Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の2024年7月に更新された最新データによると、ラトビアの牛乳生産量は過去30年で大きく変動してきました。1992年には1,476,400トンの生産量を記録しましたが、その後急激に減少し、1999年には800,000トン以下まで落ち込みました。その後は安定した増加傾向を見せ、2017年には997,992トンとピークを迎えました。しかし、近年では再び減少傾向がみられ、2023年の生産量は962,180トンとなりました。
ラトビアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 962,180 |
-1.19% ↓
|
2022年 | 973,810 |
-1.67% ↓
|
2021年 | 990,310 |
0.21% ↑
|
2020年 | 988,200 |
0.95% ↑
|
2019年 | 978,900 |
-0.13% ↓
|
2018年 | 980,200 |
-1.78% ↓
|
2017年 | 997,992 |
1.47% ↑
|
2016年 | 983,515 |
0.84% ↑
|
2015年 | 975,357 |
0.67% ↑
|
2014年 | 968,899 |
6.24% ↑
|
2013年 | 911,990 |
4.75% ↑
|
2012年 | 870,633 |
3.44% ↑
|
2011年 | 841,702 |
1.3% ↑
|
2010年 | 830,918 |
0.35% ↑
|
2009年 | 828,060 |
-0.48% ↓
|
2008年 | 832,073 |
-0.75% ↓
|
2007年 | 838,356 |
3.23% ↑
|
2006年 | 812,133 |
0.67% ↑
|
2005年 | 806,767 |
2.91% ↑
|
2004年 | 783,986 |
0.11% ↑
|
2003年 | 783,152 |
-3.49% ↓
|
2002年 | 811,453 |
-4.08% ↓
|
2001年 | 845,972 |
2.79% ↑
|
2000年 | 822,983 |
3.26% ↑
|
1999年 | 796,974 |
-15.94% ↓
|
1998年 | 948,100 |
-3.82% ↓
|
1997年 | 985,800 |
7.08% ↑
|
1996年 | 920,600 |
-2.47% ↓
|
1995年 | 943,900 |
-5.57% ↓
|
1994年 | 999,600 |
-13.51% ↓
|
1993年 | 1,155,700 |
-21.72% ↓
|
1992年 | 1,476,400 | - |
ラトビアの牛乳生産量データは、国の経済的、地政学的、社会的な状況がこの産業に与える影響を如実に示しています。1992年以降、ソビエト連邦から独立した直後の経済構造の変化や農畜産業の移行期が影響を与えたと考えられます。この時期、農業政策や市場の自由化により、多くの小規模酪農事業者が撤退を余儀なくされました。そのため、生産量は1992年の1,476,400トンから、1999年には796,974トンへと急速に減少しました。
2000年代に入ると、ラトビアが欧州連合(EU)に加盟したことを契機に、酪農業にも再編や投資が進みました。EUの補助金や技術支援が、このセクターの近代化と生産性向上に寄与しました。そのため、2000年から2017年にかけて牛乳の生産量は緩やかですが着実に回復し、ピーク時の2017年には997,992トンに達しました。この時期の回復は、品質向上を目指した酪農技術の改善、規模の経済を追求した大型酪農場の増加、そして国外市場への輸出の強化が影響したと考えられます。
しかし最近の2020年以降のデータを見ると、生産量はやや減少傾向にあります。2020年は988,200トンでしたが、2023年には962,180トンまで減少しました。この背景としては、新型コロナウイルスのパンデミックによる労働力不足や物流の混乱、エネルギー価格の上昇、さらに環境政策への転換に伴う酪農業への制限などが挙げられます。また、地政学的リスクとしてウクライナ危機の影響により、燃料や飼料価格が大幅に上昇し、ラトビアの酪農業に負担を与えました。
ラトビアの酪農業の課題は、生産量減少の背景だけでなく、環境への影響や国際競争力の維持にもあります。特に、持続可能性を重視した欧州全体の政策に適応しつつ、収益を確保することが必要です。過去数十年にわたって小規模経営が減少し、大規模農場へと移行してきた現状ですが、多様な農家が参入できる市場構造を整えることも重要です。また地域衝突や不安定な経済環境が、さらなる物流コストや価格変動を引き起こす可能性があるため、リスク管理も急務となっています。
将来的には、技術革新を活用して効率性を向上させる必要があります。具体的には、スマート農業技術やデジタル化、気候変動に適応した飼料体系の確立が求められるでしょう。また、国内外の需要に対応するため、高品質の乳製品への転換を進めることも効果的です。加えて、EUを中心とした地域間協力の強化や、飼料や肥料供給においてリスク分散を図ることも、生産量の安定化に繋がるでしょう。
結論として、ラトビアの酪農業は近年の下落傾向を克服し、長期的かつ持続可能な成長へ向けて変革の段階を迎えています。国際機関やEUの協力を得ながら、環境と経済の両方の観点でバランスをとった政策を推進することが、今後の鍵となるでしょう。