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メキシコのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、メキシコのさくらんぼ生産量は長い期間にわたり大きな変動を見せており、1980年代から2023年に至るまで一貫した成長傾向にはないという特徴があります。1980年代にはおおむね200トン未満の生産量でしたが、1997年に大幅な増加を記録し1,109トンに達しました。その後は再び生産量が低迷する期間が続きつつも、2010年以降はある程度の回復基調が見られます。2022年には188トン、2023年には130トンと、近年はやや横ばいながらも一定の回復が感じられる数値でした。しかし、過去のピークに比べると依然として低水準が続いており、安定した生産体制の構築が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 130
-31.03% ↓
2022年 188
20.84% ↑
2021年 156
8.5% ↑
2020年 144
55.25% ↑
2019年 92
-47.99% ↓
2018年 178
146.05% ↑
2017年 72
-65.13% ↓
2016年 207
39.93% ↑
2015年 148
4.15% ↑
2014年 142
129.19% ↑
2013年 62
244.44% ↑
2012年 18
200% ↑
2010年 6
200% ↑
2001年 2
-99.55% ↓
2000年 442
-39.53% ↓
1999年 731
57.54% ↑
1998年 464
-58.16% ↓
1997年 1,109
235.05% ↑
1996年 331
65.5% ↑
1995年 200
27.91% ↑
1994年 156
53.29% ↑
1991年 102
1600% ↑
1990年 6
-76% ↓
1989年 25
-64.79% ↓
1988年 71
77.5% ↑
1987年 40
48.15% ↑
1986年 27
-87.56% ↓
1985年 217
-7.26% ↓
1984年 234
101.72% ↑
1983年 116
-27.5% ↓
1982年 160
-4.19% ↓
1981年 167
-9.73% ↓
1980年 185 -

メキシコのさくらんぼ生産量データから見えてくるのは、生産量の大きな変動と、それに関連する複雑な要因の影響です。1980年代から1990年代にかけて、初期の生産量は比較的低く、不安定な傾向が顕著でした。特に1986年から1990年にかけては、年によって生産量が20~30トン台にまで落ち込む厳しい状況に直面しました。その後、1997年に1,109トンという生産量の急上昇が見られた一方で、この安定は長続きせず、再び減退期に入りました。特に2001年には2トンという極めて低い数値まで減少しています。

この大きな変動要因の背景には、いくつかの自然的および人為的な要素が存在します。自然的要因としては、メキシコの気候や土壌条件がさくらんぼの生育に必ずしも最適ではないことが挙げられます。メキシコの多くの地域は乾燥かつ高温であるため、一定の地域条件下での栽培が必要となります。また、さくらんぼの栽培には、特定の冬の寒さが必要となるため、地域ごとに限られた土地での生産に依存することになります。

一方、人為的要因としては、地政学的リスクや農業政策の問題が指摘されています。メキシコでは過去数十年間、他の主要農産物、例えばトウモロコシやアボカドの栽培を優先してきたため、さくらんぼ生産に対する投資が相対的に低い水準にありました。また、1990年代から2000年代初頭にかけては、農業技術の不足や資本投資の遅れが生産量の不安定さに拍車をかけたと考えられます。

2010年以降、徐々に生産量が回復を見せる傾向が見られる理由の一つには、農業技術の改善や輸出市場の需要が挙げられます。特に近年、アジア市場への輸出や高品質果実への需要増がメキシコ国内でもさくらんぼ栽培の見直しを促しています。しかし、2019年以降の新型コロナウイルス感染症の影響は農業分野にも及び、労働力および物流の確保が困難となり、一部の年ではその影響が生産量に反映されている可能性があります。また、気候変動による極端な気象パターンも、栽培量の変動に影響を与えていると考えられます。

将来的にメキシコがさくらんぼの安定的な生産体制を確立するためには、複数の課題に対処する必要があります。まずは、さくらんぼ栽培に適した地域を厳密に選定し、その土地での効率的な栽培技術の導入を図る必要があります。これには、適切な灌漑システムの整備や害虫・病害の防止策が求められます。また、国際市場への輸出を意識した高品質な果実の育成を進めるため、生産者や農業従事者への適切な訓練プログラムを提供することが重要です。さらに、政策的には政府の補助金や融資を拡充し、農業への資本投資を促進する仕組みを導入することが考えられます。

さらに、国際的な枠組みを通じた協力も重要です。日本やアメリカなど、さくらんぼの消費や輸出入に積極的な国々と連携を深め、技術移転や市場構築を進めることが期待されます。たとえば、日本はさくらんぼの品質管理や栽培技術で国際的に高い評価を得ており、こうした国からのノウハウをメキシコで活用することが有効です。

結論として、メキシコのさくらんぼ生産量データは、安定性や持続可能性に課題が残る一方で、適切な対策を講じることで再び回復基調に乗せられる可能性を秘めています。これを実現するためには、地政学的リスクを考慮しつつ、農業部門における長期的な視点を持った政策の実施が欠かせません。国際市場での競争力を高めるため、気候変動への対応と併せて適切なビジョンを描いていくことが必要です。