国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、メキシコのブルーベリー生産量は1993年のわずか100トンから、2022年には67,305トンに急成長しています。この増加は30年という期間で約670倍という著しい伸びを示しており、とくに2009年以降、急速な生産拡大が見られます。生産量が飛躍した背景には、輸出市場の拡大や国内農業技術の向上、適切な地政学的要因が関与していると考えられます。
メキシコのブルーベリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 80,133 |
19.06% ↑
|
2022年 | 67,305 |
1.24% ↑
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2021年 | 66,482 |
32.19% ↑
|
2020年 | 50,293 |
2.64% ↑
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2019年 | 48,999 |
21.73% ↑
|
2018年 | 40,251 |
9.68% ↑
|
2017年 | 36,700 |
26.26% ↑
|
2016年 | 29,067 |
87.67% ↑
|
2015年 | 15,489 |
-14.1% ↓
|
2014年 | 18,031 |
77.47% ↑
|
2013年 | 10,160 |
41.29% ↑
|
2012年 | 7,191 |
7.26% ↑
|
2011年 | 6,704 |
533.05% ↑
|
2010年 | 1,059 |
-33.61% ↓
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2009年 | 1,595 |
963.33% ↑
|
2008年 | 150 |
21.95% ↑
|
2007年 | 123 |
-53.41% ↓
|
2006年 | 264 |
1.54% ↑
|
2005年 | 260 |
-7.14% ↓
|
2004年 | 280 |
-5.08% ↓
|
2003年 | 295 |
-7.81% ↓
|
2002年 | 320 |
-15.79% ↓
|
2001年 | 380 |
33.33% ↑
|
2000年 | 285 |
-38.04% ↓
|
1999年 | 460 |
17.95% ↑
|
1998年 | 390 |
-30.97% ↓
|
1997年 | 565 |
-48.64% ↓
|
1996年 | 1,100 |
14.23% ↑
|
1995年 | 963 |
-10.17% ↓
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1994年 | 1,072 |
972% ↑
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1993年 | 100 | - |
FAOの最新データは、メキシコがブルーベリー生産の分野で特に顕著な成長を遂げた国の一つであることを示しています。1993年の生産量はわずか100トンで、当時の生産は限られた地域で小規模に行われていたと推定されます。その後、1994年には1,072トンと急増したものの、1997年から2008年頃までは350~400トン前後の停滞期が続きました。この時期の低迷は、輸出需要の低さや国内的な農業インフラの未整備が原因と考えられます。
しかし、2009年以降、状況は劇的に変化しました。この年には1,595トンへと急増し、2011年以降になると年々倍増する勢いで生産量が拡大しました。とくに2011年から2014年にかけては、生産量が6,704トンから18,031トンに上り、わずか3年で2.7倍となる飛躍を遂げました。この急成長は、大規模な輸出政策への転換や、欧米市場からのブルーベリーに対する需要の増加が追い風となったことが大きな要因とされています。
2016年以降では、毎年安定的に増加を続け、2022年には67,305トンと過去最高を記録しました。この成長は、メキシコが適切な気候条件を活かし、高品質なブルーベリーを世界市場に供給する主要国の一つとして位置づけられるまでになったことを意味しています。
しかし、現状に課題がないわけではありません。まず注目すべき点として、気候変動リスクの影響が挙げられます。ブルーベリー栽培は適切な気候条件に強く依存するため、気温上昇や降水量の変化が生産量に影響を及ぼす可能性があります。また、近年頻発している自然災害も農地への直接的な被害をもたらす要因となっています。さらに、農業従事者への経済的利益の公平な分配や、輸出依存に伴う国内需要の軽視といった問題も議論されるべきです。
これに対する対策としては、災害に強い生産方法の導入や、持続可能な農業モデルの確立が重要です。例えば、高効率な灌漑システムの導入や、気候に適応した新しい品種の開発などが有望な手段です。また、輸出市場拡大に加え、国内消費の促進も戦略として考慮すべきです。特に栄養価の高いブルーベリーは国内の健康志向の高まりと合致し、さらなる需要を生む可能性があります。
さらに、地政学的背景の観点から考えると、メキシコがアメリカ市場への輸出に依存している現状は、米墨関係の変化や関税政策の影響を受けるリスクにさらされています。これを軽減するためには、輸出先の多角化や、地域間の協力を通じた新興市場の開拓が必要です。
結論として、メキシコのブルーベリー生産量の劇的な成長は、農業分野における成功モデルの一例と言えます。ただし、気候変動リスクや輸出依存からの脱却といった課題を克服するためには、持続可能な生産と市場戦略の両方を重視する必要があります。政府や国際機関は、技術支援や市場多様化支援を行い、メキシコがこの成長をさらに持続可能なものに変えるようサポートを強化するべきです。