国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ヨルダンのアーモンド生産量の推移は、1961年の2,000トンから2023年の2,652トンまで、長期的に増減を繰り返しています。生産量は年ごとの気象条件や地政学的状況、農業技術の発展によって影響を受けており、1980年代後半以降、断続的な回復と成長の傾向が見られます。特に2015年から2016年にかけての高い生産量(3,229トンと3,498トン)は注目に値します。一方で、2017年以降の数年間は減少傾向にありましたが、2022年から再び上向き、2023年には大幅な回復が確認されました。
ヨルダンのアーモンド生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 2,652 |
49.92% ↑
|
2022年 | 1,769 |
15.24% ↑
|
2021年 | 1,535 |
9.41% ↑
|
2020年 | 1,403 |
-0.43% ↓
|
2019年 | 1,409 |
-16.38% ↓
|
2018年 | 1,685 |
-6.44% ↓
|
2017年 | 1,801 |
-48.51% ↓
|
2016年 | 3,498 |
8.33% ↑
|
2015年 | 3,229 |
50.68% ↑
|
2014年 | 2,143 | - |
2013年 | 2,143 |
12.67% ↑
|
2012年 | 1,902 |
0.48% ↑
|
2011年 | 1,893 |
-21.74% ↓
|
2010年 | 2,419 |
141.18% ↑
|
2009年 | 1,003 |
-25.37% ↓
|
2008年 | 1,344 |
0.22% ↑
|
2007年 | 1,341 |
-57.35% ↓
|
2006年 | 3,144 |
31.49% ↑
|
2005年 | 2,391 |
14.18% ↑
|
2004年 | 2,094 |
-1.13% ↓
|
2003年 | 2,118 |
-14.73% ↓
|
2002年 | 2,484 |
147.16% ↑
|
2001年 | 1,005 |
-39.38% ↓
|
2000年 | 1,658 |
54.81% ↑
|
1999年 | 1,071 |
4.59% ↑
|
1998年 | 1,024 |
8.25% ↑
|
1997年 | 946 |
-1.77% ↓
|
1996年 | 963 |
-3.89% ↓
|
1995年 | 1,002 |
13.61% ↑
|
1994年 | 882 |
-56.7% ↓
|
1993年 | 2,037 |
6.93% ↑
|
1992年 | 1,905 |
0.74% ↑
|
1991年 | 1,891 |
50.08% ↑
|
1990年 | 1,260 |
6.96% ↑
|
1989年 | 1,178 |
5.27% ↑
|
1988年 | 1,119 |
2.85% ↑
|
1987年 | 1,088 |
115.87% ↑
|
1986年 | 504 |
-65.6% ↓
|
1985年 | 1,465 |
368.05% ↑
|
1984年 | 313 |
-37.4% ↓
|
1983年 | 500 |
7.53% ↑
|
1982年 | 465 | - |
1981年 | 465 |
-33.57% ↓
|
1980年 | 700 |
-22.05% ↓
|
1979年 | 898 |
124.5% ↑
|
1978年 | 400 |
-73.68% ↓
|
1977年 | 1,520 |
169.5% ↑
|
1976年 | 564 |
1.26% ↑
|
1975年 | 557 |
-26.42% ↓
|
1974年 | 757 |
265.7% ↑
|
1973年 | 207 |
-79.11% ↓
|
1972年 | 991 |
-19.17% ↓
|
1971年 | 1,226 |
1377.11% ↑
|
1969年 | 83 |
-93.24% ↓
|
1968年 | 1,228 |
-68.02% ↓
|
1967年 | 3,840 |
4.4% ↑
|
1966年 | 3,678 |
12.03% ↑
|
1965年 | 3,283 |
9.43% ↑
|
1964年 | 3,000 | - |
1963年 | 3,000 | - |
1962年 | 3,000 |
50% ↑
|
1961年 | 2,000 | - |
ヨルダンにおけるアーモンド生産は、気象条件や地域的な社会経済状況に大きく左右されてきました。このデータを見ると、1960年代後半から1970年代初頭にかけては、1968年の1,228トンから1969年のわずか83トンへの急激な減少が際立っています。この時期には地政学的な緊張や紛争がヨルダンを含む中東全体を覆い、農業活動も大きく影響を受けたことが伺えます。その後の生産量は1975年まで低迷したものの、1980年代以降には断続的な復調が見られました。
2000年代に入ると、生産の波はやや安定しましたが、それでも年ごとに大きな増減がありました。特に2006年の3,144トンや2015年から2016年にかけての3,498トンのようなピークを迎えることもあれば、2009年の1,003トンのように一時的に大きく減少する年もありました。これには、降水量不足や気象変動による影響があると考えられます。近年では2019年から2021年のやや低下した生産量から回復し、2023年には2,652トンを記録しました。この回復は、灌漑技術の改善や農業政策の見直しによる影響が反映されている可能性があります。
アーモンド生産における課題の一つは、ヨルダンが半乾燥地域に位置しているため、十分な降水量や安定した水資源に恵まれていないことです。この地域特有の気候条件はアーモンドの育成に適している一方で、周期的な干ばつや気象災害が大きなリスク要因となります。また、中東地域に特有の地政学的リスクやインフラの制約も、生産活動の安定性に影響を与える要因として挙げられます。例えば、地域紛争は農村部の生産活動に直接的な被害をもたらし、長期的な復興を遅らせる要因になり得ます。
今後ヨルダンがアーモンドの安定的な生産を維持するためには、以下の対策が考えられます。まず一つ目に、耐乾燥性が高く、地域の気候条件に適応した品種の導入を進めることが重要です。これにより、気象変動の影響を最小限に抑えることが期待されます。二つ目として、効率的な灌漑システムの開発と普及が必要です。特に、地下水を含む限られた水資源を効率的に利用するための政策が求められます。三つ目に、農業技術を向上させるための研究開発支援や地域農家への技術移転が効果的です。このような取り組みは、特に気象条件が不安定な時期における生産量の安定化に寄与するでしょう。
地政学的リスクを緩和するためには、周辺諸国との協力体制の強化が不可欠です。農産物の輸出入やインフラ整備に関する地域間協力を促進し、農業活動における国際資源の活用機会を増やすことが重要です。国際機関や援助団体の支援を受けつつ、持続可能な成長を目指す政策を策定することが期待されます。
結論として、ヨルダンのアーモンド生産は長期的には成長を見せつつも、気候変動や地政学的課題など多くのリスクに直面しています。これらの課題に対応するためには、農業技術の革新や地域間の協力体制の構築、政策の持続的な改善が不可欠です。これらの取り組みによって、ヨルダンは近隣諸国や世界市場における生産競争力を高め、経済発展にも寄与することができるでしょう。