Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ラトビアの鶏飼養数は1992年の9,115羽をピークに急激な減少傾向をみせ、その後緩やかな回復を見せています。2000年代に入るとおおむね安定した数値が続き、2020年には5,643羽まで回復しています。この間、経済改革、EU加盟、生産効率化などの要因が影響を与えていると考えられます。
ラトビアの鶏飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(羽) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 5,922,000 |
4.94% ↑
|
2020年 | 5,643,000 |
18.2% ↑
|
2017年 | 4,774,000 |
6.49% ↑
|
2016年 | 4,483,000 |
1.56% ↑
|
2015年 | 4,414,000 |
-11.47% ↓
|
2014年 | 4,986,000 |
1.53% ↑
|
2013年 | 4,911,000 |
11.16% ↑
|
2012年 | 4,418,000 |
-10.73% ↓
|
2011年 | 4,949,000 |
2.48% ↑
|
2010年 | 4,829,000 |
4.5% ↑
|
2009年 | 4,621,000 |
-2.86% ↓
|
2008年 | 4,757,000 |
5.99% ↑
|
2007年 | 4,488,000 |
9.68% ↑
|
2006年 | 4,092,000 |
1.04% ↑
|
2005年 | 4,050,000 |
1.17% ↑
|
2004年 | 4,003,000 |
3.12% ↑
|
2003年 | 3,882,000 |
7.21% ↑
|
2002年 | 3,621,000 |
16.62% ↑
|
2001年 | 3,105,000 |
-4.08% ↓
|
2000年 | 3,237,000 |
0.87% ↑
|
1999年 | 3,209,000 |
-9.63% ↓
|
1998年 | 3,551,000 |
-6.33% ↓
|
1997年 | 3,791,000 |
-9.7% ↓
|
1996年 | 4,198,000 |
13.46% ↑
|
1995年 | 3,700,000 |
-10.35% ↓
|
1994年 | 4,127,000 |
-22.83% ↓
|
1993年 | 5,348,000 |
-41.33% ↓
|
1992年 | 9,115,000 | - |
ラトビアの鶏飼養数の推移を見てみると、1992年から1990年代後半にかけて急激な減少傾向が見られます。この現象はソビエト連邦からの独立後、急速な経済変化と農業政策の転換が大きな要因とされています。特に市場の自由化に伴い、効率の悪い旧ソ連時代の農業システムが解体されたことで、一時的に大規模な縮小が見られたと考えられます。この急減は、国内だけでなく世界市場とも競争をしなければならなくなったことを示しています。
2000年代に入ると、鶏飼養数は比較的安定し、緩やかな回復が見られます。これは、ラトビアが2004年に欧州連合(EU)に加盟したことが大きな転換点となった可能性があります。EU加盟により、農業補助金が投入され、生産効率化や技術革新が進んだと推定されます。ただし、2010年代では一定の波があり、飼養数は一時的に減少する年も見られました。この変化には、燃料価格の上昇や飼料価格の変動、ならびに国内市場の需要低迷が関係したと考えられます。
直近の2020年には5,643羽まで回復しています。この増加は、特に輸出向けの養鶏業の再興や、地域での食料自給需要の高まりが寄与したと分析されます。鶏肉や卵の輸出は、ラトビアにとって重要な収入源であり、生産基盤の拡充が進められています。
ラトビアの鶏飼養業界は、今後も多くの課題に直面すると考えられます。まず第一に、地政学的リスクと気候変動の影響を受ける可能性が指摘されています。ロシアとの地理的近接性が農業輸出市場に不安を生じさせる可能性があり、特にロシア・ウクライナ紛争が長期化する場合、輸送網の遮断や貿易障壁が課されるリスクがあります。また、気候変動がもたらす農作物の収穫量減少や飼料価格の高騰も、鶏飼養業の持続可能性に影響を与えるでしょう。
さらに国内市場については、人口減少による需要の先細りが懸念されます。ラトビアは人口が減少している国として知られており、国内の消費人口の減少は産業全体の規模縮小を招く可能性があります。これに対しては、国外市場を積極的に開拓する必要があるでしょう。また、技術革新により、従来の養鶏方法からより効率的で環境負荷の少ない方式への転換を進めることが求められます。
具体的な対策としては、地域間協力の強化が挙げられます。EU内での域内貿易の拡大や共同研究開発への参加は、経済的安定と生産効率の向上をもたらす可能性があります。また、国内では大規模農業施設を活用しつつ、小規模な農家への支援プログラムを設けることで、持続可能な生産を実現できます。さらに、デジタル技術を用いた飼養管理の最適化や、気候変動に即した農業政策の導入も検討課題となるでしょう。
データの動きから見える現状は、ラトビアの鶏飼養業が過去の困難を乗り越えつつあるということと、多くの可能性を持ちながらも、多面的な対策が求められるという点です。今後は国内外の需要を見据えた持続可能な成長戦略を構築し、安定した環境の中で産業を発展させていく必要があります。