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ヨルダンの大麦生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)による最新の2024年データをもとに、ヨルダンの大麦生産量の推移を分析すると、生産量は長期的に大きな変動を見せています。1960年代から1990年代までの間では極端に増減する年が目立ちましたが、2010年代以降は比較的安定した傾向が見られ、近年では2020年の86,615トンをピークに緩やかに減少する傾向があります。この変動には、地政学的背景や気候条件の影響が大きく関与していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 44,497
27.13% ↑
2022年 35,000
-54.12% ↓
2021年 76,291
-11.92% ↓
2020年 86,615
30.02% ↑
2019年 66,618
41.01% ↑
2018年 47,245
-3.49% ↓
2017年 48,954
29.07% ↑
2016年 37,929
-6.32% ↓
2015年 40,486
4.15% ↑
2014年 38,873
-4.99% ↓
2013年 40,915
27.66% ↑
2012年 32,050
9.44% ↑
2011年 29,285
174.74% ↑
2010年 10,659
-37.53% ↓
2009年 17,062
65.2% ↑
2008年 10,328
-23.6% ↓
2007年 13,518
-26.68% ↓
2006年 18,438
-42.01% ↓
2005年 31,793
51.54% ↑
2004年 20,980
-18.75% ↓
2003年 25,821
-54.52% ↓
2002年 56,772
227.61% ↑
2001年 17,329
43.57% ↑
2000年 12,070
144.33% ↑
1999年 4,940
-81.97% ↓
1998年 27,392
-6.92% ↓
1997年 29,428
0.88% ↑
1996年 29,171
-8.06% ↓
1995年 31,727
15.99% ↑
1994年 27,353
-13.98% ↓
1993年 31,798
-53.83% ↓
1992年 68,878
72.48% ↑
1991年 39,935
-5.83% ↓
1990年 42,406
106.14% ↑
1989年 20,571
-54.13% ↓
1988年 44,850
35.71% ↑
1987年 33,048
267.04% ↑
1986年 9,004
-54.25% ↓
1985年 19,681
65.78% ↑
1984年 11,872
-57.9% ↓
1983年 28,200
43.45% ↑
1982年 19,658
2.4% ↑
1981年 19,198
-49.65% ↓
1980年 38,129
702.21% ↑
1979年 4,753
-69.55% ↓
1978年 15,610
29.65% ↑
1977年 12,040
-8.98% ↓
1976年 13,228
12.42% ↑
1975年 11,767
-70.72% ↓
1974年 40,189
582.79% ↑
1973年 5,886
-82.69% ↓
1972年 34,013
29.72% ↑
1971年 26,220
373.54% ↑
1970年 5,537
-86.97% ↓
1969年 42,480
115.32% ↑
1968年 19,729
-59.24% ↓
1967年 48,400
112.28% ↑
1966年 22,800
-75.95% ↓
1965年 94,800
-2.42% ↓
1964年 97,156
322.42% ↑
1963年 23,000
-35.57% ↓
1962年 35,700
-42.14% ↓
1961年 61,700 -

データの長期的な視点から見ると、ヨルダンの大麦生産量は1961年の61,700トンから2023年の44,497トンまで、60年以上にわたり大きな変動を繰り返しています。特に、1960年代の値は非常に不安定で、一部の年においては20,000トン以下にまで低下しています。一方で、1990年代後半にも再び生産量が急激に減少し、1999年にはわずか4,940トンという過去最低レベルを記録しました。その後、生産量は徐々に回復し、近年のデータでは2020年が86,615トンとピークに達しています。ただし、その後2022年の35,000トンに減少したことは気候変動などの外部要因が影響を及ぼした可能性を示唆します。

このような変動の背景には、ヨルダンが直面している複数の課題が関与しています。まず、ヨルダンは降水量が少ない乾燥地域であり、大麦のような雨養型農業が天候変動に強く依存しています。例えば、1990年代後半に生産量が低下した原因としては干ばつが指摘されており、その後の低収量年も同様の理由が考えられます。さらに、地政学的リスクや地域紛争の影響も見逃せません。特に周辺国での衝突や緊張状態が続く中、農業生産基盤が破壊され、労働力やインフラの整備が後回しにされた時期があった可能性があります。

また、新型コロナウイルス感染症の影響が農業分野にも波及した可能性も考えられます。移動や物流の制限によって種子や肥料が不足し、さらには収穫の効率性も低下したことで、生産量に影響が及んだことが推測されます。

今後の政策的な提案としては、以下の点が挙げられます。まず、気候変動への適応策として、耐乾性のある大麦品種の開発と導入が急務です。また、灌漑インフラの整備による農地への安定的な水供給が生産の安定には不可欠です。さらに、製品の高付加価値化や市場への輸出戦略を強化することで、農業分野全体の収益性を高める取り組みも必要とされています。これに加えて、国際協力の強化により、技術共有や資金援助の枠組みを構築することが求められます。

地質学的な観点からは、ヨルダン周辺の紛争リスクが農地への影響をもたらし続けるため、地域的な安定化が農業政策にも大きな効果をもたらすでしょう。また、地政学的背景を考慮した上で、食料安全保障の強化を目的とした地域間協力の推進も重要だと考えられます。

結論として、現在のヨルダンの大麦生産は、過去からの基調として気候や政治情勢に大きく依存してきたものの、2020年以降は比較的安定化の傾向が見え始めています。しかし、気候変動の進行や地政学的リスクに対する強固な対策が講じられなければ、再び不安定な状況へと逆戻りする可能性があります。したがって、ヨルダン政府や国際機関は、持続可能な農業生産を促進するための長期的なビジョンを持ち、それを政策に反映していくことが重要です。