Skip to main content

ヨルダンの羊飼養数推移(1961-2022)

FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ヨルダンにおける羊の飼養数は長期的に増加する傾向が見られますが、時折減少する時期も存在しています。特に1960年代から1980年代までは年間変動が大きく、1990年代以降は一度急激な上昇があったものの、その後は緩やかな動きに変わりました。2022年の飼養数は2,961,717匹で、2016年のピークである3,198,925匹からやや減少しています。このデータは、ヨルダンの牧畜業の安定性や環境要因の影響を探る上で重要な指標となります。

年度 飼養数(匹)
2022年 2,961,717
2021年 3,085,261
2020年 3,002,286
2019年 3,008,837
2018年 3,060,321
2017年 3,063,123
2016年 3,198,925
2015年 2,596,400
2014年 2,680,261
2013年 2,311,149
2012年 2,233,980
2011年 2,264,600
2010年 2,175,690
2009年 2,070,940
2008年 2,493,360
2007年 2,251,450
2006年 1,971,520
2005年 1,890,440
2004年 1,529,090
2003年 1,476,470
2002年 1,433,310
2001年 1,457,910
2000年 1,484,084
1999年 1,933,986
1998年 1,581,131
1997年 1,935,095
1996年 2,143,632
1995年 2,375,000
1994年 2,211,410
1993年 2,878,130
1992年 2,671,317
1991年 1,900,000
1990年 1,556,000
1989年 1,523,000
1988年 1,279,000
1987年 1,219,000
1986年 930,000
1985年 1,121,000
1984年 960,000
1983年 980,000
1982年 990,000
1981年 1,073,000
1980年 852,000
1979年 924,000
1978年 856,000
1977年 804,000
1976年 565,400
1975年 772,517
1974年 791,523
1973年 849,900
1972年 723,000
1971年 690,595
1970年 664,223
1969年 854,366
1968年 792,300
1967年 768,030
1966年 1,135,900
1965年 987,200
1964年 802,600
1963年 741,300
1962年 701,800
1961年 528,015

ヨルダンの羊飼養数について、長期的にその推移を分析すると、まず1960年代から1970年代にかけては、増加傾向の中で大きな波が見られます。この時期には、地域的な情勢や砂漠化の進行、環境条件の変化、政策的要因がその大きな要因と考えられます。特に1967年と1970年にかけての急減は、地政学的な文脈を考慮する必要があります。中東地域における戦争や紛争が、牧畜業にも大きな影響を与えたことが推測されます。

1970年代後半から1980年代にかけては比較的安定した飼養数の推移を示しています。この時期は、技術革新や家畜管理方法の向上が一部地域で進行したことが背景にあると考えられます。しかし、それでも依然として天候不順や干ばつなど自然条件の影響を受けて、飼養数は起伏を見せました。

1990年代に入ると、データは大きな跳ね上がりを示しています。特に1992年から1993年にかけては羊飼養数が2,671,317匹から2,878,130匹に急増しています。この背景には、国際市場におけるヨルダン産羊毛や肉の需要の増加と、政府の畜産業支援策が関与していると考えられます。ただし、このような急増は長続きせず、1994年以降には大きく減少しています。この減少は、供給過剰による市場価格の低下や、自然資源の負荷増大による環境の悪化が原因となった可能性があります。

2000年代に入り、飼養数は再び安定した増加傾向を見せました。2016年には3,198,925匹と過去最高を記録しています。この年は、中東地域全体での家畜生産拡大が進行していた時期であり、ヨルダンもその波に乗ったと推察されます。しかし、その後再び減少に転じ、2022年には2,961,717匹となっています。この減少の背後には、牧草地の減少、気候変動による砂漠化の進行、ならびに生産コストの上昇が挙げられます。

このような変動には、中東特有の地理的要因や社会情勢が深く関係しています。ヨルダンの牧草地は主に乾燥地域に位置しており、気候変動や水資源の不足が畜産業に直接的な影響を与えています。また、周辺国との貿易の依存度も高く、地域衝突やエネルギー資源争奪といった地政学的リスクが、羊飼養数にも間接的な影響を及ぼしています。

課題としては、過放牧による土壌の劣化や環境負荷の増加が挙げられます。また、国内市場の変動や輸出制限の影響を受けやすく、牧畜業の長期的な安定性を確保する必要があります。このため、例えば家畜用飼料の供給を効率化する技術開発や、砂漠化対策として植生回復プロジェクトの拡充が必要です。さらに、隣国との協力による地域内市場の安定化を図ることや、新技術を導入した家畜管理モデルの導入も検討されるべきです。

結論として、ヨルダンの羊飼養数の推移は、地理的条件や地政学的な要因による外的な影響を強く受けています。しかし、持続可能な畜産業を実現するためには、科学的知見に基づいた管理手法の導入や地域協力の強化が不可欠です。これにより、環境への配慮をしながら生産性を向上し、地域経済の安定化に寄与することが期待されます。