国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表したデータによると、チリの小麦生産量は1961年以来、大きな変動を見せています。過去最小は1983年の585,950トン、最大は2004年の1,921,652トンです。しかし、2022年には1,106,926トンと再び減少しており、近年の傾向としては減少傾向が見られます。この動きは、気候変動、土地利用の変化、農業技術の進展などが影響している可能性があります。
チリの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 1,106,926 |
2021年 | 1,353,608 |
2020年 | 1,230,988 |
2019年 | 1,399,919 |
2018年 | 1,469,003 |
2017年 | 1,349,492 |
2016年 | 1,731,935 |
2015年 | 1,482,310 |
2014年 | 1,358,128 |
2013年 | 1,474,663 |
2012年 | 1,213,101 |
2011年 | 1,575,822 |
2010年 | 1,523,921 |
2009年 | 1,145,290 |
2008年 | 1,237,691 |
2007年 | 1,095,872 |
2006年 | 1,403,689 |
2005年 | 1,851,940 |
2004年 | 1,921,652 |
2003年 | 1,797,080 |
2002年 | 1,820,387 |
2001年 | 1,780,160 |
2000年 | 1,492,710 |
1999年 | 1,196,626 |
1998年 | 1,682,040 |
1997年 | 1,676,887 |
1996年 | 1,227,148 |
1995年 | 1,383,861 |
1994年 | 1,271,200 |
1993年 | 1,323,600 |
1992年 | 1,556,588 |
1991年 | 1,588,677 |
1990年 | 1,718,214 |
1989年 | 1,765,525 |
1988年 | 1,734,199 |
1987年 | 1,874,117 |
1986年 | 1,625,809 |
1985年 | 1,164,690 |
1984年 | 988,280 |
1983年 | 585,950 |
1982年 | 650,000 |
1981年 | 685,970 |
1980年 | 966,000 |
1979年 | 995,140 |
1978年 | 892,620 |
1977年 | 1,219,320 |
1976年 | 866,470 |
1975年 | 1,003,070 |
1974年 | 939,050 |
1973年 | 746,684 |
1972年 | 1,195,135 |
1971年 | 1,367,900 |
1970年 | 1,306,900 |
1969年 | 1,214,200 |
1968年 | 1,219,700 |
1967年 | 1,203,500 |
1966年 | 1,346,410 |
1965年 | 1,115,834 |
1964年 | 1,158,880 |
1963年 | 1,135,610 |
1962年 | 969,750 |
1961年 | 1,030,560 |
チリの小麦生産量のデータを分析すると、特定の時期において生産量が顕著に変動していることが確認できます。例えば、1973年には746,684トンと急激に生産量が低下しましたが、1980年代後半には1,800,000トンを超える年も多く見られました。このような増減の背景には、国内の農業政策の変化、経済の影響、そして天候条件の変動が反映されています。
近年を見てみると、2016年には1,731,935トンを記録したものの、2022年の1,106,926トンに至るまで、生産量は減少傾向にあります。この減少は主に以下の要因に関連していると考えられます。一つ目は気候変動の影響です。大規模な乾燥化や異常気象が、農地の生産性を低下させる要因となっていることが指摘されています。二つ目は、農業技術と資源の配分が他の作物にシフトしている可能性がある点です。小麦以外の高収益作物や輸出用作物への転換が一部進んでいると見られます。また、土地の利用効率が進化していない場合、耕作の継続が困難になるケースもあります。
さらに過去数年を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の拡大も間接的に農業に影響を及ぼした可能性があります。国内外の物流の停滞や労働力の不足が、農業生産に悪影響を与えたことはその他多くの国でも報告されています。
一方で、技術革新や政策の見直しによって改善の兆しも見られるでしょう。例えば、ドローン技術やAIを活用したスマート農業は、土地の特性に基づいた効率的な耕作を可能にするため、チリにおいても普及させることが鍵となります。また、地元の品種改良や灌漑管理の改善に力を入れることで、気候変動に対応した生産体制を整えることが求められます。
国際的な視点で比較すると、チリの小麦生産量は同規模の国々であるニュージーランドやギリシャと近い生産量である一方、主な小麦生産国であるアメリカや中国、インドには大きな差があります。そのため、輸入への依存度が高まりやすい国であり、国内生産の安定化が経済や食料安全保障に直結した課題として浮き彫りになります。
これを受けて、今後チリは持続可能な農業政策の強化に取り組むべきです。国内農業の近代化を進め、小規模農家への追加的な支援策を設けることで生産基盤を強化することが重要です。同時に、気候変動の対策として、地域ごとの防災計画の強化や、農業用灌漑水の確保と効率化が必要です。国際機関とも連携し、新たな農業技術の導入や世界市場へのアクセスを強化することで、収益性と食料供給の向上を目指すべきです。
チリの小麦生産の推移は、国内外の複雑な条件に左右されつつも、適切な対策を講じることで安定的な供給を目指せる可能性を示しています。政策の舵取りによっては、気候リスクの中でも持続可能な生産体系を構築できる点が期待されます。