国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、チリの馬飼養数は1961年に524,500頭だったのに対して、2022年には300,668頭と長期的に減少傾向を示しています。特に1990年には直前の年から急激な減少があり、その後も一時的な増加を見せつつ概ね減少が続いています。
チリの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 300,668 |
2021年 | 301,552 |
2020年 | 302,436 |
2019年 | 303,455 |
2018年 | 293,516 |
2017年 | 300,000 |
2016年 | 310,000 |
2015年 | 310,903 |
2014年 | 310,700 |
2013年 | 310,500 |
2012年 | 310,500 |
2011年 | 309,700 |
2010年 | 307,560 |
2009年 | 308,300 |
2008年 | 323,000 |
2007年 | 304,252 |
2006年 | 350,000 |
2005年 | 335,000 |
2004年 | 350,000 |
2003年 | 365,000 |
2002年 | 400,000 |
2001年 | 445,000 |
2000年 | 430,000 |
1999年 | 435,000 |
1998年 | 445,000 |
1997年 | 439,058 |
1996年 | 345,141 |
1995年 | 330,776 |
1994年 | 348,338 |
1993年 | 334,710 |
1992年 | 331,010 |
1991年 | 338,790 |
1990年 | 345,400 |
1989年 | 500,000 |
1988年 | 490,000 |
1987年 | 490,000 |
1986年 | 490,000 |
1985年 | 490,000 |
1984年 | 480,000 |
1983年 | 470,000 |
1982年 | 450,000 |
1981年 | 450,000 |
1980年 | 450,000 |
1979年 | 450,000 |
1978年 | 450,000 |
1977年 | 450,000 |
1976年 | 450,000 |
1975年 | 450,000 |
1974年 | 460,000 |
1973年 | 470,000 |
1972年 | 480,000 |
1971年 | 475,000 |
1970年 | 478,000 |
1969年 | 480,000 |
1968年 | 481,000 |
1967年 | 482,000 |
1966年 | 480,000 |
1965年 | 478,303 |
1964年 | 494,300 |
1963年 | 502,100 |
1962年 | 516,600 |
1961年 | 524,500 |
チリにおける馬飼養数の推移を見ると、1960年代から1970年代までは緩やかな減少が続き、1970年代後半から1980年代にかけてはおよそ450,000頭前後で安定していました。しかし、1990年を境に急激な減少がみられ、2022年には約300,000頭にまで減少しています。この減少傾向は、農業形態の変化や都市化の進行、さらに機械化による馬の役割の希薄化が主な要因として挙げられます。
特に1990年に約500,000頭から345,400頭へと大幅に減少した背景には、政策変更や経済的要因が絡んでいた可能性があります。1970年代後半から1980年代にかけての軍事独裁政権期に行われた土地改革や経済システムの変革が馬の飼養状況に影響を与えていたとも推察されます。同時に、輸送や農作業手段としての馬の需要が低下し、馬文化の衰退にもつながったと考えられます。
1997年以降、増加傾向を一部に示した年があるものの、2003年以降再び減少が進みました。ここには、グローバル市場での農牧業の自動化や効率化、牧畜資源への投資不足が反映されている可能性があります。また、2020年前後には新型コロナウイルス感染症の影響も見逃せません。パンデミックによる経済的ダメージにより、馬の飼養コストが重荷となる農家が増加したことで、飼養頭数の減少に拍車がかかった可能性があります。
現状のデータからは、飼養数の回復を促すにはいくつかの課題があることが明らかです。まず、チリ特有の文化的資産である馬関連の伝統活動、例えばロデオや特定種の馬育成プログラムを通じて、国内外での需要を喚起する施策が考えられます。また、牧畜業の近代化と並行し、小規模農家の馬飼養への経済的支援が必要です。政府や地域共同体が助成金制度や奨励金を設けることで、馬の飼養が採算の取れる選択肢となる可能性があります。
さらに、地政学的な背景も考慮すべきです。チリは地形的に細長い国土を特徴とし、複数の異なる気候区分を持っています。この多様な環境が牧畜や馬飼養の実施に影響を与えると同時に、気候変動の影響も受けやすい状況です。今後、異常気象や水資源の変動が進む中で、馬飼養を維持・促進するためには、地域ごとに適切な飼養支援モデルを構築する必要があるでしょう。
また、世界的な視点から見ても、主要国では工業化が進む中でも、伝統的な畜産業や馬文化を保護するための政策が見られます。例えば、フランスでは伝統的な馬術文化の保護の一環として馬飼養業者への補助が行われており、他の国々ではエコツーリズムや乗馬産業を活用して馬の需要を回復させています。チリにおいても、文化的観光資源としての馬の重要性を再認識し、地域発展に結び付ける総合的な政策が求められるのではないでしょうか。
総括すると、チリにおける馬飼養数は、1960年代から減少傾向が見られる一方で、こうした課題を克服し持続可能な牧畜と文化形成を目指す努力が功を奏することで、さらなる回復の可能性が考えられます。国際的な成功例を参考にしつつ、地域特性に即した革新的で現実的なアプローチを提案することが求められるでしょう。