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チリの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、チリの桃(モモ)・ネクタリン生産量は1961年に60,000トンから始まり、1990年代にかけて急速に増加し2006年には345,000トンに達しました。その後も概ね高い生産量を維持していましたが、2010年代後半以降は減少に転じ、2023年には304,036トンとなっています。これらのデータは、チリが桃・ネクタリン生産において安定した農業基盤を有している一方で、気候変動や国際市場の影響、内外的課題に直面している現状を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 304,036
-2.84% ↓
2022年 312,907
1.29% ↑
2021年 308,917
-0.17% ↓
2020年 309,445
-7.18% ↓
2019年 333,391
1.01% ↑
2018年 330,065
-1.86% ↓
2017年 336,307
-1.94% ↓
2016年 342,946
1.29% ↑
2015年 338,567
-5.06% ↓
2014年 356,611
-3.91% ↓
2013年 371,111
1.22% ↑
2012年 366,638
1.43% ↑
2011年 361,469
1.59% ↑
2010年 355,814
-8.3% ↓
2009年 388,000
4.3% ↑
2008年 372,000
0.54% ↑
2007年 370,000
7.25% ↑
2006年 345,000
10.93% ↑
2005年 311,000 -
2004年 311,000
2.3% ↑
2003年 304,000
3.75% ↑
2002年 293,000
1.03% ↑
2001年 290,000
11.54% ↑
2000年 260,000
2.93% ↑
1999年 252,600
22.44% ↑
1998年 206,300
-14.96% ↓
1997年 242,600
-13.36% ↓
1996年 280,000
1.82% ↑
1995年 275,000
6.59% ↑
1994年 258,000
8.86% ↑
1993年 237,000
6.28% ↑
1992年 223,000
11.5% ↑
1991年 200,000
2.04% ↑
1990年 196,000
9.87% ↑
1989年 178,400
6.57% ↑
1988年 167,400
13.88% ↑
1987年 147,000
-1.28% ↓
1986年 148,900
4.05% ↑
1985年 143,100
0.77% ↑
1984年 142,000
2.9% ↑
1983年 138,000
7.81% ↑
1982年 128,000
27.11% ↑
1981年 100,700
-3.73% ↓
1980年 104,600
-1.88% ↓
1979年 106,600
-1.11% ↓
1978年 107,800
-10.91% ↓
1977年 121,000
-1.06% ↓
1976年 122,300
-16.12% ↓
1975年 145,800
2.32% ↑
1974年 142,500
28.73% ↑
1973年 110,700
10.7% ↑
1972年 100,000
3.09% ↑
1971年 97,000
6.59% ↑
1970年 91,000
5.81% ↑
1969年 86,000
8.86% ↑
1968年 79,000 -
1967年 79,000
8.22% ↑
1966年 73,000
4.29% ↑
1965年 70,000
9.38% ↑
1964年 64,000
1.59% ↑
1963年 63,000
3.28% ↑
1962年 61,000
1.67% ↑
1961年 60,000 -

チリは、その気候条件と豊かな農業資源を活用し、長年にわたり桃・ネクタリン生産を着実に拡大してきました。特に1960年代初頭から1990年代前半にかけて、生産量は継続的に増加し、1990年には196,000トンと、1961年から約3.2倍に成長しました。この生産の拡大は、国際市場向けの輸出体制が整えられ、農業技術の向上が進んだことが背景にあります。また、チリは南半球であるため、その収穫期が北半球の主要市場とずれている点が競争優位性につながりました。

しかし、データが示すように、特に2006年以降から一定の安定段階に入った後、2010年代後半以降に減少傾向が見られるようになっています。この動向には複数の要因が絡んでいます。まず第一に、気候変動による異常気象の増加は収穫量に直接的な影響を与えています。例えば、繰り返される干ばつや予測不能な降雨パターンは、果物の質と生産性を低下させる要因となっています。さらに、労働力不足もチリ農業全体を圧迫しており、農作業の最適化が求められる現状です。

世界市場の観点では、競争がますます激化していることがチリ産桃・ネクタリンの生産と輸出に影響を与えています。特に中国やアメリカなどの大規模生産地が市場占有率を高めているため、チリの輸出における価格競争力の維持が課題となっています。また、国内市場においても、消費者の購買行動の多様化と輸入果実の増加が影響を及ぼしています。

過去のデータを見ると、生産量が急激に減少した期間(例えば1975年から1980年代初期、1997年から1998年)は、経済的および地政学的な要因も背後にありました。それらは農業生産だけでなく、輸出体制や国際価格の変動にも関連しています。同様に、近年のコロナウイルス感染症や物流問題も、輸出指向型のチリ農業に大きな支障を来たしました。

今後、この分野の回復と持続可能性を目指すためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動への対応として、灌漑技術の向上や耐乾性品種の開発を促進することが求められます。加えて、農業労働力不足に対応するため、機械化とデジタル農業技術の導入を視野に入れた施策が必要です。また、国際市場での競争優位性を維持するため、ブランド強化や有機農産物・高付加価値商品の開発を進めることが有効です。

国際協力も重要であり、特に周辺諸国との農業技術の共有や共同輸出戦略などの地域的な枠組みを構築することで、より大きな成果を上げることができるでしょう。さらに、FAOやその他の国際機関と連携し、農業生産における持続可能性を追求する政策形成も不可欠です。

結論として、チリの桃・ネクタリン生産は過去数十年の間に顕著に発展してきましたが、現在、複合的な課題に直面している段階にあります。しかし、持続可能な農業政策と国際市場に適応した戦略的な対応を進めることで、この重要な産業セクターを維持し、さらなる発展につなげる可能性があります。国際的なパートナーシップを模索しながら、付加価値創出と環境対応を両立する新たなステージを目指すべき段階にあると言えます。