国連の食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、チリにおけるクルミの生産量は、1974年にわずか2,770トンでしたが、2023年には192,000トンに達し、約50年間で生産量が約69倍に増加しました。特に2000年以降、急激な成長が見られ、2010年代には大幅な伸びを記録しています。このデータは、チリがクルミ生産において急成長を遂げた背景や可能性を浮き彫りにするものです。
チリのクルミ(胡桃)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 192,000 |
25.49% ↑
|
2022年 | 153,000 |
-4.97% ↓
|
2021年 | 161,000 |
14.67% ↑
|
2020年 | 140,400 |
12.32% ↑
|
2019年 | 125,000 |
-17.76% ↓
|
2018年 | 152,000 |
52% ↑
|
2017年 | 100,000 |
11.11% ↑
|
2016年 | 90,000 | - |
2015年 | 90,000 |
28.57% ↑
|
2014年 | 70,000 |
45.83% ↑
|
2013年 | 48,000 |
19.83% ↑
|
2012年 | 40,058 |
14.53% ↑
|
2011年 | 34,978 |
8.53% ↑
|
2010年 | 32,229 |
23.96% ↑
|
2009年 | 26,000 |
8.33% ↑
|
2008年 | 24,000 |
-14.29% ↓
|
2007年 | 28,000 |
7.69% ↑
|
2006年 | 26,000 |
79.31% ↑
|
2005年 | 14,500 | - |
2004年 | 14,500 |
7.41% ↑
|
2003年 | 13,500 |
-3.57% ↓
|
2002年 | 14,000 |
12% ↑
|
2001年 | 12,500 |
10.23% ↑
|
2000年 | 11,340 |
5% ↑
|
1999年 | 10,800 |
5.88% ↑
|
1998年 | 10,200 |
-2.86% ↓
|
1997年 | 10,500 |
-4.55% ↓
|
1996年 | 11,000 |
12.24% ↑
|
1995年 | 9,800 |
8.89% ↑
|
1994年 | 9,000 |
-8.16% ↓
|
1993年 | 9,800 |
40% ↑
|
1992年 | 7,000 |
-22.22% ↓
|
1991年 | 9,000 |
7.78% ↑
|
1990年 | 8,350 |
17.61% ↑
|
1989年 | 7,100 |
-6.58% ↓
|
1988年 | 7,600 |
38.18% ↑
|
1987年 | 5,500 |
-8.33% ↓
|
1986年 | 6,000 |
-9.09% ↓
|
1985年 | 6,600 |
0.76% ↑
|
1984年 | 6,550 |
3.97% ↑
|
1983年 | 6,300 |
5.44% ↑
|
1982年 | 5,975 |
5.75% ↑
|
1981年 | 5,650 |
8.65% ↑
|
1980年 | 5,200 |
6.23% ↑
|
1979年 | 4,895 |
8.78% ↑
|
1978年 | 4,500 |
1.12% ↑
|
1977年 | 4,450 |
27.14% ↑
|
1976年 | 3,500 |
14.75% ↑
|
1975年 | 3,050 |
10.11% ↑
|
1974年 | 2,770 | - |
クルミ生産量の推移データから、チリがこの分野でどのように成長してきたかを読み取ることができます。1970年代には年間生産量が数千トン規模に留まりましたが、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、年間生産量は1万トン台から2万トン台へと増加しました。この拡大の背景には、クルミの需要拡大や輸出志向農業への転換、そして現地での農業技術の導入といった要因が影響しています。
特筆すべきは、2010年代からの急激な生産量の増加です。2010年の32,229トンから2018年には152,000トンに達し、わずか8年間で約5倍の増加を遂げています。このような発展には、チリの地中海性気候がクルミの栽培に適していること、政府の積極的な農業支援政策、国際市場への輸出拡大戦略が寄与しています。近年の主要な輸出先はアメリカ、ヨーロッパ、中国などで、これらの地域での健康志向がクルミの需要を後押ししていると考えられます。
ただし、データからは一部の課題も見て取れます。2019年や2022年に一時的な減少が見られますが、これは気候変動による異常気象や、地元農業への経済的・社会的な影響が関係している可能性があります。特に2020年以降の新型コロナウイルスの世界的なパンデミックは、労働力の確保や物流の遅延といった問題を引き起こし、クルミ生産にも影響を与えたと推測されます。
このような背景を踏まえると、未来への課題と対策が明確になります。まず、気候変動への適応策として灌漑技術の強化や耐乾燥性の高い品種の研究開発が挙げられます。また、パンデミックや国際的な輸送網の問題を受け、国内市場の開拓や地域間協力を通じた連携の強化も有効でしょう。さらに、持続可能な農業生産を実現するために、労働環境の改善や地域農家への支援が必要です。
地政学的な側面にも注意が必要です。チリの主要な輸出先であるアメリカや中国では、貿易摩擦や国際的な関係変化が輸出環境に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対しては、輸出先を分散させるだけでなく、中南米諸国などの地域市場を強化することが有効です。
結論として、チリのクルミ生産は近年飛躍的な発展を遂げ、高いポテンシャルを持っています。一方で、気候変動や国際関係、新型コロナのような疫病リスクに対応するため、持続可能かつ柔軟な農業政策の策定と実践が欠かせません。今後、政府や国際機関が資源を投入し、実効性のある支援を行うことで、チリはさらに発展を遂げることが期待されます。