国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによれば、ヨルダンの牛乳生産量は1961年の34,685トンから2022年の431,055トンまで、長い年数をかけて着実に増加しています。この間、特定の年代では大幅な増減も見られましたが、おおむね上昇傾向が確認できます。特に1990年代以降、技術革新や農業政策の改善によって生産量が急増している一方、近年ではCOVID-19パンデミックなどの影響で減少した年もありました。しかし、2021年以降は再び回復基調にあります。
ヨルダンの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 431,055 |
2021年 | 425,658 |
2020年 | 410,175 |
2019年 | 457,333 |
2018年 | 424,640 |
2017年 | 401,870 |
2016年 | 380,405 |
2015年 | 369,192 |
2014年 | 348,521 |
2013年 | 307,142 |
2012年 | 310,430 |
2011年 | 306,916 |
2010年 | 289,370 |
2009年 | 319,440 |
2008年 | 417,350 |
2007年 | 345,120 |
2006年 | 309,879 |
2005年 | 277,887 |
2004年 | 277,123 |
2003年 | 240,300 |
2002年 | 179,442 |
2001年 | 193,745 |
2000年 | 171,695 |
1999年 | 161,015 |
1998年 | 161,936 |
1997年 | 163,213 |
1996年 | 152,902 |
1995年 | 146,782 |
1994年 | 151,400 |
1993年 | 166,600 |
1992年 | 156,700 |
1991年 | 156,200 |
1990年 | 96,400 |
1989年 | 69,426 |
1988年 | 66,425 |
1987年 | 61,535 |
1986年 | 51,720 |
1985年 | 56,465 |
1984年 | 49,956 |
1983年 | 45,550 |
1982年 | 47,178 |
1981年 | 41,970 |
1980年 | 45,968 |
1979年 | 38,708 |
1978年 | 44,059 |
1977年 | 39,610 |
1976年 | 34,659 |
1975年 | 45,800 |
1974年 | 44,500 |
1973年 | 71,700 |
1972年 | 44,550 |
1971年 | 62,100 |
1970年 | 39,700 |
1969年 | 54,600 |
1968年 | 43,900 |
1967年 | 40,250 |
1966年 | 65,600 |
1965年 | 68,332 |
1964年 | 58,332 |
1963年 | 47,500 |
1962年 | 41,915 |
1961年 | 34,685 |
ヨルダンの牛乳生産量のデータを見ていくと、最初の数十年間は緩やかな増加が続いていますが、1970年代から1980年代にかけて不安定な時期が見られます。この背景には、地政学的リスクや政情不安が影響している可能性があります。特に1967年以降から1970年代前半にかけてのヨルダン川西岸の紛争が農業全般、特に家畜業に大きな影響を及ぼしたと考えられます。
1990年代以降、大幅な生産量の増加が見られます。1990年から1991年にかけて生産量がほぼ2倍以上に増加したことは特筆すべき点です。この急増の理由としては、ヨルダンが農業の近代化や効率化に注力し、畜産業の改良を進めたことが背景にあります。また、冷戦時代の終了とともに国際的な支援や技術供与も拡大し、新しい乳牛の品種導入や飼育技術の向上につながったと考えられます。
21世紀以降も、ヨルダンの牛乳生産量は引き続き上昇傾向にありますが、2008年の頂点である417,350トンの後、一時的な減少が見受けられます。これは、世界経済危機が農業資材の価格上昇や輸入品の供給に影響を与えたことが考えられます。その後の2020年には、COVID-19パンデミックが社会全体に影響を及ぼし、生産量が減少したことが記録されています。この時期には、輸出入制限や労働力不足が課題となり、多くの国々で同様の現象が見られました。例えば、日本や韓国の生乳生産でも一時的な減少が見られたことから、国際的な傾向がうかがえます。
ヨルダンは2021年から再び生産量を回復させ、2022年には431,055トンと過去最高となりました。この回復は、政府の支援策、国際協力による技術の共有、特に気候変動に対応した農業計画が功を奏した結果といえます。ヨルダンのような水資源の乏しい国では、効率的な灌漑技術や水資源管理が不可欠であり、これが将来の生産量維持における重要な課題となります。
これまでは生産量の増加が目立ちますが、持続可能性の観点からいくつかの課題が残されています。一つの大きな問題は、気候変動の影響です。ヨルダンのような乾燥地帯では、干ばつが家畜の飼料供給と水資源に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、地政学的リスクも依然として存在しており、地域紛争が再発すれば農業全体に波及効果を与える可能性があります。ヨルダンにとっては、内需の増加だけでなく、中東市場への輸出が経済的支援を強化する鍵となります。そのためには、供給チェーンの改善や輸出先の多様化が必要です。
未来に向けては、ヨルダンの牛乳生産をより安定させるための具体的な対策が求められます。たとえば、水資源を効率的に使用するための最新技術の普及、そして牧草地やエサに使われる農地の管理を最適化する取り組みが必要です。さらに、周辺諸国との経済協力を強化し、牛乳製品の取引の拡大を進めることが重要です。このほか、家畜用ワクチン接種などの健康対策や新たなインフラ整備により、病気や移動制限の影響を減らすことを提言します。
ヨルダンは過去数十年の間、農業分野において着実な成長を遂げてきました。未来においても、水資源や地政学的リスクを考慮しつつ、継続的な政策改善と国際協力により、持続可能な牛乳生産を経済成長の柱の一つとして推進することが期待されます。