国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、ヨルダンのニンニク生産量は2023年に6,183トンと大きな増加を記録しました。歴史的には1961年の900トンから徐々に増加して1964年に1,554トンを達成しましたが、その後は一時的な低迷期を迎え、1968年から1980年代初頭にかけては特に生産量が激減しました。その後、1980年代後半から持続的な回復傾向を示しています。2021年以降は2,000トン台の生産量を安定的に維持していましたが、2023年には過去最高の数値を記録しました。このような推移は様々な経済的、地政学的、そして気候的要因に起因していると考えられます。
ヨルダンのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 6,183 |
166.91% ↑
|
2022年 | 2,317 |
-6.44% ↓
|
2021年 | 2,476 |
17.96% ↑
|
2020年 | 2,099 |
-16.24% ↓
|
2019年 | 2,506 |
-32.07% ↓
|
2018年 | 3,689 |
42.49% ↑
|
2017年 | 2,589 |
14.2% ↑
|
2016年 | 2,267 |
141.43% ↑
|
2015年 | 939 |
-29.77% ↓
|
2014年 | 1,337 |
296.74% ↑
|
2013年 | 337 |
-52.93% ↓
|
2012年 | 716 |
208.62% ↑
|
2011年 | 232 |
-52.26% ↓
|
2010年 | 486 |
-34.85% ↓
|
2009年 | 746 |
115.61% ↑
|
2008年 | 346 |
-88.84% ↓
|
2007年 | 3,100 |
909.77% ↑
|
2006年 | 307 |
-15.43% ↓
|
2005年 | 363 |
-89.62% ↓
|
2004年 | 3,496 |
-35.15% ↓
|
2003年 | 5,391 |
172.69% ↑
|
2002年 | 1,977 |
-37.75% ↓
|
2001年 | 3,176 |
21.73% ↑
|
2000年 | 2,609 |
-2.32% ↓
|
1999年 | 2,671 |
15.38% ↑
|
1998年 | 2,315 |
-4.1% ↓
|
1997年 | 2,414 |
2.24% ↑
|
1996年 | 2,361 |
-18.56% ↓
|
1995年 | 2,899 |
42.6% ↑
|
1994年 | 2,033 |
30.24% ↑
|
1993年 | 1,561 |
-48.19% ↓
|
1992年 | 3,013 |
46.05% ↑
|
1991年 | 2,063 |
297.5% ↑
|
1990年 | 519 |
-56.64% ↓
|
1989年 | 1,197 |
-66.46% ↓
|
1988年 | 3,569 |
76.25% ↑
|
1987年 | 2,025 |
102.5% ↑
|
1986年 | 1,000 |
36.05% ↑
|
1985年 | 735 |
-46.43% ↓
|
1984年 | 1,372 |
241.29% ↑
|
1983年 | 402 |
7940% ↑
|
1982年 | 5 |
66.67% ↑
|
1981年 | 3 |
-88.89% ↓
|
1980年 | 27 |
80% ↑
|
1979年 | 15 |
400% ↑
|
1978年 | 3 |
-82.35% ↓
|
1977年 | 17 |
70% ↑
|
1976年 | 10 |
-96.6% ↓
|
1975年 | 294 |
7250% ↑
|
1974年 | 4 |
-71.43% ↓
|
1973年 | 14 |
-33.33% ↓
|
1972年 | 21 |
-73.08% ↓
|
1971年 | 78 |
-21.21% ↓
|
1970年 | 99 |
-34% ↓
|
1969年 | 150 |
114.29% ↑
|
1968年 | 70 |
-90% ↓
|
1967年 | 700 |
-53.33% ↓
|
1966年 | 1,500 |
15.38% ↑
|
1965年 | 1,300 |
-16.34% ↓
|
1964年 | 1,554 |
29.5% ↑
|
1963年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1962年 | 1,100 |
22.22% ↑
|
1961年 | 900 | - |
ヨルダンの歴史におけるニンニク生産量の推移を見ると、多くの国際的な要因および国内要因がその動向に影響を与えていることが分かります。1960年代初頭の緩やかな増加から一転し、1967年以降、特に1968年の70トンから1974年の4トンという劇的な減少は、当時の地域紛争や内部的な経済混乱がその背景にあると見られます。この時期、ヨルダンを含む中東地域では資源をめぐる政治的対立や戦争が頻発しており、農業生産全般に悪影響を与えたと考えられます。
1983年に402トンと回復を見せると、1987年には2,025トン、1988年には3,569トンと急激な増加を記録しています。この復活の背景には、ヨルダン内外の市場ニーズの増大、税制改革による農業従事者への支援、そして技術革新が挙げられます。さらに社会経済的状況の安定化が、この時期の増加を後押ししたと考えられます。
2000年代に入ると年間生産量は数千トンの規模で比較的安定しながらも波動が見られました。特に2005年から2007年の間や2008年から2014年の間で、しばしば大きく減少したり急上昇したりする傾向が確認されています。この変動の理由として、気候変動が作物収穫に与える影響や、世界的な価格競争が挙げられます。例えば、干ばつや異常気象によって一部の作付け地が使用できなくなるケースや、輸入品との価格競争が一部の農業生産者を撤退に追い込む場合が考えられます。
2023年には驚異的な6,183トンを記録しましたが、これはヨルダンの農業政策の強化、特に輸出向け生産への転換と新たな農業技術の普及が主な要因と推測されます。また、ヨルダンのニンニクはその特有の風味と品質が重視され、域内外での需要が増加している可能性も考えられます。一方で、この急増が今後の生産基盤にどのような影響を及ぼすのかについては注意が必要です。例えば、過剰生産による土壌劣化や市場飽和に伴う価格低下といったリスクがあります。
また、新型コロナウイルス感染拡大が農業分野にもたらした影響についても触れておく必要があります。2020年以降、他国と同様にヨルダンも物流の停滞や労働力不足という課題に直面しましたが、それに対応した新しい輸出ルートの開拓や機械化の推進が生産力向上を支える要因になった可能性があります。
今後のニンニク生産における課題としては、持続可能な農業の実現、気候変動に適応するための農法開発、そして地域紛争など外的要因への迅速な対応が挙げられます。また、輸出市場の拡大を目指した政府支援が鍵を握るといえるでしょう。そして、他国との生産量比較を見ても、ヨルダンは中国など世界最大級のニンニク生産国には遠く及ばないものの、中東地域における基幹的な生産者として存在感を高めていく可能性があります。そのためには、地域間の協力体制や国際機関との連携強化を通じて、農業技術やノウハウをさらに発展させることが重要です。
結論として、ヨルダンのニンニク生産量は過去数十年にわたって多様な変動を示しつつも、最近では特に伸びを見せています。この流れを維持するためには、持続可能な政策と戦略的な市場開拓が成功のカギとなります。農業分野におけるこれらの努力は、国全体の経済成長や生活の安定にも寄与すると期待されます。