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ヨルダンの馬飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、ヨルダンにおける馬飼養数は、1961年の12,345頭をピークに以降急激に減少し、その後も大きな増減を繰り返しました。1980年代以降は概ね3,000頭以下を推移し続け、特に2000年以降、減少傾向が顕著となっています。2022年の飼養数は2,242頭であり、データの示す期間内での最低値となっています。

年度 飼養数(頭)
2022年 2,242
2021年 2,258
2020年 2,274
2019年 2,265
2018年 2,324
2017年 2,378
2016年 2,411
2015年 2,439
2014年 2,430
2013年 2,400
2012年 2,400
2011年 2,400
2010年 2,400
2009年 2,500
2008年 2,200
2007年 2,200
2006年 2,600
2005年 2,800
2004年 3,000
2003年 3,100
2002年 3,200
2001年 3,300
2000年 3,300
1999年 3,300
1998年 4,000
1997年 4,000
1996年 4,000
1995年 4,000
1994年 4,000
1993年 4,000
1992年 4,000
1991年 4,000
1990年 4,000
1989年 4,276
1988年 3,000
1987年 2,955
1986年 3,220
1985年 3,220
1984年 12,200
1983年 7,315
1982年 3,067
1981年 3,039
1980年 2,200
1979年 2,500
1978年 2,700
1977年 2,700
1976年 2,700
1975年 7,316
1974年 7,263
1973年 6,200
1972年 6,600
1971年 5,817
1970年 6,806
1969年 9,444
1968年 3,290
1967年 2,664
1966年 3,590
1965年 2,600
1964年 2,243
1963年 2,564
1962年 10,317
1961年 12,345

ヨルダンがかつて馬の主要な飼養国であったことは、1961年の12,345頭という数値が証明しています。しかし、翌年から急激な減少が見られ、1963年には2,564頭へと、2年間で約80%減となる大幅な落ち込みが記録されています。この急減の理由として考えられるのは、当時の地政学的リスクや農業経済の構造変化です。ヨルダンは中東の一部に位置し、地域紛争や水や土地などの資源争奪がその経済活動に大きな影響を与えてきました。この時期、飼養コストの増大や農業経済政策の転換が、結果として馬の飼養数減少に繋がった可能性があります。

その後、飼養数は一定の回復を見せ、1969年には9,444頭に達しました。しかしながら、その後再度の減少が始まり、1976年から1980年代までは3,000頭以下の低い水準で安定しています。この時期、ヨルダン国内の農業の近代化や都市化の進行、さらに牧畜業の他の分野への移行が、馬飼養を主要な生業から外す要因として考えられます。このことは他地域でも共通するトレンドであり、特に工業化が進む国々では、家畜飼養の種類や動態に大きな変化が見られます。

1990年代から2000年以降、ヨルダンの馬飼養数は再び漸減傾向となり、2022年には2,242頭と史上最低を記録しています。この減少傾向には、新たな地政学的リスクや、エネルギー・資源確保の課題が関連していると考えられます。近年は気候変動の影響が中東地域にも顕著であり、ヨルダンのような水ストレスの多い国では、馬や他の家畜の飼養リソースを確保すること自体が困難になっています。また、新型コロナウイルスの世界的な流行も、直接的には馬市場の縮小、間接的には餌や医療供給の途絶を招く結果となりました。

他国と比較すると、ヨルダンの場合、特に家畜や畜産品を輸出する規模が小さいため、馬飼養の経済的な優先度が低く、周辺国であるサウジアラビアやエジプトのように家畜市場を収益源と見なす政策の導入が進んでいないことが挙げられます。この点、日本やドイツなどの先進国では、家畜技術の革新や新たな商品化(例えば競馬や観光用の用途)によって馬飼養数の維持や関連産業の発展が進んでいますが、ヨルダンではこうした多様化が十分でないと言えます。

今後の課題としては、まず飼養経費を削減するための新しい技術の導入が急務です。水資源の効率的利用技術や、新たな給餌体制の導入が考えられます。また、馬の用途を競技や観光といった新分野に展開することで、単なる農業資源としての存在から高付加価値の産業資源として再編する必要があります。さらに、国際協力の枠組みを活用して、馬種の保存や効率的な管理体制を確立することも重要です。他国からの専門的技術支援や、新たな地域間協力のプラットフォームを構築することで、持続可能な体系が整備されるでしょう。

結論として、現状のデータはヨルダン国内の馬飼養が関心の薄れた分野であることを明示しています。しかし、産業多様性を図る中で飼養再興の可能性を追求することは、農業・観光・文化保存の観点からも価値ある提案と言えます。これを実現するには、ヨルダン政府のみならず、国際社会全体での協力が必要です。そして、環境変化に柔軟に対応するための新しい政策枠組みが必要になります。