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チリのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、チリのトウモロコシ生産量は1961年の162,810トンから増加傾向を経て、1990年代半ば以降には総生産量が85万~94万トンの範囲で安定する時期が見られました。その後、2000年を超えてからは100万トンを突破し、一時は2015年に1,538,755トンと過去最大の値を記録しました。しかし、近年は減少傾向にあり、特に2020年以降、生産量が急激に落ち込んでいます。2022年の生産量は608,006トンと、この10年間で最も低い値を示しています。

年度 生産量(トン)
2022年 608,006
2021年 793,822
2020年 592,988
2019年 973,178
2018年 1,110,608
2017年 1,062,589
2016年 1,174,487
2015年 1,538,755
2014年 1,186,127
2013年 1,518,545
2012年 1,493,292
2011年 1,437,561
2010年 1,357,921
2009年 1,345,649
2008年 1,365,408
2007年 1,122,648
2006年 1,381,894
2005年 1,507,766
2004年 1,320,606
2003年 1,189,729
2002年 924,211
2001年 778,498
2000年 652,019
1999年 624,037
1998年 943,276
1997年 880,735
1996年 931,572
1995年 942,223
1994年 937,250
1993年 899,496
1992年 911,056
1991年 835,723
1990年 823,150
1989年 938,464
1988年 660,855
1987年 617,244
1986年 721,289
1985年 771,776
1984年 721,390
1983年 511,550
1982年 425,000
1981年 518,150
1980年 405,190
1979年 489,270
1978年 256,880
1977年 355,320
1976年 247,950
1975年 328,987
1974年 366,300
1973年 294,016
1972年 282,990
1971年 258,300
1970年 239,052
1969年 153,792
1968年 320,810
1967年 362,200
1966年 285,327
1965年 260,000
1964年 241,520
1963年 176,020
1962年 180,760
1961年 162,810

チリのトウモロコシ生産量は、1960年代から段階的な増加を見せ、特に1980年代の中盤以降急速な成長を遂げ、過去の生産体制とは一線を画していることが分かります。これは、農業技術の向上や灌漑システムの充実、農地の集約化など、農業インフラの基盤整備が進んだためと考えられます。また、トウモロコシは現地の食文化や農業経済に深く結びついており、国内消費のみならず、家畜飼料や輸出用作物として重要な役割を果たしています。

2000年代に入り、生産量はさらに拡大し、2004年に1,320,606トン、2015年には1,538,755トンと過去最高を記録しました。こうした成長は、グローバル市場における飼料需要の増加や、トウモロコシを用いたバイオ燃料の需要が影響している可能性が指摘されています。このような外部需要の増加により、チリ国内においてもトウモロコシの栽培規模が拡大しました。

しかしながら、2015年以降、生産量は波を打つような変動を見せています。特に2020年以降は、気候変動の影響や新型コロナウイルスによるパンデミックが重なり問題が顕在化しました。この期間の生産量は急激に減少し、2020年の592,988トンおよび2022年の608,006トンは、過去60年間の記録と比較しても顕著な低水準に留まっています。こうした変動は、干ばつや異常気象の頻発、農業従事者の労働力不足、農業資材の高騰などが原因の一つとされています。加えて、地政学的な背景も無視できません。ウクライナ紛争が国際的な食料および肥料価格に影響を与え、これがさらなる負担となった可能性があります。

日本やアメリカ、インドなどと比較すると、チリのトウモロコシ生産量は全体的に少ない水準ですが、その一方で農地面積に対する生産効率は高いと言えます。他国では、より広大な農地を持つ場合が多く、総生産量で優位に立っています。しかし、チリのような狭い土地で効率よく生産を行う手法には注目すべき点があります。

これらの課題に対処するためには、次のような具体的な対策が必要です。第一に、気候変動への適応能力を高めるための品種開発や天候に依存しない栽培技術の導入が重要です。例えば、干ばつ耐性のある種子の普及や、スマート農業技術の推進が挙げられます。第二に、地域間での協力関係を強化し、トウモロコシの輸出入を通じて食料供給を補完する体制を構築することが求められます。さらに、国内農業従事者の教育と支援を拡充し、人手不足に対応するとともに、生産性を向上させる体験的学びを促進する必要があります。

最後に、チリのトウモロコシ生産量の減少は、国内外の政策・市場に深い影響を及ぼす可能性があります。この問題を放置すると、国内供給の不安定化や輸出収益の減少といった経済的影響が拡大するでしょう。国際機関や隣接する国と協力し、食料安全保障の枠組みを強化することが急務です。チリ政府をはじめとする関係各所が戦略的に取り組むことで、未来に向けた持続可能な食料生産の基盤を構築することが可能です。