FOA(国際連合食糧農業機関)の発表によると、グレナダのカカオ豆生産量は、1960年代には年間約2,500トンから3,000トンを記録していましたが、その後、生産量は大きく減少しました。特に2000年代初頭には1,000トン未満となり、2005年にはわずか47トンという最低値を記録しました。その後、持ち直しの兆しは見られるものの、2022年時点で433トンと回復途上にあります。これらの変動は、自然災害、気候変動、地政学的リスクや経済的要因などが影響しており、安定した生産にはいまだ課題が残されています。
グレナダのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 364 |
-15.94% ↓
|
2022年 | 433 |
-38.41% ↓
|
2021年 | 703 |
30.43% ↑
|
2020年 | 539 |
-14.85% ↓
|
2019年 | 633 |
-20.88% ↓
|
2018年 | 800 |
14.29% ↑
|
2017年 | 700 |
-12.5% ↓
|
2016年 | 800 |
33.33% ↑
|
2015年 | 600 |
-33.33% ↓
|
2014年 | 900 | - |
2013年 | 900 |
12.5% ↑
|
2012年 | 800 |
14.29% ↑
|
2011年 | 700 |
40% ↑
|
2010年 | 500 | - |
2009年 | 500 |
25% ↑
|
2008年 | 400 |
76.99% ↑
|
2007年 | 226 |
151.11% ↑
|
2006年 | 90 |
91.49% ↑
|
2005年 | 47 |
-93.84% ↓
|
2004年 | 763 |
23.66% ↑
|
2003年 | 617 |
-29.57% ↓
|
2002年 | 876 |
27.33% ↑
|
2001年 | 688 |
-42.47% ↓
|
2000年 | 1,196 |
22.79% ↑
|
1999年 | 974 |
-31.36% ↓
|
1998年 | 1,419 |
-11.81% ↓
|
1997年 | 1,609 |
-6.02% ↓
|
1996年 | 1,712 |
7.61% ↑
|
1995年 | 1,591 |
8.82% ↑
|
1994年 | 1,462 |
-8.51% ↓
|
1993年 | 1,598 |
17.93% ↑
|
1992年 | 1,355 |
-18.91% ↓
|
1991年 | 1,671 |
-14.31% ↓
|
1990年 | 1,950 |
32.47% ↑
|
1989年 | 1,472 |
3.52% ↑
|
1988年 | 1,422 |
-18.88% ↓
|
1987年 | 1,753 |
1.39% ↑
|
1986年 | 1,729 |
-20.18% ↓
|
1985年 | 2,166 |
-13.36% ↓
|
1984年 | 2,500 |
5.62% ↑
|
1983年 | 2,367 |
3.86% ↑
|
1982年 | 2,279 |
-9.46% ↓
|
1981年 | 2,517 |
18.11% ↑
|
1980年 | 2,131 |
-18.82% ↓
|
1979年 | 2,625 |
7.76% ↑
|
1978年 | 2,436 |
14.15% ↑
|
1977年 | 2,134 |
-21.34% ↓
|
1976年 | 2,713 |
12.53% ↑
|
1975年 | 2,411 |
1.05% ↑
|
1974年 | 2,386 |
-1.57% ↓
|
1973年 | 2,424 |
-3.46% ↓
|
1972年 | 2,511 |
-12.39% ↓
|
1971年 | 2,866 |
-2.05% ↓
|
1970年 | 2,926 |
-4.25% ↓
|
1969年 | 3,056 |
8.14% ↑
|
1968年 | 2,826 |
2.39% ↑
|
1967年 | 2,760 |
25.45% ↑
|
1966年 | 2,200 |
-4.35% ↓
|
1965年 | 2,300 |
-17.86% ↓
|
1964年 | 2,800 |
7.69% ↑
|
1963年 | 2,600 |
-7.14% ↓
|
1962年 | 2,800 |
12% ↑
|
1961年 | 2,500 | - |
グレナダはカカオ豆の生産において長い歴史を持ち、特に1960年代には年間約2,500~3,000トンの出荷量を誇り、重要な輸出産品のひとつとされていました。しかし、これ以降から徐々に減少傾向が顕著となり、1980年代後半には1,500トンを下回る状態が続きました。特に2000年代初頭には生産量が急激に落ち込み、2005年にはわずか47トンという過去最低の水準にまで下がる結果となりました。この劇的な減少は、自然災害であるハリケーン・イヴァン(2004年)の影響によるものが大きく、これにより主要なカカオ農園が壊滅的な被害を受けたことが確認されています。
その後、グレナダ政府や地元農家の努力により復興が進められ、徐々に生産量は回復傾向を見せ、2013年と2014年には900トンを記録しました。しかしながら、この水準は過去の記録的な生産量と比べてまだ大幅に低い水準に留まっています。2022年には433トンと再び減少しており、生産の安定性には課題が多い状況が続いています。
このような生産量の変遷を考える際、いくつかの要因が挙げられます。第一に地政学的リスクや自然災害の影響です。グレナダはカリブ海に位置し、頻発するハリケーンなど自然災害の影響を受けやすい地理環境にあります。ハリケーン・イヴァンのように、短期間で農業インフラを甚大に破壊するような災害が再発すれば、生産の復興になお時間を要するでしょう。第二の要因として、グローバル市場における競争の激化が挙げられます。世界最大のカカオ生産国であるコートジボワールやガーナと比べて、グレナダの生産規模は小さく、価格競争力や規模の経済のメリットが少ない点が課題です。さらに、熟練労働者の不足や気候変動による影響も無視できない問題です。
しかしながら、グレナダのカカオには品質の面で強みがあります。この地域で生産されるカカオは、香り高いアロマと独特の風味で知られており、高級チョコレート市場では評価が高いです。この点を活かすことにより、大量生産に依存するのではなく、付加価値の高いプレミアム商品としての位置づけを強化する戦略が重要と考えられます。例えば、フェアトレード認証やオーガニック認証を取得し、環境に配慮した持続可能な農業を推進することで、国際市場での存在感を高めることが期待できます。
今後、この産業を回復・成長させるためには、いくつかの取り組みが必要です。一つ目は農業インフラの強化です。ハリケーンなどの自然リスクを軽減するため、耐災害性のある施設の整備や適した栽培手法の導入が求められます。二つ目はカカオ産業のプレミアム化の推進です。国際的な食品マーケットにおいて、グレナダ産カカオの優れた品質を積極的に PR することで、高価格帯市場を開拓できる可能性があります。三つ目は教育と技能訓練への投資です。若年層への農業トレーニングを通じて熟練した農家を育て、強靭な生産基盤を築くことが重要です。また、技術革新を活用し、生産工程の効率化を目指すことも必要でしょう。
結論として、グレナダのカカオ豆生産量は過去のピークから大きく減少している現状がありますが、品質面などの強みを生かすことで再び農業としての優位性を取り戻す余地があります。地域全体の協力や国際的な支援を取り入れ、環境配慮型の安定した生産体制を築くことが、将来の持続可能な発展につながる鍵となるでしょう。