FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ヨルダンの鶏卵生産量は1961年の3,780トンから徐々に増加し、変動を経ながらも2023年には69,872トンに達しました。この70年以上のデータは、ヨルダンが特定の年に急増や急減を経験しながらも、長期的には生産量を大幅に拡大させてきたことを示しています。特に、政策的な調整や外的要因が生産に与える影響が顕著に見られるデータとして注目されます。
ヨルダンの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 69,872 |
43.84% ↑
|
2022年 | 48,576 |
-0.5% ↓
|
2021年 | 48,822 |
-3.72% ↓
|
2020年 | 50,708 |
-35.77% ↓
|
2019年 | 78,947 |
-8.56% ↓
|
2018年 | 86,333 |
74.06% ↑
|
2017年 | 49,600 |
-9.31% ↓
|
2016年 | 54,694 |
2.85% ↑
|
2015年 | 53,177 |
5.05% ↑
|
2014年 | 50,622 |
20.96% ↑
|
2013年 | 41,851 |
-3.29% ↓
|
2012年 | 43,274 |
-16.35% ↓
|
2011年 | 51,733 |
-25.32% ↓
|
2010年 | 69,274 |
50.92% ↑
|
2009年 | 45,900 |
-9.29% ↓
|
2008年 | 50,602 |
30.54% ↑
|
2007年 | 38,764 |
-13.24% ↓
|
2006年 | 44,680 |
10.01% ↑
|
2005年 | 40,614 |
-13.13% ↓
|
2004年 | 46,753 |
7.23% ↑
|
2003年 | 43,601 |
-2.45% ↓
|
2002年 | 44,696 |
-1.64% ↓
|
2001年 | 45,440 |
-0.86% ↓
|
2000年 | 45,833 |
-4.48% ↓
|
1999年 | 47,981 |
-6.08% ↓
|
1998年 | 51,087 |
-0.38% ↓
|
1997年 | 51,282 |
12.12% ↑
|
1996年 | 45,738 |
3.48% ↑
|
1995年 | 44,200 |
-17.23% ↓
|
1994年 | 53,400 |
-0.37% ↓
|
1993年 | 53,600 |
11.2% ↑
|
1992年 | 48,200 |
10.8% ↑
|
1991年 | 43,500 |
36.11% ↑
|
1990年 | 31,960 |
46.61% ↑
|
1989年 | 21,800 |
-4.39% ↓
|
1988年 | 22,800 |
-10.59% ↓
|
1987年 | 25,500 |
-15% ↓
|
1986年 | 30,000 |
-3.85% ↓
|
1985年 | 31,200 |
33.33% ↑
|
1984年 | 23,400 |
-6.02% ↓
|
1983年 | 24,900 |
13.7% ↑
|
1982年 | 21,900 |
7.35% ↑
|
1981年 | 20,400 |
3.03% ↑
|
1980年 | 19,800 |
17.86% ↑
|
1979年 | 16,800 |
7.69% ↑
|
1978年 | 15,600 |
40.54% ↑
|
1977年 | 11,100 |
12.12% ↑
|
1976年 | 9,900 |
14.58% ↑
|
1975年 | 8,640 |
92% ↑
|
1974年 | 4,500 |
-31.82% ↓
|
1973年 | 6,600 |
3.13% ↑
|
1972年 | 6,400 |
75.34% ↑
|
1971年 | 3,650 |
-27.98% ↓
|
1970年 | 5,068 |
-14.15% ↓
|
1969年 | 5,903 |
7.33% ↑
|
1968年 | 5,500 |
10% ↑
|
1967年 | 5,000 |
-28.26% ↓
|
1966年 | 6,970 |
15.68% ↑
|
1965年 | 6,025 |
20.5% ↑
|
1964年 | 5,000 |
10.77% ↑
|
1963年 | 4,514 |
11.46% ↑
|
1962年 | 4,050 |
7.14% ↑
|
1961年 | 3,780 | - |
ヨルダンの鶏卵生産量の推移を見ると、1961年の3,780トンから1980年代に至るまで、ほぼ一貫して生産量が増加しています。この時期の生産向上は、農業技術の進歩や鶏の品種改良、食料の精密な配分が影響を与えた可能性があります。しかし、1967年や1971年に見られる生産量の急減は、ヨルダン周辺の地域紛争や政治的な不安定性が一因と考えられます。例えば、1967年の第三次中東戦争は広範囲にわたる経済的影響を及ぼし、畜産業にも悪影響を及ぼしました。
1980年代以降、鶏卵の生産量はより大きな増加を記録し、特に1985年には31,200トンに達し、1990年代にはさらに躍進が見られました。この背景には、都市化の進展や国内需要の増加があると考えられます。しかし、1990年代半ばには生産量の停滞や下降が発生し、地域経済の減速や輸出政策の変更、さらには経済制裁などの影響が影を落としている可能性があります。
2000年代に入ると、生産量は増減を繰り返しながらも、概ね安定した状況を示しました。しかし、2018年には86,333トンという驚くべきピークを記録しました。これは、政策支援の強化、農業テクノロジーの進展、そして周辺諸国からの需要の増加が複合的に作用した結果と見られます。一方で、2020年には生産量が約50,708トンまで急減しています。この減少には、新型コロナウイルスの影響による物流の混乱や農業労働力の不足、世界的な供給チェーンの途絶が関与していると推測されます。2023年には再び69,872トンまで回復し、一定の増加傾向を示していますが、依然として変動が多い状態が続いています。
ヨルダンの生産推移の特徴を俯瞰すると、地政学的要因が重要な影響を与えていることが明らかです。農産品の生産と供給は国内外の市場状況や政策に密接に結び付いており、紛争や貿易制限、気候変動などが進行中の課題といえます。また、鶏卵はヨルダンの食料供給の重要な要素であり、国内の食料安全保障を支える役割を果たしています。一方で生産サイクルが不安定であるため、長期的な生産計画の構築が必要です。
今後、ヨルダンがこの分野で克服すべき課題には、産業基盤のさらなる強化や気候変動への適応策が挙げられます。具体的には、高効率な飼料管理や耐環境性の高い鶏種の導入、さらには水資源の適切な利用が要求されます。また、近隣諸国や国際的な市場との連携を深めることで、地政学的リスクによる影響を軽減しつつ生産拡大を目指すことが重要です。例えば、イノベーションを活用したスマート農業技術の導入や、輸出促進を視野に入れた食品安全基準の強化は、今後ヨルダンが検討すべき具体的な施策となります。
さらに、災害や疫病による供給減少リスクを最小限に抑えるため、飼料備蓄の強化や農業従事者のトレーニング、感染症対策の徹底も不可欠です。これにより、生産基盤の安定化と持続可能な成長が期待されます。このように、継続的な体制強化と柔軟な政策対応がヨルダンの鶏卵産業の安定と発展を支える鍵となるでしょう。