国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)が発表した最新データによると、メキシコのオリーブ油生産量は、過去60年以上にわたって大きな変動を示しています。特に1960年代から1980年代は年間1,000トン前後の生産を維持していたものの、1990年代には急激に減少し200トン台に落ち込みました。その後も低迷期が続きましたが、近年では2019年以降、上昇傾向が見られ2021年には735トンを記録しました。このデータは、地政学的リスク、気候条件、農業技術の進展といった複合的要因が及ぼす影響を反映しており、メキシコのオリーブ油産業の現状と課題を探る上で重要です。
メキシコのオリーブ油生産量推移(1961年~2021年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2021年 | 735 |
20.4% ↑
|
2020年 | 611 |
5.77% ↑
|
2019年 | 577 |
115.12% ↑
|
2018年 | 268 |
53.93% ↑
|
2017年 | 174 |
-28.73% ↓
|
2016年 | 245 |
9.08% ↑
|
2015年 | 224 |
-10.31% ↓
|
2014年 | 250 |
4.17% ↑
|
2013年 | 240 |
9.09% ↑
|
2012年 | 220 |
10% ↑
|
2011年 | 200 |
-75.73% ↓
|
2010年 | 824 |
311.98% ↑
|
2009年 | 200 | - |
2008年 | 200 | - |
2007年 | 200 | - |
2006年 | 200 | - |
2005年 | 200 | - |
2004年 | 200 | - |
2003年 | 200 | - |
2002年 | 200 | - |
2001年 | 200 | - |
2000年 | 200 | - |
1999年 | 200 |
-50% ↓
|
1998年 | 400 | - |
1997年 | 400 | - |
1996年 | 400 | - |
1995年 | 400 |
100% ↑
|
1994年 | 200 | - |
1993年 | 200 | - |
1992年 | 200 | - |
1991年 | 200 |
-80% ↓
|
1990年 | 1,000 | - |
1989年 | 1,000 | - |
1988年 | 1,000 | - |
1987年 | 1,000 | - |
1986年 | 1,000 | - |
1985年 | 1,000 | - |
1984年 | 1,000 | - |
1983年 | 1,000 | - |
1982年 | 1,000 | - |
1981年 | 1,000 |
-16.67% ↓
|
1980年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1979年 | 1,100 |
-15.38% ↓
|
1978年 | 1,300 |
8.33% ↑
|
1977年 | 1,200 | - |
1976年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1975年 | 1,100 |
-8.33% ↓
|
1974年 | 1,200 |
9.09% ↑
|
1973年 | 1,100 |
10% ↑
|
1972年 | 1,000 | - |
1971年 | 1,000 | - |
1970年 | 1,000 | - |
1969年 | 1,000 |
25% ↑
|
1968年 | 800 |
-11.11% ↓
|
1967年 | 900 |
-10% ↓
|
1966年 | 1,000 |
100% ↑
|
1965年 | 500 | - |
1964年 | 500 | - |
1963年 | 500 | - |
1962年 | 500 |
28.21% ↑
|
1961年 | 390 | - |
メキシコのオリーブ油生産量は1961年に390トンからスタートし、1970年代初頭には年間1,000トン以上の安定した生産量を記録していました。この時期の比較的高い生産量は、オリーブ栽培の農地の増加や栽培技術の改良が寄与していたと考えられます。しかし、1990年代に入ると200トン前後に激減し、その後20年以上この低水準が続きました。この急激な減少は、輸入オリーブ油への依存度の高まりや国内の農業政策の変化、さらにはオリーブ栽培に影響を及ぼした気候変動による要因が影響した可能性があります。
近年、特に2019年以降は生産量が顕著に増加しており、2021年には735トンに達しています。この生産量の回復は、メキシコ国内におけるオリーブ栽培に対する新たな農業技術の導入や気候変動に適応する品種の選定、さらには政府の農業産業支援政策が広がりつつあることが関連していると推測されます。また、COVID-19パンデミックによって一時的に海外からの輸入が制限されたことが、国内生産を後押しした可能性もあります。
ただし、メキシコが主要なオリーブ油消費国であるヨーロッパ諸国(スペイン、イタリア、ギリシャ)や、中東地域とは大きく異なる点として、全体の生産規模が依然として非常に小さい状況が挙げられます。例えば、スペインの同時期のオリーブ油生産量は年間150万トンを超えており、同市場での競争においては不利な位置にあります。このため、メキシコは差別化を図るため、産地や質、オーガニックな栽培方法などに重点を置いた付加価値の高い生産を行う必要があります。
気候条件の変動も今後の課題です。オリーブの栽培は乾燥した温暖な地域で最も適しているため、メキシコ北西部の一部が潜在的な栽培地として注目されています。しかしながら、異常気象や干ばつリスクが拡大する中、持続可能な水資源管理や灌漑技術の改善が欠かせません。さらに、農業従事者の技術教育や資金援助を強化する政策も必要です。
地政学的リスクも考慮すべき要素の一つです。アメリカ市場への輸出が経済的に大きなチャンスとなる一方で、貿易摩擦や政治的な対立がオリーブ油産業に悪影響を及ぼす可能性もあります。このため、輸出市場の多様化とともに、安定供給を目指した協力枠組みの構築が求められます。
結論として、メキシコのオリーブ油生産は過去60年の推移の中で大きな変動を経ており、近年の回復は注目に値します。しかし、依然として競争力の向上や気候変動への対応など、多くの課題が残されています。今後は、地域間協力を強化し、国内外での需要を見据えた高付加価値な生産を推進することが重要です。同時に、地政学的リスクを克服するための戦略的な貿易政策も不可欠といえるでしょう。