最新のFAO(国際連合食糧農業機関)のデータによると、チリのさくらんぼ生産量は2023年に465,348トンを記録しました。この数値は、1961年の3,000トンを遥かに上回り、約155倍の増加を見せています。1990年代から急速な生産量の増加が見られ、特に2010年以降は目覚ましい成長を遂げています。2022年から2023年にかけても生産量が約5%増加し、この分野での成長がいまだ続いていることが示されています。
チリのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 465,348 |
5.03% ↑
|
2022年 | 443,067 |
14.78% ↑
|
2021年 | 386,000 |
39.86% ↑
|
2020年 | 276,000 |
2.22% ↑
|
2019年 | 270,000 |
18.42% ↑
|
2018年 | 228,000 |
90% ↑
|
2017年 | 120,000 |
-22.58% ↓
|
2016年 | 155,000 |
32.48% ↑
|
2015年 | 117,000 |
2.63% ↑
|
2014年 | 114,000 |
14% ↑
|
2013年 | 100,000 |
11.11% ↑
|
2012年 | 90,000 |
4.9% ↑
|
2011年 | 85,793 |
42.14% ↑
|
2010年 | 60,356 |
46.87% ↑
|
2009年 | 41,095 |
-41.6% ↓
|
2008年 | 70,364 |
56.36% ↑
|
2007年 | 45,000 |
9.76% ↑
|
2006年 | 41,000 |
28.13% ↑
|
2005年 | 32,000 | - |
2004年 | 32,000 |
8.47% ↑
|
2003年 | 29,500 |
1.72% ↑
|
2002年 | 29,000 |
3.76% ↑
|
2001年 | 27,950 |
-9.98% ↓
|
2000年 | 31,050 |
15% ↑
|
1999年 | 27,000 |
50% ↑
|
1998年 | 18,000 |
-21.74% ↓
|
1997年 | 23,000 |
4.55% ↑
|
1996年 | 22,000 |
10% ↑
|
1995年 | 20,000 |
11.11% ↑
|
1994年 | 18,000 |
12.5% ↑
|
1993年 | 16,000 |
23.08% ↑
|
1992年 | 13,000 |
-10.34% ↓
|
1991年 | 14,500 |
5.84% ↑
|
1990年 | 13,700 |
8.73% ↑
|
1989年 | 12,600 |
19.43% ↑
|
1988年 | 10,550 |
68.8% ↑
|
1987年 | 6,250 |
-34.21% ↓
|
1986年 | 9,500 |
6.74% ↑
|
1985年 | 8,900 |
13.38% ↑
|
1984年 | 7,850 |
12.14% ↑
|
1983年 | 7,000 |
10.24% ↑
|
1982年 | 6,350 |
7.45% ↑
|
1981年 | 5,910 |
11.45% ↑
|
1980年 | 5,303 |
-2.93% ↓
|
1979年 | 5,463 |
-5.81% ↓
|
1978年 | 5,800 |
23.22% ↑
|
1977年 | 4,707 | - |
1976年 | 4,707 | - |
1975年 | 4,707 |
-4% ↓
|
1974年 | 4,903 |
58.16% ↑
|
1973年 | 3,100 |
-8.82% ↓
|
1972年 | 3,400 | - |
1971年 | 3,400 | - |
1970年 | 3,400 |
-2.86% ↓
|
1969年 | 3,500 |
-2.78% ↓
|
1968年 | 3,600 |
-5.51% ↓
|
1967年 | 3,810 |
7.69% ↑
|
1966年 | 3,538 |
17.93% ↑
|
1965年 | 3,000 |
-25% ↓
|
1964年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
1963年 | 3,000 | - |
1962年 | 3,000 | - |
1961年 | 3,000 | - |
チリのさくらんぼ生産は、ここ数十年で飛躍的に拡大しました。データを見ると、1960年代から1990年代初頭までは年間1万トン前後の生産が続き、世界市場での影響は限定的なものでした。しかし、1990年代中盤から生産量は増加の兆しを見せ始め、2000年代には年間4万トンを超える規模に成長しました。さらに2010年以降は、国際市場の需要増加や技術革新の影響を受けて顕著な成長を遂げました。特に2020年代以降の生産量の増加は著しく、2023年には約46万5千トンに達しました。
この急成長の背景には、いくつかの要因があります。第一には、農業技術と品種の改良です。チリは先進的な農業技術を導入し、高品質かつ輸出に適したさくらんぼの生産を可能にしました。これにより、特にアジアを中心とした需要の高まりを捉えることができました。中国をはじめとするアジア諸国では、さくらんぼが高級果物として認識され、ギフト市場での需要が著しく拡大しました。第二に、チリの地理的条件が世界市場にとって大きな強みになっています。チリの収穫期は、北半球の主要生産国であるアメリカやヨーロッパとは逆の時期にあたり、世界市場での季節的ニーズを満たす「競争力のある供給拠点」としての役割を果たしています。
しかし、これだけの成功にもかかわらず、いくつかの課題が浮き彫りになっています。まず、天候や気候変動の影響が大きなリスク要因です。2017年には生産量が120,000トンに減少しており、これには天候不順が影響したと考えられます。また、新型コロナウイルス感染症の影響により生産・輸送体制が一部乱れた可能性もありましたが、2020年代以降は安定した成長を続けています。さらに、生産の増加に伴う環境負荷や水資源の問題も長期的な課題です。特にチリは水資源の確保が難しい地域も多く、増え続ける農業用水の需要が地域環境に悪影響を及ぼす懸念も指摘されています。
これらの課題に対し、いくつかの具体的な対策が必要です。例えば、持続可能な農業を実現するための灌漑効率の改善や雨水の有効活用といった技術の導入が挙げられます。また、地域間協力の枠組み作りや政府による補助金政策を通じて、適切な資源配分を目指すべきです。輸送の効率化や加工食品分野の強化も含め、生産チェーン全体で付加価値を高める努力が求められます。
最後に、地政学的な観点からも見逃せない点があります。チリのさくらんぼ輸出の大部分は中国市場に依存していますが、これには地政学的リスクも伴います。万が一の貿易摩擦や輸送ルートの制約が生じた際には、大きな影響を受ける可能性があります。そのため市場の多様化を促進し、アジア以外の市場、例えばヨーロッパやアメリカ市場への更なる拡大戦略を進めることが重要です。
これらの動向を踏まえると、チリのさくらんぼ産業はこれからも成長を続ける可能性が高い一方、環境負荷の軽減や市場多様化といった課題に向き合う時期に差し掛かっています。国際機関や政府の支援を受けながら、持続的かつ安定的な発展を目指していく必要があるでしょう。