FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、メキシコのヤギ飼養頭数は1961年の約8,928,444頭から2022年の8,817,200頭まで大きな変化を見せながら推移してきました。一時的な増減はあるものの、この60年以上の期間で全体としてはほぼ横ばいの傾向を示しています。特に1980年代後半から1990年代にかけて増加した一方で、1997年以降は減少が顕著となり、近年ようやく安定し始めています。
メキシコのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 8,817,200 |
2021年 | 8,786,027 |
2020年 | 8,830,720 |
2019年 | 8,791,894 |
2018年 | 8,749,589 |
2017年 | 8,725,172 |
2016年 | 8,755,204 |
2015年 | 8,724,946 |
2014年 | 8,687,814 |
2013年 | 8,664,613 |
2012年 | 8,743,949 |
2011年 | 9,004,377 |
2010年 | 8,993,221 |
2009年 | 8,989,262 |
2008年 | 8,952,144 |
2007年 | 8,885,115 |
2006年 | 8,890,384 |
2005年 | 8,870,312 |
2004年 | 8,852,564 |
2003年 | 8,991,752 |
2002年 | 9,130,350 |
2001年 | 8,701,861 |
2000年 | 8,704,231 |
1999年 | 9,068,435 |
1998年 | 9,039,907 |
1997年 | 8,923,300 |
1996年 | 9,566,691 |
1995年 | 10,133,013 |
1994年 | 10,259,292 |
1993年 | 10,377,844 |
1992年 | 9,736,191 |
1991年 | 10,051,386 |
1990年 | 10,439,000 |
1989年 | 10,240,687 |
1988年 | 10,085,597 |
1987年 | 10,441,600 |
1986年 | 10,079,391 |
1985年 | 10,981,438 |
1984年 | 9,553,327 |
1983年 | 9,808,558 |
1982年 | 10,289,754 |
1981年 | 10,003,900 |
1980年 | 9,638,000 |
1979年 | 9,303,110 |
1978年 | 9,111,712 |
1977年 | 8,994,791 |
1976年 | 9,012,770 |
1975年 | 9,067,185 |
1974年 | 9,121,900 |
1973年 | 9,177,000 |
1972年 | 9,232,390 |
1971年 | 8,818,000 |
1970年 | 9,126,652 |
1969年 | 9,415,653 |
1968年 | 9,391,995 |
1967年 | 9,350,000 |
1966年 | 9,300,000 |
1965年 | 9,300,000 |
1964年 | 9,200,000 |
1963年 | 9,200,000 |
1962年 | 9,197,081 |
1961年 | 8,928,444 |
データからは、メキシコのヤギ飼養頭数が長期間にわたり増減を繰り返していることが読み取れます。1960年代から1980年代にかけては徐々に増加し、1985年に10,981,438頭とピークを迎えました。この増加は、当時のメキシコの経済成長と農牧業拡大政策の影響を受けた可能性があります。ヤギの飼養は乾燥地や半乾燥地でも可能で、農業生産が限定される地域での食肉や乳製品生産に重要な役割を果たしていました。
その後、1990年代半ばから2000年代にかけては減少傾向がみられ、この時期における急激な頭数の減少(例:1997年の8,923,300頭)は、経済的変動や環境問題、都市化の進行による牧畜業の縮小が一因だったと考えられます。また、NAFTA(北米自由貿易協定)の影響により農牧業全体が国際競争にさらされ、国内の小規模牧畜業者に負担が生じたことも要因として挙げられます。
2020年代以降、頭数はやや安定しているものの、1960年代や1980年代後半の水準には戻っていません。近年のヤギ飼養は、気候変動の影響を受けた資源不足、農村部から都市部への人口流出、また新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの混乱など、複合的な課題に直面しています。
こうしたデータが示す課題の一つは、持続可能な農牧業システムの構築と、それを支える政策環境の整備です。例えば、乾燥地に適するヤギの特性を活かし、地域特性に即した飼養技術の普及が求められます。また、ヤギ製品(乳肉およびその加工品)の付加価値を高めることで農家の収益を向上させ、放棄地の有効利用を推進することも重要です。
地政学的にも、ヤギ牧畜は中南米地域の食料安全保障と深く結びついています。メキシコ国内のみならず近隣諸国との協働によって、地域全体の牧畜環境改善や遺伝的資源の保護などにも取り組む必要があります。一例として、地域横断的な知識共有プラットフォームの設立が考えられます。このようなプラットフォームは、牧畜技術の普及、気候変動への対応策、交通網や市場との連携強化に貢献する可能性があります。
また、ヤギ牧畜は生態系への配慮も必要です。過剰な放牧による植生の荒廃や土壌の劣化は環境問題を引き起こすため、放牧地の管理と再生を支援する政策も欠かせません。たとえば、新しい牧草地の植生回復プロジェクトや効率的な放牧技術導入への補助金が効果的です。
結論として、メキシコのヤギ飼養頭数の推移は、農牧業や経済政策、気候変動、人口動態など、複数の要因の影響を受けた結果を反映しています。今後の課題として、持続可能な牧畜業推進、地域協力の強化、環境への配慮を統合的に進める政策が必要です。加えて、新型コロナのような予期せぬ危機でも対応できる柔軟なサプライチェーンの構築も不可欠です。国や国際機関、地域社会が連携して課題解決に取り組むべきであり、具体的な対策として技術革新やインフラ整備、そして教育の強化が重要となります。