国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データ(2024年7月更新)によると、メキシコの米生産量は1961年から2022年の間で著しい変動を見せています。特に1975年に716,628トンという飛躍的な増加がみられた一方、ここ数十年では全般的に減少傾向となり、2022年には246,989トンと比較的低い生産量となっています。この推移は農業技術、政策、インフラ、気候条件といった要因が相互に影響した結果と考えられます。
メキシコの米生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 246,989 |
2021年 | 257,041 |
2020年 | 295,338 |
2019年 | 245,217 |
2018年 | 283,763 |
2017年 | 265,567 |
2016年 | 254,043 |
2015年 | 236,018 |
2014年 | 232,159 |
2013年 | 179,776 |
2012年 | 178,787 |
2011年 | 173,461 |
2010年 | 216,676 |
2009年 | 263,028 |
2008年 | 224,371 |
2007年 | 294,697 |
2006年 | 337,250 |
2005年 | 291,149 |
2004年 | 278,500 |
2003年 | 273,300 |
2002年 | 227,194 |
2001年 | 226,639 |
2000年 | 351,447 |
1999年 | 394,434 |
1998年 | 458,112 |
1997年 | 469,455 |
1996年 | 394,075 |
1995年 | 367,030 |
1994年 | 373,616 |
1993年 | 287,180 |
1992年 | 394,022 |
1991年 | 347,245 |
1990年 | 394,388 |
1989年 | 527,118 |
1988年 | 456,548 |
1987年 | 590,999 |
1986年 | 544,632 |
1985年 | 807,529 |
1984年 | 487,133 |
1983年 | 421,050 |
1982年 | 515,741 |
1981年 | 709,611 |
1980年 | 445,364 |
1979年 | 493,794 |
1978年 | 401,780 |
1977年 | 567,338 |
1976年 | 463,432 |
1975年 | 716,628 |
1974年 | 491,608 |
1973年 | 450,575 |
1972年 | 403,192 |
1971年 | 369,167 |
1970年 | 405,385 |
1969年 | 394,938 |
1968年 | 347,249 |
1967年 | 417,888 |
1966年 | 372,227 |
1965年 | 377,531 |
1964年 | 274,430 |
1963年 | 296,373 |
1962年 | 288,972 |
1961年 | 332,944 |
メキシコにおける米生産量は、過去60年間で波のような上下動を見せつつ、特定の時期に急激な変化を伴っています。1960年代後半から1970年代にかけては順調な生産量の増加が見られ、1975年には716,628トンと歴史上のピークを記録しました。この時期の増加は、グリーン革命による農業技術の向上、灌漑インフラの整備、政府補助金の増加などが主な要因とされています。一方でこれ以降の数十年にわたり、米の生産量は持続的な低下の傾向を見せ、2000年代以降に顕著な落ち込みが観察されています。
特に2001年以降、年間生産量は30万トンを下回ることが増えており、2011年には17万トン台と最低水準を記録しました。これほどの減少が起きた背景には、国内農業政策の転換、米価格の低迷、灌漑設備の老朽化、気候変動による水資源の減少が挙げられます。また国際的な観点から見ると、米生産においてメキシコは世界主要国と比較して規模が小さく、アメリカやインド、中国などのトップ生産国とは大きな開きがあります。これらの国々は技術革新を積極的に採用し、生産効率を向上させ生産量を安定させています。
この期間中、メキシコが米の輸入依存度を高めたことは国内需要と供給の不一致が原因の一つと考えられます。米に頼る伝統的な食文化を持つ一方で国内生産が追いつかず、他国、特にアメリカからの輸入に依存する傾向が生じています。この状況は国土の砂漠化や干ばつの頻発といった環境要因にも関連しています。さらに、安価な輸入米が国内市場を圧迫し、メキシコ国内の小規模農家の競争力を弱体化させているという点も指摘されています。
将来に向けて、いくつかの課題が浮かび上がっています。一つは、老朽化した灌漑インフラの効率化と近代化です。現在の施設は水資源を十分に管理できていない部分があり、効率的な水利用によって条件の厳しい地域でも生産拡大が見込める可能性があります。また、気候変動に対応した耐性作物の栽培や、乾燥地農業の技術導入も効果的と考えられます。
さらに、農家への技術支援や資金提供は極めて重要です。他国の成功事例を見ると、インドやベトナムは小規模農家を対象とした技術教育や低金利融資制度の導入により生産力を高めてきた経緯があります。メキシコもこれらの先進的な取り組みを参考に政策を再編成することが可能です。
地政学的リスクにも留意する必要があります。たとえば、アメリカとの貿易交渉が不安定になる場合、米の輸入に依存しているメキシコは価格上昇や供給の不安定化の影響を大きく受ける可能性があります。これに加え、自然災害やパンデミックといった突発的事象も国内農業基盤をさらに揺るがす要素となり得ます。
結論として、メキシコの米生産量を持続的に向上させるには、インフラ投資、水資源管理、農業技術革新、国際的協力を組み合わせた戦略的な施策が不可欠です。また、国内市場を保護するための適切な貿易政策や補助金制度の見直しも重要です。これらに基づき、国際競争力を高めながらも農家の安定した収入を確保し、食料自給率の向上を目指す必要があります。