さが引き起こす地元経済の乱れが、必然的に農業セクターにも影響を与えていることも無視できません。
このような背景を考慮すると、以下のような具体的な課題と解決策が浮かび上がります。まず、政府あるいは国際機関による気候変動対策への取り組みが必要です。具体的には、耐暑性や病害虫への耐性を持つ新品種の開発や、持続可能な農業技術の導入が求められます。加えて、輸送インフラの改善や農家の金融アクセスの向上も急務です。さらに、ボリビア産カカオのブランド化を進めることで、国際市場での競争力を高め、持続可能な収益モデルを構築することができます。日本などのカカオ消費国との連携を強化し、公平な貿易環境を促進することも重要です。
総じて、ボリビアのカカオ豆生産は、過去数十年で顕著な成長を遂げる一方で、持続可能な発展を目指すためには多数の課題が存在します。これらの課題を解決しながら、国内外での需要拡大という機会を最大限に活かすことで、より安定した農業セクターと経済的繁栄が期待されます。FAOや他の国際機関の支援を通じて、ボリビアがカカオ豆の一大生産地としてその地位を確立できる未来が見えてくるでしょう。