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ヨルダンのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(FAO)が提供する最新データによると、ヨルダンのブドウ生産量は1961年から2023年までの約60年間で大きく変動しています。1960年代の安定した高い生産量に比べ、1968年以降急激な減少を経験しました。その後、一部上昇がみられる期間もありましたが、長期的には変動しながらも全体的に生産量は減少しています。近年では2015年と2016年にピークを迎えたものの、その後の低下や変動が顕著です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 39,543
-6.26% ↓
2022年 42,183
7.17% ↑
2021年 39,361
-8.47% ↓
2020年 43,003
-20.2% ↓
2019年 53,886
-9.82% ↓
2018年 59,755
11.67% ↑
2017年 53,509
-14.15% ↓
2016年 62,328
0.1% ↑
2015年 62,265
80.11% ↑
2014年 34,571
-1.68% ↓
2013年 35,160
-1.42% ↓
2012年 35,668
-7.04% ↓
2011年 38,371
29.27% ↑
2010年 29,683
-13.9% ↓
2009年 34,475
30.74% ↑
2008年 26,370
-4.47% ↓
2007年 27,604
-14.23% ↓
2006年 32,184
-6.58% ↓
2005年 34,452
6.31% ↑
2004年 32,408
15.45% ↑
2003年 28,072
-19.27% ↓
2002年 34,773
-40.06% ↓
2001年 58,009
142.62% ↑
2000年 23,909
31.2% ↑
1999年 18,224
2.02% ↑
1998年 17,863
-2.29% ↓
1997年 18,281
-16.4% ↓
1996年 21,866
-9.99% ↓
1995年 24,293
-7.83% ↓
1994年 26,358
-25.13% ↓
1993年 35,204
-29.82% ↓
1992年 50,160
28.19% ↑
1991年 39,130
-14.43% ↓
1990年 45,726
109.36% ↑
1989年 21,841
1.42% ↑
1988年 21,535
15.72% ↑
1987年 18,610
-19.74% ↓
1986年 23,186
-11.5% ↓
1985年 26,200
204.09% ↑
1984年 8,616
-66.6% ↓
1983年 25,800
-3.71% ↓
1982年 26,795
3.97% ↑
1981年 25,773
41.7% ↑
1980年 18,188
-20.91% ↓
1979年 22,996
-49.3% ↓
1978年 45,358
34.19% ↑
1977年 33,802
146.95% ↑
1976年 13,688
23.32% ↑
1975年 11,100
-37.75% ↓
1974年 17,831
-19.84% ↓
1973年 22,244
22.52% ↑
1972年 18,155
-2.64% ↓
1971年 18,647
-29.04% ↓
1970年 26,280
84.63% ↑
1969年 14,234
-53.33% ↓
1968年 30,500
-57.45% ↓
1967年 71,676
-10.06% ↓
1966年 79,690
0.62% ↑
1965年 79,200
2.99% ↑
1964年 76,900
31.01% ↑
1963年 58,700
-25.7% ↓
1962年 79,000
0.77% ↑
1961年 78,400 -

ヨルダンのブドウ生産量のデータを年代別に詳しく見ていくと、いくつかの重要な変化が浮かび上がります。1960年代は年間約78,000トン前後の安定した生産量が見られましたが、1968年に30,500トンと急落しました。その後1970年代にはさらに低迷し、一時は10,000トン台にまで減少しました。このような急激な低下の背景には、地域紛争や社会的不安定要因の影響が強く作用していた可能性があります。また、1967年には第三次中東戦争など地政学的リスクが農産業に大きな打撃を与えたことは明白です。この時期の農業従事者の移動や農地の喪失が、持続的な生産低迷を招いたと考えられます。

1980年代から1990年代にかけては、比較的持ち直しの動きが見られましたが、それでも多くの年で30,000トン以下という低水準が続きました。この時期の復調には農地の再開発や農業技術の導入が寄与した可能性があります。しかし、その後も安定とは言いがたく、例えば2001年には短期的に58,009トンに達するものの、その後再び変動を繰り返しました。

2015年および2016年には、それぞれ62,265トンと62,328トンと、過去数十年での最高値を記録しました。この一時的な回復には、政府による農業インフラ強化や農業支援政策、もしくは特定の気象条件が良好だったことがあると推測されます。とはいえ、2017年以降の5年ほどは再び減少傾向にあり、2023年には39,543トンと低迷が続いています。

過去数十年のこうした変動には、ヨルダンの水資源不足や環境の厳しさが大きく影響を与えています。ブドウの栽培には適切な水分が必要ですが、ヨルダンは砂漠気候に属しており、限られた水資源を効率的に利用する必要があります。また、財政・技術的な制約が農業機械化や現代技術の導入遅れにつながり、各国との競争力を弱めています。一方で近年は、イスラエルやトルコなどの周辺国からの技術協力や農業研究で一定の進展が見られるケースもあります。

ヨルダンのブドウ生産量改善に向けた課題と提言として、水資源の効果的な利用が最優先課題と言えるでしょう。特に、節水型の灌漑(かんがい)システムの導入や、塩害耐性の高い新品種の開発が重要です。また、政府主導で農業に従事する若年層への奨励政策を推進し、持続可能な形で人材を育成する必要があります。さらには、農業技術や流通ネットワークを強化するため、貿易パートナー国との連携や地域的協力関係の深化が求められます。

地政学的背景にも目を向けるべきでしょう。中東の不安定な政治環境は、食料安全保障や農業生産への影響を引き続き及ぼす可能性があります。このリスクを和らげるためには、地域協力を基盤とした農業共同体の形成や緊急時の資金援助の枠組みを強化するべきです。

これらを実現するためには、ヨルダン国内の政策的な決断とともに、国際的な支援や技術移転を積極的に活用することが鍵となります。ヨルダンのブドウ生産には課題が多いものの、資源管理と技術の革新により、持続可能な生産体制への移行が十分可能であると言えます。この動きは国内の食料自給率向上だけでなく、経済的な独立性の強化にもつながる重要なステップとなるでしょう。