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チリのオート麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、チリのオート麦の生産量は過去数十年で大きな変動を見せてきました。とくに1990年代後半から2000年代にかけては急激な増加を記録し、一時は年産50万トンを超える年もありました。しかし近年では天候リスクや地政学的課題の影響を受け、2023年では33万トン台に減少しています。これらの数値は国内外市場における需要と供給の変化、および地域特有の課題を反映していると言えます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 333,070
-42.42% ↓
2022年 578,448
10.13% ↑
2021年 525,245
10.02% ↑
2020年 477,396
24.02% ↑
2019年 384,922
-32.64% ↓
2018年 571,471
-19.86% ↓
2017年 713,102
33.77% ↑
2016年 533,080
26.61% ↑
2015年 421,048
-30.97% ↓
2014年 609,926
-10.36% ↓
2013年 680,382
50.93% ↑
2012年 450,798
-20.04% ↓
2011年 563,812
48.04% ↑
2010年 380,853
10.64% ↑
2009年 344,212
-10.41% ↓
2008年 384,224
12.73% ↑
2007年 340,824
-21.66% ↓
2006年 435,041
21.74% ↑
2005年 357,352
-33.65% ↓
2004年 538,600
10.36% ↑
2003年 488,050
17.24% ↑
2002年 416,297
20.83% ↑
2001年 344,527
38.96% ↑
2000年 247,936
23.18% ↑
1999年 201,277
-19.54% ↓
1998年 250,155
-27.82% ↓
1997年 346,556
73.6% ↑
1996年 199,627
-1.02% ↓
1995年 201,686
14.31% ↑
1994年 176,434
-12.84% ↓
1993年 202,435
10.8% ↑
1992年 182,699
-11.6% ↓
1991年 206,684
0.59% ↑
1990年 205,465
24.88% ↑
1989年 164,525
4.84% ↑
1988年 156,934
23.05% ↑
1987年 127,541
2.56% ↑
1986年 124,354
-27.01% ↓
1985年 170,361
4.49% ↑
1984年 163,040
11.43% ↑
1983年 146,320
24.4% ↑
1982年 117,620
-9.97% ↓
1981年 130,650
-24.3% ↓
1980年 172,580
14.89% ↑
1979年 150,210
62.16% ↑
1978年 92,630
-25.1% ↓
1977年 123,670
28.94% ↑
1976年 95,910
-26.82% ↓
1975年 131,054
-12.57% ↓
1974年 149,900
37.43% ↑
1973年 109,073
-1.96% ↓
1972年 111,255
-0.65% ↓
1971年 111,984
1.34% ↑
1970年 110,502
16.13% ↑
1969年 95,154
-41.58% ↓
1968年 162,873
41.38% ↑
1967年 115,200
7.3% ↑
1966年 107,358
30.55% ↑
1965年 82,236
-4.13% ↓
1964年 85,780
-8.43% ↓
1963年 93,680
14.57% ↑
1962年 81,770
-19.43% ↓
1961年 101,490 -

チリは南米地域におけるオート麦の主要生産国の一つであり、その生産量は地域の気候条件や農業政策の影響を受けています。データによると、1960年代から長期間にわたって小規模な変動が続き、1990年代中盤頃までは概ね20万トン以下の生産規模が維持されてきました。しかし1997年には34.6万トンと急増し、2000年代以降はさらに増加基調を強め、2013年には過去最高の68万トンを記録しました。この増加は、農地の拡大や農業技術の改善が寄与したものと考えられます。

一方で、2013年以降を見ると生産量は数年ごとの減少と回復を繰り返しており、安定した増加基調からやや外れています。特に2023年には33万トン台にまで落ち込み、過去10年間の平均値を下回る結果となりました。この要因として、近年の気候変動による干ばつや異常気象が挙げられます。チリでは雨が少なくなり、作物の生育条件が悪化するリスクが増していると言われています。また、新型コロナウイルスのパンデミックによって生産者と市場との接点が縮小し、生産計画に影響した可能性も否定できません。

さらに、地政学的背景もこの変動に影響を与えています。チリは国際市場向けに農産物を輸出していますが、近年の米中貿易戦争やウクライナ危機のような地政学的リスクが影響し、小麦など他の穀物の価格競争が激化しました。これにより、国内農家はオート麦を含む穀物栽培のコスト効率を見直す必要に迫られました。

また、南米特有の社会経済的課題も生産量に影響しています。近年、多くの農業従事者が都市部に移住することで農村地域の人口が減少し、農地管理が困難になっています。この動向はチリ国内の全農業にとって共通の問題です。

データから分かるもう一つの重要な課題は、生産量の変動が大きいため、安定供給が難しいという点です。たとえば、2017年には71.3万トンと記録的生産量を達成しましたが、その後の2019年には38.4万トンに急落しています。このような不安定さは、地元消費者や国際輸出市場にとって供給リスクを生む要因となりえます。世界的には、中国やインドなど人口が多く穀物需要が増え続けている国々があり、チリがその需要を確実に供給できるかは鍵となります。

では、これをどのように改善していけば良いのでしょうか?第一に、気候変動対策の強化が重要です。たとえば、雨水利用の効率化や干ばつに強いオート麦品種の導入など、気候リスクを最小限に抑える農法を取り入れるべきです。また、農地の効率的な利用を促進する政策を通じて、小規模農業従事者を支援することも必要でしょう。さらに、国内外の需要変動に対応できる流通インフラの整備や、保険制度の強化により生産者のリスクを軽減する取り組みも有効です。

結論として、チリのオート麦生産量は歴史的に見ると増加傾向にあるものの、気候変動や地政学的リスクの影響で近年の不安定が目立っています。今後、国内政策と国際協力を通じて安定した生産体制を構築することが求められます。具体的には、持続可能な農業技術の導入や気候変動対策を前進させることで、チリは地域内外でのオート麦供給のリーダーシップをさらに発揮する潜在性を持っています。