国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、2023年のメキシコのラズベリー生産量は190,412トンに達しました。これは1986年のわずか6トンから見ると大幅な増加を示しています。特に2000年代初頭以降、生産量は急激に伸びており、2016年以降は毎年10万トンを超える高生産量が続いています。この劇的な成長は、国内外の需要増加や栽培技術の向上、農業輸出の拡大が背景にあります。
メキシコのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 190,412 |
9.59% ↑
|
2022年 | 173,742 |
4.87% ↑
|
2021年 | 165,677 |
13.21% ↑
|
2020年 | 146,350 |
13.58% ↑
|
2019年 | 128,848 |
-1.03% ↓
|
2018年 | 130,187 |
8.32% ↑
|
2017年 | 120,184 |
6.68% ↑
|
2016年 | 112,661 |
72.3% ↑
|
2015年 | 65,388 |
83.53% ↑
|
2014年 | 35,627 |
17.15% ↑
|
2013年 | 30,411 |
78.79% ↑
|
2012年 | 17,009 |
-20.77% ↓
|
2011年 | 21,468 |
49.68% ↑
|
2010年 | 14,343 |
5.78% ↑
|
2009年 | 13,559 |
-7.92% ↓
|
2008年 | 14,726 |
28.31% ↑
|
2007年 | 11,477 |
22.74% ↑
|
2006年 | 9,351 |
85.39% ↑
|
2005年 | 5,044 |
65.65% ↑
|
2004年 | 3,045 |
35.39% ↑
|
2003年 | 2,249 |
9.92% ↑
|
2002年 | 2,046 |
80.58% ↑
|
2001年 | 1,133 |
-0.44% ↓
|
2000年 | 1,138 |
-18.48% ↓
|
1999年 | 1,396 |
-14.09% ↓
|
1998年 | 1,625 |
35.76% ↑
|
1997年 | 1,197 |
16.89% ↑
|
1996年 | 1,024 |
161.89% ↑
|
1995年 | 391 |
435.62% ↑
|
1994年 | 73 |
563.64% ↑
|
1993年 | 11 |
-8.33% ↓
|
1992年 | 12 |
300% ↑
|
1991年 | 3 |
50% ↑
|
1990年 | 2 |
-60% ↓
|
1989年 | 5 | - |
1988年 | 5 |
25% ↑
|
1987年 | 4 |
-33.33% ↓
|
1986年 | 6 | - |
メキシコのラズベリー生産は、ここ数十年で驚異的な成長を遂げました。1980年代から1990年代初期までは、数十トン程度の小規模な生産に過ぎませんでした。しかし1990年台半ば以降、急速な増加が見られ、特に2010年代以降では1万トン単位から10万トン単位への変化が顕著です。この成長の理由として、まず北米市場を中心とした世界的なラズベリー需要の増加が挙げられます。アメリカをはじめとする主要輸入国では、ラズベリーが健康志向の高まりとともにスーパーフードとして注目を浴び、それが強い輸出動機となりました。
次に、生産面での技術的な進歩も見逃せません。特に2000年代後半以降、品種改良や気候に適応した栽培方法の開発、灌漑設備の整備といった農業技術の革新が進み、生産効率が高まった結果、生産量の劇的な向上を実現しました。また、メキシコは適度な気候条件や労働力の豊富さといった地理的・経済的な強みも持っており、これが安定した生産基盤を提供しています。
さらに、この地域の地政学的状況も重要な要因となっています。アメリカ市場への近接性が輸出の優位性を生み、国際貿易の枠組みにおいて戦略的な地位を確立しています。とりわけ、アメリカとの貿易協定がこれを支えています。一方で、自然災害や疫病のリスクが、農業生産に大きな影響を与える可能性がある点も無視できません。例えば、気候変動に伴う水不足や高温は、農業生産にとって深刻なリスクとなり得ます。
メキシコのラズベリー生産には、いくつかの重要な課題が存在しています。その一つが、資源の持続可能な利用の確保です。ラズベリー栽培は水を大量に使用するため、地域の水資源管理が不可欠です。また、栽培面積が広がる一方で、労働環境の改善や賃金の向上といった社会的な課題も見過ごすことはできません。さらに、新型コロナウイルス感染症が一時的に労働力の確保や物流に影響を与えたことからも明らかなように、パンデミックやその他の外的要因に対するリスク管理が求められます。
今後に向けて、メキシコのラズベリー生産を持続可能に発展させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。例えば、水資源の管理を改善するための先進技術の導入や、土壌の健全性を保つための農業プラクティスの見直しが挙げられます。また、輸出相手国との関係を強化し、貿易ルートを多様化することで市場依存のリスクを軽減することも重要です。さらに、労働条件の向上や農家支援プログラムを通じて、農業従事者が安心して働ける環境を整えることも欠かせません。
結論として、メキシコのラズベリー生産の成功は、農業技術の進歩や市場への適応力の高さによるものです。しかし、これを持続させるためには資源管理や社会的課題への対応が必要です。国際機関や政府、そして民間企業が連携しこれらの課題に取り組むことで、メキシコは世界の主要なラズベリー生産国としての地位をさらに強化できるでしょう。そして、持続可能な農業のモデルケースとして、他国への良い影響をもたらす可能性も秘めています。