Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が更新した2024年7月の最新データによると、ラトビアの羊肉生産量は1992年の3,900トンをピークに下降したのち、2000年を境に緩やかに回復し、2018~2020年には970~980トンに達しました。しかし以降はやや減少し、2021~2023年は800トン前後で推移しています。この変動は、農業政策や社会経済の影響を受けていると考えられます。
ラトビアの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 800 |
-1.23% ↓
|
2022年 | 810 |
1.25% ↑
|
2021年 | 800 |
-18.37% ↓
|
2020年 | 980 |
1.03% ↑
|
2019年 | 970 |
3.19% ↑
|
2018年 | 940 |
8.05% ↑
|
2017年 | 870 |
-2.9% ↓
|
2016年 | 896 |
11.3% ↑
|
2015年 | 805 |
19.08% ↑
|
2014年 | 676 |
0.15% ↑
|
2013年 | 675 |
-0.59% ↓
|
2012年 | 679 |
1.19% ↑
|
2011年 | 671 |
13.34% ↑
|
2010年 | 592 |
0.51% ↑
|
2009年 | 589 |
-6.21% ↓
|
2008年 | 628 |
48.11% ↑
|
2007年 | 424 |
10.7% ↑
|
2006年 | 383 |
9.43% ↑
|
2005年 | 350 |
15.13% ↑
|
2004年 | 304 |
-4.4% ↓
|
2003年 | 318 |
15.64% ↑
|
2002年 | 275 |
-7.72% ↓
|
2001年 | 298 |
-23.2% ↓
|
2000年 | 388 |
47.53% ↑
|
1999年 | 263 |
-21.96% ↓
|
1998年 | 337 |
-18.2% ↓
|
1997年 | 412 |
-43.17% ↓
|
1996年 | 725 |
-34.09% ↓
|
1995年 | 1,100 |
-50% ↓
|
1994年 | 2,200 |
-42.11% ↓
|
1993年 | 3,800 |
-2.56% ↓
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1992年 | 3,900 | - |
ラトビアの羊肉生産量の推移を見ると、1992年の3,900トンから2000年には最低の263トンへと急激に減少しました。この期間の大幅な低下は、1991年のソビエト連邦崩壊後の政治的・経済的混乱に起因している可能性があります。この時期に多くの農場が経営困難に陥り、生産効率が大幅に低下したことが背景にあると推測されます。また、都市化の進展や市場需要の低迷も悪影響を及ぼしたと考えられます。
2000年代以降は安定期に入り、特に2008年以降、生産量が回復傾向を示しています。この回復はおそらく、ラトビアが2004年にEUに加盟したことによる農業補助金の適用や、新しい技術や経営手法の導入が大きく寄与していると考えられます。このような支援により、ラトビアの農業セクターが徐々に再構築され、生産性が向上した結果と言えるでしょう。
2010年代半ばから後半にかけて、羊肉の需要が地域内で上昇した傾向もうかがえます。特に2015~2020年にかけて、800トン台後半から最大980トンまで増加したことから、この時期に羊肉の付加価値を高める政策や農業の効率化が進んだ様子が見て取れます。一方で、2021年以降は800トン前後で停滞しています。この近年の減少や停滞は、EU全体での食肉消費の鈍化、アフリカ豚熱や新型コロナウイルス感染症の影響により、家畜飼育環境や物流面での課題が発生したためと考えられます。
近年の羊肉生産停滞を踏まえると、いくつかの課題が浮かび上がります。一つは、国内市場での需要不足です。ラトビアをはじめとするバルト三国では伝統的に羊肉の消費文化が限定的であり、地元の市場に依存するだけでは生産量拡大が難しい可能性があります。また、世界的な気候変動や、それに伴う牧草地の質低下も間接的な要因として注目されています。
このような状況に対処するために、以下のいくつかの提案が考えられます。第一に、ラトビアの羊肉生産業者は欧州市場をターゲットにし、輸出を拡大すべく国際的な認証を取得するなど競争力を高める必要があります。食品の安全基準を強化し、高品質な羊肉としてブランド化する努力が求められるでしょう。第二に、国内消費の拡大を目指し、健康志向をテーマにした市場キャンペーンを展開することも有効です。たとえば、羊肉の栄養価を訴求し、バルト地方での伝統料理の復興を促進する政策などが考えられます。
また、農業部門全体でのサステナビリティの推進も重要です。例えば、地域の気候条件に適応した牧草地管理技術や、家畜の飼育効率を高めるための研究開発を継続的に支援することが期待されます。さらに、地政学的には、近隣諸国やEU全体との農業協力体制を強化することで、羊肉生産に必要な原材料や技術の安定供給を確保することが課題となります。
結論として、ラトビアの羊肉生産は1990年代の急激な減少を経て、持続的に回復を遂げてきたものの、近年は国内外の複雑な要因に直面しています。将来的には市場多様化、技術革新、および地域・国際協力を通じて、生産の安定だけでなく、産業全体の競争力を向上させる必要があると言えます。この課題に対応するためには、国やEU、地域社会が協力し合い、新しい生産・流通モデルを構築することが不可欠です。