Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによれば、チリのエンドウ豆(生)生産量は、1960年代に急速な成長を見せ、1970年に40,000トンのピークを迎えました。しかしその後、長期間にわたって減少と停滞が続き、2023年の生産量は15,252トンと大幅に減少しています。このデータは、気候変動や農業政策、経済的背景がチリのエンドウ豆産業に与えた影響を反映しています。
チリのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 15,252 |
-4.08% ↓
|
2022年 | 15,900 |
0.44% ↑
|
2021年 | 15,830 |
1.88% ↑
|
2020年 | 15,539 |
4.96% ↑
|
2019年 | 14,804 |
-3.57% ↓
|
2018年 | 15,352 |
-4.4% ↓
|
2017年 | 16,059 |
-0.6% ↓
|
2016年 | 16,155 |
49.78% ↑
|
2015年 | 10,786 |
-28.97% ↓
|
2014年 | 15,185 |
-17.04% ↓
|
2013年 | 18,305 |
-8.48% ↓
|
2012年 | 20,000 |
11.11% ↑
|
2011年 | 18,000 |
20% ↑
|
2010年 | 15,000 |
-25.14% ↓
|
2009年 | 20,038 |
0.19% ↑
|
2008年 | 20,000 |
17.65% ↑
|
2007年 | 17,000 |
-29.17% ↓
|
2006年 | 24,000 |
-11.11% ↓
|
2005年 | 27,000 |
-10% ↓
|
2004年 | 30,000 |
-2.28% ↓
|
2003年 | 30,700 |
0.66% ↑
|
2002年 | 30,500 |
-0.37% ↓
|
2001年 | 30,615 |
-1.24% ↓
|
2000年 | 31,000 |
3.33% ↑
|
1999年 | 30,000 |
-2.95% ↓
|
1998年 | 30,913 |
23.65% ↑
|
1997年 | 25,000 |
-19.35% ↓
|
1996年 | 31,000 |
-15.07% ↓
|
1995年 | 36,500 |
0.4% ↑
|
1994年 | 36,355 |
0.04% ↑
|
1993年 | 36,340 |
0.92% ↑
|
1992年 | 36,010 |
10.99% ↑
|
1991年 | 32,445 |
-10.68% ↓
|
1990年 | 36,325 |
17.5% ↑
|
1989年 | 30,915 |
5.33% ↑
|
1988年 | 29,350 |
40.53% ↑
|
1987年 | 20,885 |
4.43% ↑
|
1986年 | 20,000 |
10.5% ↑
|
1985年 | 18,100 |
-19.56% ↓
|
1984年 | 22,500 |
-2.17% ↓
|
1983年 | 23,000 | - |
1982年 | 23,000 |
6.98% ↑
|
1981年 | 21,500 |
7.5% ↑
|
1980年 | 20,000 |
-2.44% ↓
|
1979年 | 20,500 |
-13.94% ↓
|
1978年 | 23,820 |
-11.19% ↓
|
1977年 | 26,820 |
-1.76% ↓
|
1976年 | 27,300 |
-9.9% ↓
|
1975年 | 30,300 |
1% ↑
|
1974年 | 30,000 | - |
1973年 | 30,000 |
-14.29% ↓
|
1972年 | 35,000 |
-2.78% ↓
|
1971年 | 36,000 |
-10% ↓
|
1970年 | 40,000 |
5.26% ↑
|
1969年 | 38,000 |
8.57% ↑
|
1968年 | 35,000 |
16.67% ↑
|
1967年 | 30,000 |
20% ↑
|
1966年 | 25,000 |
8.85% ↑
|
1965年 | 22,968 |
4.4% ↑
|
1964年 | 22,000 |
-15.38% ↓
|
1963年 | 26,000 |
44.44% ↑
|
1962年 | 18,000 |
12.5% ↑
|
1961年 | 16,000 | - |
チリのエンドウ豆(生)の生産量推移を見ると、初期の1961年から1970年の間で、生産量は16,000トンから40,000トンまで増加し、10年間で約2.5倍に成長しました。この成長は、農地拡大や農業技術の発展によるものと考えられます。しかし、その後の1971年以降は不安定な動きを見せ、1980年代には再び減少傾向となりました。例えば1985年には18,100トンまで落ち込んでおり、主要輸出産業の一部として期待されたエンドウ豆の生産効率が当時低下した可能性が示唆されます。
1990年代にかけて一時的な回復が見られたものの、2000年代初頭以降は再び停滞が続いています。2007年には17,000トンまで減少し、その後の回復は小幅に留まっています。2015年には10,786トンと記録的な低水準に達しましたが、これは気候変動や国内外の需要減少が影響したものと推測されます。その後、2016年以降も生産量は15,000トン前後で推移しており、安定的ながらも低い水準での生産が続いている現状です。
また国際的な視点で見ると、エンドウ豆の主要生産国であるインドや中国、アメリカなどと比較してチリの生産規模は非常に小さく、その輸出競争力は限られています。その背景には、チリのボトムラインに位置する高い生産コストや、農家の農地転用などの問題が影響していると考えられます。
さらに地政学的な背景として、チリは南米の中でも地理的な多様性に恵まれる一方で、エルニーニョ現象や干ばつといった気象変動に晒されています。特に2000年代以降の気候変動は農地の乾燥化を招き、エンドウ豆の栽培に不利な条件を生んでいます。これに加えて、競争の激化や、他品種へのシフトが農家の選択を制約している状況もあります。
この現状を打開するための具体的な提案としては、気候変動に強いエンドウ豆の新しい品種の開発や栽培方法の改良など、農業技術の革新が重要です。また、灌漑設備の拡充や政府支援による生産コストの削減、さらには輸出市場の多様化を図るべきでしょう。特に、近年注目されつつある持続可能な農業の推進により、チリ産エンドウ豆の価値を高めることが有望とされます。国際的な農業協力や資金援助を活用し、生産者と市場を結ぶ仕組みを整えることが今後の課題と言えます。
結論として、このデータは単なる数値の推移ではなく、チリという国の農業の変遷と地域的な課題を物語っています。国や国際機関が連携し、気候変動リスクや貿易の課題に柔軟に対応することで、エンドウ豆栽培の将来に新たな可能性を生み出すことができるでしょう。