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チリのイチゴ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、チリのイチゴ生産量は近年において不安定な推移を見せています。1983年には1,000トンという低生産量からスタートし、2007年には40,000トンのピークを迎えました。しかし、2010年代以降は全般的に減少傾向が続きました。特に2015年から2021年にかけては、顕著な生産量の落ち込みが見られます。2022年には28,375トンとやや回復の兆しを見せていますが、1990年代後半から2000年代初頭の右肩上がりの増加傾向とは異なり、現在は不確実性を伴う変動が続いています。

年度 生産量(トン)
2022年 28,375
2021年 24,004
2020年 26,699
2019年 28,236
2018年 24,909
2017年 24,509
2016年 25,545
2015年 26,989
2014年 35,239
2013年 36,692
2012年 39,219
2011年 37,360
2010年 38,296
2009年 38,647
2008年 41,000
2007年 40,000
2006年 33,000
2005年 28,000
2004年 25,200
2003年 25,000
2002年 24,000
2001年 22,500
2000年 21,000
1999年 20,000
1998年 28,000
1997年 26,000
1996年 15,800
1995年 15,500
1994年 14,500
1993年 12,000
1992年 9,000
1991年 11,000
1990年 14,950
1989年 12,000
1988年 7,000
1987年 6,500
1986年 6,000
1985年 4,000
1984年 2,000
1983年 1,000

チリにおけるイチゴ生産の歴史と推移を振り返ると、1980年代の1,000トンから始まった生産量は、1989年には12,000トン、1997年には26,000トンへと急激に成長しました。この成長は、チリの冷涼な気候や肥沃な土壌がイチゴ生産に適している点、さらに政府が輸出志向の農業政策を推進したことなどが大きく影響しています。特にイチゴの輸出品としての重要性は高く、アメリカ市場やヨーロッパ市場での需要に支えられた側面がありました。このおかげで2007年には40,000トンという最高値を記録しました。

しかし、2010年代に入ると状況は一変しました。生産量はピークから減少し、特に2015年から2021年にかけて顕著に落ち込んでいます。この背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、気候変動の影響が大きいと言えます。特にチリは、近年の異常気象により干ばつや極端な降水不足が頻発しており、灌漑農地に依存するイチゴ生産には深刻な影響を与えていると考えられます。また農業用水の確保が困難になり、生産に直接的な制約を与えています。

加えて、新型コロナウイルスの流行も間接的な影響を与えました。2020年以降のパンデミックによる労働力不足、物流の混乱、農業資材の輸送コストや高騰が、イチゴの栽培および輸送コストを引き上げ、結果として生産に支障を来した可能性があります。また、地域衝突や社会政策の不安定さも、チリ国内での農業盲点を露呈させた一因といえるでしょう。

一方で、2022年には28,375トンと再び増加し、一定の回復の兆しが見られます。この回復は政策的な介入の結果である可能性があります。具体的には、農業用水の最適配分や、農作物耐久性を高める技術導入の側面が寄与したのかもしれません。

今後の課題として、まず農業における気候変動への対応が挙げられます。特に水資源管理の強化が急務です。灌漑技術の向上や効率的な水利用システムの導入が必要です。また、生産者が気候変動へ対応するための支援を行う仕組みづくりも課題です。加えて、地域間協力を促進し、イチゴの国際市場へのアクセスを持続的に確保することも重要です。例えば、チリ国内で農家による協同組合を支援し、輸出志向型のインフラ整備を進めることで市場競争力を強化する戦略も存在します。

結論として、チリのイチゴ生産は、かつての伸び盛りの成長時代とは異なり、現在は環境、社会、経済の複合的な課題に直面しています。しかし、過去の実績や政府の介入、国際的な支援を活用することで、さらなる安定と回復が期待できます。具体的には、国や国際機関が農地管理や気候変動対策の政策を強化し、持続可能な農業を目指した取り組みを行う必要があります。