Food and Agriculture Organization(FAO)が発表した最新データによると、チリのキウイフルーツ生産量は、1980年代から1990年代にかけて急激な成長を遂げた後、2000年代以降は変動を見せつつも安定。とりわけ2009年から2013年にかけてはピークに達したものの、それ以降減少傾向が続いています。2023年の生産量は116,029トンで、ピーク時の2012年の281,389トンに比べて大幅に減少しています。この動向は、気候変動の影響や、主要農業輸出国間の競争激化など、多岐にわたる要因と関連している可能性があります。
チリのキウイフルーツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 116,029 |
1.31% ↑
|
2022年 | 114,534 |
-11.32% ↓
|
2021年 | 129,152 |
-8.23% ↓
|
2020年 | 140,737 |
0.23% ↑
|
2019年 | 140,408 |
-10.28% ↓
|
2018年 | 156,496 |
2.37% ↑
|
2017年 | 152,871 |
-0.39% ↓
|
2016年 | 153,471 |
-10.56% ↓
|
2015年 | 171,597 |
-14.2% ↓
|
2014年 | 200,000 |
-24.99% ↓
|
2013年 | 266,620 |
-5.25% ↓
|
2012年 | 281,389 |
9.2% ↑
|
2011年 | 257,687 |
5.35% ↑
|
2010年 | 244,602 |
7.75% ↑
|
2009年 | 227,000 |
23.1% ↑
|
2008年 | 184,397 |
-0.33% ↓
|
2007年 | 185,000 |
8.82% ↑
|
2006年 | 170,000 |
13.33% ↑
|
2005年 | 150,000 |
3.45% ↑
|
2004年 | 145,000 |
16% ↑
|
2003年 | 125,000 |
-2.34% ↓
|
2002年 | 128,000 |
-5.19% ↓
|
2001年 | 135,000 |
16.88% ↑
|
2000年 | 115,500 |
10% ↑
|
1999年 | 105,000 |
-28.08% ↓
|
1998年 | 146,000 |
4.29% ↑
|
1997年 | 140,000 |
-3.45% ↓
|
1996年 | 145,000 |
26.09% ↑
|
1995年 | 115,000 |
-0.43% ↓
|
1994年 | 115,500 |
21.58% ↑
|
1993年 | 95,000 |
11.76% ↑
|
1992年 | 85,000 |
54.55% ↑
|
1991年 | 55,000 |
47.45% ↑
|
1990年 | 37,300 |
45.14% ↑
|
1989年 | 25,700 |
202.89% ↑
|
1988年 | 8,485 |
187.63% ↑
|
1987年 | 2,950 |
130.47% ↑
|
1986年 | 1,280 |
184.44% ↑
|
1985年 | 450 |
125% ↑
|
1984年 | 200 |
471.43% ↑
|
1983年 | 35 |
250% ↑
|
1982年 | 10 | - |
チリのキウイフルーツ生産量の推移を見ると、初期段階である1980年代には生産量が急増しました。1982年にはわずか10トンだった生産量が1989年には25,700トンに達し、1990年代にはさらに拡大し続けました。この成長の背景には、世界市場でのキウイフルーツ需要の増加や、ニュージーランドを手本にした技術導入、農業政策の推進が挙げられます。とくにチリは輸出志向の農業を進めており、キウイフルーツはその重要な作物の一つとなりました。
2000年代に入ると、チリのキウイ生産は12万〜18万トンで安定し始め、2009年から2012年には20万トンを大きく上回るピークを迎えました。この成功の要因には、新しい栽培技術の普及や新規市場へのアクセス拡大が考えられます。この時期、チリのキウイフルーツは、EUをはじめアメリカ、中国、さらには日本への輸出に力を入れました。しかしながら、チリ産のキウイフルーツはニュージーランド産やイタリア産などの市場競争に直面していました。
2013年以降、チリの生産量は減少傾向にあります。たとえば、2014年以降は200,000トンを下回り、2023年には116,029トンとピーク時の半分以下となっています。この減少は、いくつかの要因によるものと考えられます。第一に、地球温暖化や異常気象がキウイフルーツの栽培環境に影響を及ぼした可能性があります。チリは南半球に位置し、農業は強い季節性と気象条件に左右されますが、乾燥化や水資源の不足が深刻な問題となっています。第二に、新型コロナウイルスのパンデミックによる物流の遅延や労働力不足が、生産および輸出に影響を与えたことが推察されます。加えて、キウイモザイクウイルスなどの植物病害の発生も一因として挙げられています。
さらに貿易の側面では、中国やインドなど急成長を遂げる市場での競争が激化しており、チリは他国産品に比べて競争力を維持するのが困難な状況にあります。ニュージーランドのゼスプリブランドが高品質をうたう中で、チリ産キウイの価格やブランドイメージが競争において不利な点も指摘されています。
今後、チリがキウイ産業を持続的に発展させるためには、いくつかの対策が必要です。まず第一に、気候変動への対応として、灌漑インフラの整備や適応型栽培技術の導入が挙げられます。水資源の効率的な利用や、生産性を向上させるための品種改良が重要です。第二に、輸出市場の多角化を進めるべきです。これにより、一部市場への依存を軽減し、リスク分散が図れます。同時に、品質保証システムの強化と国際認証の取得により、消費者やバイヤーの信頼を高める必要があります。
また政府や国際機関が連携し、農業従事者への教育や資金援助を強化することが求められます。特に中小生産者が競争に耐えるためには、生産コストの削減やマーケティング支援が決定的です。さらに、チリが他国と連携してキウイフルーツに関する国際的なプロモーション活動を展開することも有効です。
結論として、チリのキウイフルーツ生産量の歴史的な推移は、その発展力と課題を明確に浮き彫りにしています。生産量の減少傾向は気候変動や国際市場の競争を反映していますが、政府や業界の構造改革と施策次第で再成長の可能性は十分にあります。チリが持つ地理的優位性と農業技術を最大限に活用し、持続可能な生産と輸出の仕組みを構築することが必要です。そして、国際協力を通じて強固な市場地位を確立すれば、将来的にも世界キウイフルーツ市場の重要なプレーヤーとして存在感を示すことができるでしょう。